等級_(天文)
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天文学において等級(とうきゅう、英語: magnitude)とは、天体の明るさを表す尺度である。整数または小数を用いて「1.2等級」あるいは省略して「1.2等」などと表す。恒星の明るさを表す場合には「2等星」などと呼ぶ場合もある。等級の値が小さいほど明るい天体であることを示す。また、0等級よりも明るい天体の場合の明るさを表すには負の数を用いる。

等級が1等級変わると明るさは100の5乗根倍、すなわち約2.512倍変化する[1]。よって等級差が5等級の場合に明るさの差が正確に100倍となる。言い換えれば等級とは天体の明るさを対数スケールで表現したものである。


目次

1 歴史

1.1 古代?近代

1.2 ポグソンの方程式

1.3 UBVシステム


2 視等級と写真等級

3 見かけの等級・絶対等級

4 等級の表現

5 主な天体の等級

6 脚注

7 関連項目


歴史
古代?近代

恒星の明るさを段階的に分類する方法を始めたのは古代ギリシア天文学者ヒッパルコスであるとされる。この時代は明るさを定量的に計測する手段がなかったため、目安として最も明るい恒星を1等星とし、かろうじて肉眼で見える暗い星を6等星として、間を分ける形で6段階に分けられた。その後、プトレマイオスの著書『アルマゲスト』でこの方法が採用されて広く使われることとなった[1]。この時点での等級には1.2等など小数点以下の細かな段階分けは用いられていなかった。その後16世紀望遠鏡が発明されると、6等星よりも暗い恒星が観測できるようになった。6等よりも暗い星は7等星、8等星などと分けられたが、その分類は天文学者によって異なっていた。

18世紀末のイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルは、2つの望遠鏡を使って2つの恒星を同時に観測する手法によって、等級が大きくなるとその明るさが二乗に反比例して暗くなることを発見した[1]。また、彼の息子のジョン・ハーシェルも、1834年から1838年にかけて喜望峰で観測した自身の記録から、等級が0.41上がるごとにその明るさが二乗に反比例して暗くなることに気づき、父ウィリアムと同じ結論に至った[1]。また、1等星は6等星の100倍の明るさであることを発見した[1]
ポグソンの方程式

ポグソンはジョン・ハーシェルの定義を発展させ、等級が5等級変化するごとに明るさが100倍になる、すなわち1等級が1001/5 ≒ 2.512倍に相当すると定義した[1][2]。ポグソンの方程式により、等級は次の式で表現される。 m 2 − m 1 = − 2.5 log 10 ⁡ ( b 2 / b 1 ) {\displaystyle m_{2}-m_{1}=-2.5\log _{10}(b_{2}/b_{1})}

これにより、それまで整数でのみ表していた等級が1.2等星や3.5等星のように小数を使って細かく表せることになった。また0や負の数を用いる事により、1等級より明るい場合を表す事も可能となった。例えば、全天で太陽の次に明るい恒星シリウスは-1.46等級である。

1884年にエドワード・ピッカリングは、北極星であるこぐま座α星を2.0等と定義したが、その後はこぐま座ラムダ星を6.5等と定義し直し、多数の北極星野の暗い星の観測が行われた。そして、1922年の第1回国際天文学連合総会において、北極星野の96個の星が国際式等級の原点と定められた[3]
UBVシステム「ジョンソンのUBVシステム」も参照

1953年には、ハロルド・レスター・ジョンソンウィリアム・ウィルソン・モーガンによって現在「ジョンソンUBVシステム」と呼ばれる方式が提案され、IAUにより採用されている[3]

ジョンソンは、色素増感していない写真乾板に感度がある波長域を、水素バルマー線が立て込んでいない波長域と立て込んだバルマー端に近い波長域の2つに分け、主に青い光を通す前者をBバンド、紫外光を通す後者をUバンドとした。Bバンドを用いて測定した際の等級をB等級、Uバンドを用いて測った等級をU等級、と呼称している。人間の眼の暗所感度分布に近く、主に緑色の光を通し平均波長が540 nmとなるVフィルターを用いて測定した際の等級をV等級と言う。

UBVシステムにおいては、北極標準星野にありA0Vのスペクトルを持つ、こと座α星(ベガ)おおぐま座γ星、おとめ座109番星、かんむり座α星へびつかい座γ星、HR 3314の6つの星の国際式写真実視等級がV 等級の原点として定められた[4]。そして、6つの星の平均の U - B、B - Vを0として(すなわち U = B = V として)U等級とB等級の原点が決められた[4]

この他にも、赤い光でのR等級、赤外線でのI等級など、様々な波長域を透過するフィルターを用いて測光を行っている。また、同じ天体を複数のフィルターで測光してその等級の差を取ると、その天体の色を定量的に表すことができる。これを色指数と呼び、恒星の表面温度と密接な関係があり、B-V や U-B などの値が標準的に用いられる。

これらの波長に応じた等級に対して、天体が放射する電磁波のエネルギーを全波長にわたって足し合わせた光度から求められる等級値を放射等級 (bolometric magnitude) または輻射等級と呼ぶ。
視等級と写真等級

19世紀以降、天体が写真に撮られるようになると、人間の目と写真乾板では明るさの感度に違いがあることが明らかになった。写真では青い色により強く感光するが黄色には感光しにくい。したがって、写真の像から等級を測定すると肉眼での観測から求めた等級と異なることになる。このため、肉眼での観測で得られた等級を実視等級または視等級 (visual magnitude)、写真によって判定された等級を写真等級 (photographic magnitude) と呼んで区別するようになった。現在では、光電測光器冷却CCDカメラなどの電気的な測光手段により星の明るさが測定される。
見かけの等級・絶対等級

我々が観測で得る天体の等級は地球から見た時の見かけの明るさであり、天体までの距離に依存している値である。天体の明るさは距離の2乗に反比例するため、明るさが同じ天体を10倍遠くに置くと見かけの明るさは5等級暗くなる。また、地球の大気や、対象の天体と地球との間に存在している星間物質による光の吸収などの影響も受けている。星図や星座早見盤などの等級は見かけ上のものを指している。

このため、天体を地球から10パーセク(32.6光年)の距離に置いたものと仮定したときの明るさを絶対等級 (absolute magnitude) と呼び、天体の絶対的な明るさの指標として用いる。これに対して観測したままの等級を見かけの等級 (apparent magnitude) と呼ぶ。(しばしば、見かけの等級を実視等級と記述している例を見かけるが、別の概念である。)例えば太陽の絶対実視等級は+4.82で、見かけの実視等級は-26.7である。また、全波長の総エネルギー量を反映した絶対等級を放射絶対等級 (bolometric absolute magnitude) という。

地球から d パーセクの距離にある天体の見かけの等級 m と絶対等級 M の間には、

M = m + 5 − 5 log 10 ⁡ d {\displaystyle M=m+5-5\log _{10}d}

の関係がある。

この式から分かるように、ある天体の絶対等級を何らかの方法で見積もることができれば、その天体の見かけの等級との差から、その天体までの距離を見積もることができる。このため、見かけの等級と絶対等級の差 m - M のことを特に距離指数と呼ぶ。

彗星小惑星などの太陽系天体については、太陽からの光を反射して輝いているので、明るさは太陽からの距離にも依存する。そのため太陽と地球の両方から1天文単位の位置に置いたものと仮定したときの明るさを絶対等級と呼ぶ。ただしこの太陽系天体の絶対等級は上記の絶対等級と混同しやすいため、標準等級や標準光度、絶対光度などと呼ぶのが普通である。[要出典]
等級の表現

たとえば整数値で「2等星」と表記した場合、等級mが1.5≦m<2.5の範囲にあることを意味する。「1等星」については、同様に0.5≦m<1.5の場合のほか、明るい恒星を意味するm<1.5のこともある。

等級の値は、小さいほど明るいことを表す。1等星より明るいものには、0やマイナス値を使う。「m>3.0」と表記した場合は3.0等より暗い範囲となるが、「3.0等以上」では3.0等より明るいのか暗いのかは文脈による。
主な天体の等級


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