租税回避地
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タックス・ヘイヴン(英語: tax haven)とは、一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される国や地域のことであり、租税回避地(そぜいかいひち)とも、低課税地域(ていかぜいちいき)、とも呼ばれる[1]

フランス語では「税の楽園」「税の天国」を意味するパラディ・フィスカル(フランス語: paradis fiscal)と言い、ドイツ語などでも同様の言い方をする。しかし、英語のタックス・ヘイヴンのhavenの日本語での意味は「避難所」であって、「楽園」「天国」を意味するheavenではないことに留意されたい。


目次

1 概説

1.1 良く知られているタックス・ヘイブンの場所

1.2 資金洗浄とタックス・ヘイブン

1.3 タックス・ヘイブンと貧富格差の拡大

1.4 金融取引とタックス・ヘイブン


2 判定と対策

2.1 OECDによる判定とリスト掲載

2.2 OECDによる対策

2.3 各国政府による対策

2.4 対策の進捗状況

2.4.1 国際的に認められている税基準を約束したが、実施が十分でない国・地域

2.4.1.1 タックスヘイヴン

2.4.1.2 その他の金融センター

2.4.1.3 (参考)当初、国際的に認められている税基準を約束しなかった国・地域(現在は約束)



2.5 タックス・ヘイヴン・リスト(2000年6月付)

2.6 非協力的タックス・ヘイヴン・リスト

2.6.1 2002年4月18日付

2.6.2 2009年4月2日付


2.7 2000年6月以前に2005年までの有害税制除去を約束した国・地域

2.8 香港


3 日本とタックス・ヘイブン

3.1 対策


4 参考文献

5 脚注

6 関連項目

7 外部リンク


概説2007年版タックス・ヘイヴン指定地域 "Stop Tax Haven Abuse Act", US Congress.

タックス・ヘイヴンは、税制上の優遇措置を、域外の企業に対して戦略的に設けている国または地域のことである[2]。国内経済を支える基幹産業に乏しい国・地域が、富裕層の移住や企業の進出による雇用・手数料歳入の増加などを目的に、法人税を減免している。

カリブ海の英領バージン諸島ケイマン諸島、富裕層への税優遇制度の手厚いオランダやアメリカのデラウェア州などの国・地域は、日本など他国の税務当局の求む納税情報の提供を、企業・個人情報の保護などを理由に拒否して他国が干渉出来ないため、タックスヘイブンとして富裕層の資金が集まる[3]

タックス・ヘイヴンを論じ、OECDなどの国際機関が対応策を取る上では、外国企業による税制の利用方法の正当性が主な焦点となるため、一概にタックス・ヘイヴンが悪質というわけではなく、誤解されやすい点である[4]

シンガポールは財務省(MOF)や4大会計事務所PwCアーンスト&ヤングによって、同国は脱税行為や利益移転(BEPS)を容認せず、OECD・G7の枠組みに協力しており、経済活動支援や人材開発に主眼を置いているため悪質性はない、と主張している[5]。ただし悪質な場合は資本主義の構造に悪影響をもたらす存在となり得るため、タックスヘイヴン対策税制などの対策が取られている。
良く知られているタックス・ヘイブンの場所

代表的な場所としては、イギリスケイマン諸島バージン諸島といったカリブ海島国が挙げられる。なお、ケイマン諸島の外国資本企業法人税減免システムは、実は宗主国イギリスであるシティ・オブ・ロンドンの課税システムを「そのまま導入した」ことに由来する[6][7]

アメリカ合衆国デラウェア州も「租税回避地」として広く知られている。人間の居住者よりも多くの企業(公開・非公開)が存在しており、2016年4月の集計では、人口89万7934人に対し、企業数は94万5326社も存在し、「法人税制やLLCの税制から判断すると、世界最悪のタックス・ヘイヴンである」とニューズウィークが指摘している[8]

デラウェア州が租税回避地になったのは19世紀末で、州は1社あたり年300ドルを得て、約4割がペーパーカンパニー立地に絡む歳入である[9]。デラウェア州ウィルミントン市北オレンジ通り1209番地にある2階建てのビルに31万社が存在し[10]、ペーパーカンパニーの代表名義弁護士等が多く、設立に実質所有者の情報は不要で州も把握できず、秘匿性が高い[9]
資金洗浄とタックス・ヘイブン

さらに、一部のタックス・ヘイヴンには、本国からの取締りが困難だという点に目を付けた悪質な利用の対象となる場合がある。例として麻薬武器取引などの犯罪・テロリズム行為のための資金を隠匿する場所として、暴力団マフィアの資金や第三国からの資金が大量に流入しているといわれている(マネーロンダリング)。2007年世界金融危機では、金融取引実態が把握しにくいことが災いし、損失額が不明瞭化、状況の悪化を助長したとして批判されている。
タックス・ヘイブンと貧富格差の拡大ドイツGDPとタックス・ヘイヴン下の資産総額の比率。タックスヘイブンへ逃げた資産の比率が次第に大きくなってきている[11]。The "Big 7" shown are Hong Kong, Ireland, Lebanon, Liberia, Panama, Singapore, and Switzerland.

1%の富裕層が世界の富の50%を所有する(オックスファム・アメリカ(NPO))といわれる格差が、一部の国家・地域で拡大している状況下で、トマ・ピケティの『21世紀の資本』や、2016年5月に公表された『パナマ文書』は、資本主義国に対し、逆進性の高い付加価値税消費税)の増税ではなく、累進課税で多国籍企業・富裕層の巨額の国際金融取引に課税する方向への「発想の転換」を求めている。

また資本主義各国は、法人税切り下げ競争をやっている時ではなく、タックスヘイヴンに逃げる巨額資産が格差を加速度的に広げ、安定的な経済社会運営を行うために、税制によって所得格差を縮小させるという、本来の税制機能を破壊しており、これを是正できるか否かは、資本主義が維持できるか否かに等しい、深刻かつ重大な課題であると青山学院大学学長三木義一(租税法専門家)は論じている。
金融取引とタックス・ヘイブン

国際金融取引を活発化させる目的で、一定の減税措置や外国資本企業は登記費用のみで、法人税がかからない会社設立方法・通貨決済方法が設けられることは珍しいことではない。

現代の国際金融取引においては、租税負担の軽減を目的として、多くの外国資金がタックス・ヘイヴンを経由して動いており、もはやタックス・ヘイヴンは企業の競争力維持のために必要不可欠な存在であるという利用者側の論理があるが、タックスヘイブンがブラックボックスである限り、公正な企業活動が行われているか、非利用者側からの検証も利用者側からの実証も共に不可能である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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