残業
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この項目では、労働時間を延長する手続きについて説明しています。労働をする時間の長さについては「長時間労働」を、労働をする時刻(時間帯)については「労働時間」をご覧ください。

この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

時間外労働(じかんがいろうどう)とは、労働基準法等において、法定労働時間を超える労働のことをいう[1]。同じ意味の言葉に、残業(ざんぎょう)、超過勤務(ちょうかきんむ)、超勤(ちょうきん)がある。

法定の労働時間を超えて使用者が労働者を使用する場合は、所定の要件及び手続きを満たさなければならない。

労働基準法については、以下では条数のみ記す。


目次

1 法令上の要件

1.1 災害等の場合

1.2 官公署の事業に従事する国家公務員及び地方公務員について公務のための場合

1.3 三六協定

1.3.1 限度時間基準

1.3.2 延長限度なし

1.3.3 特別条項



2 時間外労働の制限

3 法定労働時間内の時間外労働

4 休日労働との兼ね合い

5 医師による面接指導等

6 立入調査等

7 割増賃金

7.1 年俸制による時間外労働


8 国際労働機関

9 脚注

10 参考文献

11 関連項目

12 外部リンク


法令上の要件

日本の法令において、時間外労働が許されるのは以下の3つのうちのいずれかに当てはまる場合に限られる。
災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合において、使用者が行政官庁(所轄労働基準監督署長)の許可を受けて、その必要の限度において労働させる場合(事態急迫の場合は、事後に届け出る)(第33条1項)。

官公署の事業(一部の事業を除く)に従事する国家公務員及び地方公務員が、公務のために臨時の必要がある場合(第33条3項)。

第36条に基づき、労使協定を書面で締結し、これを行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出た場合(いわゆる三六協定(さぶろくきょうてい)[2])。

労働者の自発的な時間外労働は、使用者の指示・命令によってなされたものとはいえないので、労働基準法上の時間外労働とは認められない(東京地判昭和58年8月5日)。ただし、使用者の指示した仕事が客観的にみて正規の時間内ではなされえないと認められる場合のように、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えた場合には時間外労働となる(昭和25年9月14日基収2983号)。

いわゆる「管理監督者」等の第41条該当者については、第33条、第36条等の時間外労働に関する規定は適用されないので、これらの手続きによることなく時間外労働をさせることができ、当該時間外労働に対する割増賃金の支払いも必要ない。
災害等の場合

「災害その他避けることができない事由」とは、災害発生が客観的に予見される場合をも含む(昭和33年2月13日基発90号)。

具体的な判断は個別の事情によるが、以下のような取扱いとなっている(昭和22年9月13日基発17号、昭和26年10月11日基発696号)。

単なる
業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと。

急病ボイラー破裂その他人命又は公益を保護するための必要は認めること。

事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械故障の修理は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な手入れは認めないこと。

電圧低下により保安等の必要がある場合には認めること。

第33条1項による事後届出があった場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる(第33条2項)。この場合、休業手当を支払う必要はない(昭和23年6月16日基収1935号)。なお、派遣労働者については、事前許可・事後届出を行う義務を負うのは、派遣先の使用者である(昭和61年6月6日基発333号)。

三六協定による時間外労働時間を、災害等の事由によりさらに延長しても差支えない(昭和23年7月27日基収2622号)。
官公署の事業に従事する国家公務員及び地方公務員について公務のための場合

労働基準法第33条第3項は、労働基準法の適用がある一部の国家公務員及び地方公務員についてのみの条文である。

「公務のために臨時の必要がある」か否かについての認定は、一応使用者たる行政官庁に委ねられており、広く公務のための臨時の必要を含むものである(昭和23年9月20日基収3352号)。

災害等の場合と異なり、事前許可・事後届出は不要である。また非現業官公署においては三六協定は不要である(昭和23年7月5日基収1685号)。
三六協定第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

第36条は時間外・休日労働を無制限に認める趣旨ではなく、時間外・休日労働は本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものであり、第36条は労使がこのことを十分意識したうえで三六協定を締結することを期待しているものである(昭和63年3月14日基発150号)。 三六協定を締結し、所轄労働基準監督署への届出を行わずに残業を行わせた使用者に対して、厚生労働省は「36(サブロク)協定のない残業は犯罪です!!」とするリーフレットを配布し、周知をはかっている。

三六協定(さぶろくきょうてい)には、以下の事項を定めなければならない(施行規則第16条1項)。
時間外または休日の労働をさせる必要のある具体的事由時間外・休日労働は臨時的の場合に限定されるとする法の趣旨から、できるだけ具体的であることが望ましい(昭和23年9月13日基発第17号)。

業務の種類業務の区分を細分化することにより当該必要のある業務の範囲を明確にしなければならない(平成21年5月29日厚生労働省告示316号)。これは、業務の区分を細分化することにより当該業務の種類ごとの時間外労働時間をきめ細かに協定するものとしたものであり、労使当事者は、時間外労働協定の締結に当たり各事業場における業務の実態に即し、業務の種類を具体的に区分しなければならないものである。例えば、労働時間管理を独立して行っている各種の製造工程が設けられているにもかかわらず業務の種類を「製造業務」としているような場合は、細分化が不十分であると考えられる(平成11年3月31日基発169号)。

労働者の数協定した時点の労働者数を書けば足りる。協定以後に労働者数が変動した場合にも改めて届け出る必要はない。

「1日」及び1日を超える一定の期間(「1日を超え3ヶ月以内の期間」及び「1年間」)についての延長することができる時間又は労働させることができる休日「1日」についてのみ、又は一定期間についてのみの協定は要件を満たさないので、双方を協定しなければならない。但し1日協定及びフレックスタイム制の協定はこの限りでない。なお、これらの期間に加えて「3ヶ月を超え1年未満の期間」について労使当事者が任意に協定することを妨げるものではない。「1年間」についての延長時間を必ず定めなければならないこととしているのは、1年間を通じて恒常的な時間外労働を認める趣旨ではなく、1年間を通じての時間外労働時間の管理を促進し時間外労働時間の短縮を図ることを目的としたものである(平成11年1月29日基発45号)。事業完了までの期間が1年未満である場合は、「1年間」についての延長時間を定めることは要しない。

協定の有効期間(労働協約による場合を除く)「1年間」についての延長時間を定めなければならないため、協定の有効期間は最低1年間となる。ただし、協定の中で定められる3ヶ月以内の期間の延長時間については、別個に1年未満の有効期間を定めることができる。なお三六協定について定期的に見直しを行う必要があると考えられることから、有効期間は1年間とすることが望ましい(平成11年3月31日基発169号)。有効期間の定めのない協定は形式的に瑕疵がある協定と解され、労働基準監督署は受理しない取り扱いとなっている。なお労働協約による場合は労働組合法の適用を受けるので、必ずしも有効期間の定めをする必要はない(施行規則第16条2項、昭和29年6月29日基発355号)。

三六協定は労使協定であるので、使用者と、その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は事業場の労働者の過半数の代表者)とが時間外労働、休日労働について書面で締結しなければならない。また、労使協定は一般に締結した段階で効力が発生するものであるが、三六協定については行政官庁に届出なければ効力は発生しない。法定の協定項目について協定されている限り、労使が合意すれば任意の事項を付け加えることも可能である(昭和28年7月14日基収2843号)。

協定の更新拒否が業務の正常な運営を阻害する行為に該当する場合は、争議行為に該当する。(昭和32年9月9日法制局一第22号)

「過半数代表者」については、管理監督者以外の者から、三六協定を締結することの適否を判断する機会が当該事業場の労働者に与えられていて、かつ労働者の過半数がその者を支持していると認められる民主的な手続き(投票・挙手・話し合い・持ち回り決議等)により選出されることとしなければならない(昭和63年1月1日基発1号)。また「過半数」の算定には、労働者であれば管理監督者、出向労働者(時間については受入、賃金については支払労働者)、送り出し派遣労働者、パートやアルバイト、さらには時間外労働が制限される年少者等(昭和46年1月18日基収6206号)、協定の有効期間満了前に契約期間が終了する労働者(昭和36年1月6日基収6619号)をも含むが、解雇係争中の労働者(労働基準法に違反しないと認められる場合。昭和24年1月26日基収267号)、受入れ派遣労働者は含まない。


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