死刑
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死刑(しけい)は、対象者(死刑囚)を死亡させる刑罰である。抽象的な表現として「極刑(きょっけい)」あるいは「処刑(しょけい)」とも表現される。刑罰の分類上は生命刑に分類される。
目次

1 概要

2 死刑の歴史

3 死刑の目的

3.1 死刑とはいかなる類の刑であるか

3.2 死刑の法的根拠

3.3 抑止効果


4 死刑の方法

4.1 死刑執行人


5 各国の死刑

5.1 死刑執行数順位

5.2 アジア

5.2.1 日本

5.2.2 中華人民共和国

5.2.3 シンガポール

5.2.4 朝鮮民主主義人民共和国

5.2.5 インド

5.2.6 中東諸国


5.3 ヨーロッパ

5.4 アフリカ

5.5 南北アメリカ

5.5.1 アメリカ合衆国


5.6 オセアニア


6 死刑制度に関する議論

7 残虐性の有無

8 参考文献

9 注釈及び引用

10 死刑をテーマにした作品

11 関連項目

12 外部リンク

概要 Cesare Beccaria, Dei delitti e delle pene

死刑には、世界各国古今東西で様々な歴史と様式があった。日本では現在絞首刑で行われている。現在の多くの死刑存置国ではおおむね人命を奪った犯罪ないし国家反逆罪、およびその未遂罪に対しても死刑が適用されるが、一部犯罪に対する刑罰を厳罰化している国々では、生命・身体の脅威になる犯罪(麻薬覚醒剤などの使用、製造、人身売買など)や、生命を奪わない犯罪(汚職、通貨の偽造、密輸など)などにも死刑または終身刑が適用される場合がある。

21世紀初頭現在、西洋文化圏であるヨーロッパ、南米、カナダやオーストラリアなどの国で死刑は廃止され、またこれらの国が中心になって自由権規約第2選択議定書(死刑廃止議定書)が国際連合総会で採択された。一方で、日本を含むアジア諸国や宗教的に応報が原則とされる中東およびアフリカ諸国の大部分、そして欧米文化圏では例外となるアメリカ合衆国の31州などで死刑制度が存置されている。また一般犯罪においては死刑を廃止しているが、戦時犯罪行為にのみ死刑を定めている国もある。
死刑の歴史詳細は「死刑の歴史」を参照 ジャン=レオン・ジェロームによるローマ時代のキリスト教徒殉教の絵画。火刑、動物刑の公開処刑が描きこまれている

死刑は文明の初期段階において刑罰の中心をなすものであり、世界各地で死刑の記録が残されている。石器時代の遺跡から処刑されたと思われる遺体が発見されることもある。

死刑は身体刑と並び、前近代(おおむね18世紀以前)には一般的な刑罰であった。人類刑罰史上最も古くからある刑罰であるといわれ、有史以前に人類社会が形成された頃からあったとされる[1]。また、「死刑」という刑罰でなくとも、多くの「死に至る(ことが多い)刑罰」も用いられていた。

威嚇効果が期待されていたものと考えられており、すなわちみせしめの手段であったため、公開処刑が古今東西で行われていた。火刑溺死刑、圧殺、生き埋め、(はりつけ)、十字架刑斬首(ざんしゅ)、毒殺、車裂(くるまざき)、鋸挽き釜茹石打ちなど執行方法も様々であった。近年では、死刑存置国の間でも絞首刑銃殺刑電気椅子、ガス殺、注射殺(毒殺)などに絞られつつあり、比較的肉体的な苦痛の少ないと考えられる方法を採用するのが主流となっている。刑罰の歴史上では文明化と共に死刑を制限することが顕著である[2]

刑罰として死が適用される犯罪行為も、必ずしも現代的な意味における重犯罪に限られていたわけではない。窃盗や偽証といった人命を奪わない罪状を含んだほか、社会規範・宗教的規範を破った事に対する制裁として適用される場合もあった。たとえば、中世ヨーロッパでは姦通を犯した既婚者女性は原則的に溺死刑に処せられていた[3]。叛乱の首謀者といった政治犯に対するものにも適用された。

死刑は、為政者による宗教弾圧の手段として用いられたこともあり、ローマ帝国時代のキリスト教徒迫害や、日本の江戸時代には長崎で行われたキリスト教徒26人に対する処刑のようにキリシタンの処刑が多数行われていた。一方宗教者たちによって、魔女裁判のように宗教裁判によって、教会によって死に追いやられた人々も多かった。

その後、近代法制度の確立に伴い、罪刑法定主義によって処罰される犯罪行為が規定され、それに反した場合に限り刑罰を受けるというように限定された。近代法制度下では、どのような犯罪行為に死刑が適用されるかが、あらかじめ規定されている。また18世紀頃から身体を拘束・拘禁する自由刑が一般化し、死刑は「重犯罪向けの特殊な刑罰」という性格を帯びるようになった。死刑の方法もみせしめ効果を狙った残虐なものから絞首刑など単一化されるようになった。

20世紀中期以降は、死刑を存置する国家では、おおむね他人の生命を奪う犯罪のうち、特に凶悪な犯罪者に対し死刑が適用される傾向がある。ただし戦時犯罪については死刑を容認している国も残されており、上官の命令不服従、敵前逃亡、スパイ行為といった利敵行為などに対して適用される場合がある。また、21世紀になっても、国によっては重大な経済犯罪・麻薬密売・児童人身売買といった直接に他人の生命を侵害するわけではない犯罪にも死刑が適用されることがあるほか、一部国家[4]では、窃盗犯であっても裁判によらず即決で公開処刑される事例が存在する。
死刑の目的
死刑とはいかなる類の刑であるか

ドイツの哲学者イマヌエル・カントは「刑罰は悪に対する悪反動であるため、犯した犯罪に相当する刑罰によって犯罪を相殺しなければならない」として「絶対的応報刑論」を唱えた。これに対して「刑罰が応報であることを認めつつも、刑罰は同時に犯罪防止にとって必要かつ有効でなくてはならない」とする考え方は「相対的応報刑論」という。

日本で、死刑を合憲とした1948年(昭和23年)の最高裁判例では、「犯罪者に対する威嚇効果と無力化効果(隔離効果)による予防説に基づいて合憲」としており、応報刑的要素についての合憲性は排除されている。なお、予防説では「死刑は一種の必要悪であるとして、犯罪に対する反省もなく、改善不能で矯正も不可能な犯罪者は社会防衛のために死刑にするのもいたしかたない」との死刑存置派からの論拠がある[5]
死刑の法的根拠

刑罰は応報的な面があるのは事実であるが、死刑が社会的存在を消し去るものであるため、死刑が近代刑罰が忌諱する応報的な刑罰ではないとする法学的根拠が必要とされている。一般予防説に従えば、「死刑は、犯罪者のを奪うことにより、犯罪を予定する者に対して威嚇をなし、犯罪を予定する者に犯行を思い止まらせるようにするために存在する」ことになる。

特別予防説に従えば、「死刑は、矯正不能な犯罪者を一般社会に復して再び害悪が生じることがないようにするために、犯罪者の排除を行う」ということになる。しかし、より正確に「特別予防」の意味をとると、「特別予防」とは犯罪者を刑罰により矯正し、再犯を予防することを意味するため、犯人を殺してしまう「死刑」に特別予防の効果はない。仮釈放の無い絶対的終身刑にも同様のことがいえる。

日本やアメリカなど、死刑対象が主に殺人以上の罪を犯した者の場合、死刑は他人の生命を奪った(他人の人権・生きる権利を剥奪した)罪に対して等しい責任(刑事責任)を取らせることになる。

一般的な死刑賛成論者は予防論と応報刑論をあげるが、応報論の延長として敵討つまり、殺人犯に対する報復という発想もある。近代の死刑制度は、被害者のあだ討ちによる社会秩序の弊害を国家が代替することでなくす側面も存在する。国家の捜査能力が低い近代以前は、むしろ仇討ちを是認あるいは義務としていた社会もあり、それは被害者家族に犯罪者の処罰の責任を負わせて、もって捜査、処罰などの刑事制度の一部を構成させていたという側面もある。

殺人などの凶悪犯罪では、裁判官が量刑を決める際に応報は考慮されている。基本的には近代刑法では応報刑を否認することを原則としているが、実際の懲役刑の刑期の長短などは被害者に与えた苦痛や、自己中心的な感情による犯行動機があるなど酌量すべきでないなど、応報に基づいて行われている。


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