大気圏再突入
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スペースシャトルの再突入時における機体表面温度のシミュレーション画像

大気圏再突入(たいきけんさいとつにゅう、英語: atmospheric reentry)とは、宇宙船などが真空に近い宇宙空間から地球などの大気圏に進入すること。単に再突入(さいとつにゅう、reentry)ともいう。宇宙飛行においては最も危険が大きいフェイズのひとつである。大気圏突入(たいきけんとつにゅう、: atmospheric entry)と言う場合は、隕石など外来の物体も含む広義の使われ方であるのに対し、大気圏再突入は地上から打ち上げた宇宙機や物体の帰還に限って言う。
目次

1 歴史

2 宇宙船の再突入

2.1 再突入時の死亡事故


3 人工衛星の再突入

4 無人宇宙探査機の地球大気圏再突入

5 他の惑星での大気圏突入

6 弾道ミサイルの再突入

7 各国における再突入

7.1 日本における再突入


8 フィクションにおける大気圏突入

9 脚注

9.1 注釈

9.2 出典


10 関連項目

歴史

大気圏再突入技術の開発は、ロケット弾道ミサイルの技術と伴に発達した。特に、冷戦初期において、宇宙開発競争・弾道ミサイル開発競争が行なわれ、アメリカ合衆国ソビエト連邦を中心に技術開発が行われている。長距離弾道ミサイルの弾頭にとって、着弾に至るまでの経路において大気圏再突入は避けられないものであり、必須の技術であったことから技術開発を促進した。有人宇宙船の開発も同様に再突入は必須であり、その技術開発を促進させている。1920年代には、すでにロバート・ゴダードが再突入に際し、熱遮蔽の必要性を指摘している。
宇宙船の再突入

物体が大気圏に突入する際には、熱の壁による空力加熱(断熱圧縮)が発生し[1]、例えば標準大気でマッハ3の突入速度の場合、理論値でよどみ点温度350℃を超える(「空気との摩擦」により温度が上昇すると言われるが誤りである)。再突入の条件は、適切な軌道離脱タイミングと機体の角度(進入角度とはいわない)である。タイミングがわずかでもずれると着陸地点が大幅に変わる。また、「角度が浅いと大気に弾かれる」というのは間違った解釈である。

有人宇宙船の場合は、進行方向に対し斜めの姿勢をとるなどして大気で揚力を発生させて「滑空」することで速度や高度を調整し、最高温度の上昇を防ぐと同時に、宇宙飛行士にかかる加速度を軽減するのが一般的である。

アポロ宇宙船の頃から、初期のスペースシャトルにおいても、再突入時に宇宙船がプラズマに囲まれている間は、外部との無線通信が不可能となっていた。データ中継衛星の整備後は、スペースシャトルの再突入時でも、プラズマの希薄な機体上方のアンテナを使って、静止軌道データ中継衛星を介した無線での通信が可能となった。

空気抵抗で減速し、地上に接近するとパラシュートなどで、さらに飛行速度を落とし、着陸あるいは着水する。太平洋大西洋に接しているアメリカ合衆国では、主にアポロ宇宙船やマーキュリー宇宙船に見られる様に着水を行い、接している海が殆ど北極海というロシア(及びソ連)では、ソユーズで見られる様に、地表近くで逆噴射ロケットを噴かし、大きく減速して着陸している。なお、ユーリイ・ガガーリンの乗ったボストークは逆噴射ロケットを持たず、パラシュートで減速後、戦闘機のように乗員を座席ごと船外へ射出していた。
再突入時の死亡事故

再突入時に起きた死亡事故としては、

1967年ソユーズ1号(パラシュートが開かず地面に激突、ウラジーミル・コマロフ飛行士が死亡)

1971年ソユーズ11号(気密漏れのためゲオルギー・ドブロボルスキーウラディスラフ・ボルコフビクトール・バチャエフが窒息死)

2003年のスペースシャトルコロンビア(打ち上げ時に翼の耐熱パネルが破損したことにより再突入時に空中分解、乗組員7名全員が死亡)

がある。その他のトラブル事例としては、耐熱パネルが外れかかったため逆推進ロケットを分離せずに突入(後にセンサーの誤報と分かった)(マーキュリー6号)、逆推進システムがカプセルから分離しないまま突入(ボストーク1号ソユーズ5号)、逆噴射に失敗(ソユーズTM-5)、予定外の場所に着地(平原のはずが森や湖)などのトラブルがある。
人工衛星の再突入

低軌道人工衛星などで、制御が可能で、回収の必要がないものやできないもの(例:ミールプログレス補給船など)は、役目を終えるとスペースデブリの発生源にならないように再突入(制御再突入、制御落下、コントロールド・リエントリなどともいう)させられる。この場合は故意に突入角度を深く取り、地表に落下する前に燃え尽きるようにすること、たとえ破片が残っても海などへ落下させることなどが求められる。なお、地球の低周回軌道上の制御を失った衛星やロケットの上段も、いずれは空気抵抗により大気圏に再突入し地球に落下するが、この場合はどこに落ちるかは分からない。

静止軌道投入に失敗した通信衛星で、制御突入させた例としては、2002年12月のAstra-1Kと、2012年3月のExpress-AM4がある。

落下物による人的被害を防ぐため、NASAのガイドラインでは落下範囲が8m2(統計的に人的被害が出る確率が1/10000)以上になるものについては制御落下を行うことが推奨されている。制御落下計画は以下の2点を満たさなければならない。

落下するデブリはアメリカ領空より25海里以上、他国の領土より200海里以上離れていなければならない。

船および航空機の航路を管理する所管行政庁、所轄機関へ連絡がなされなければならない。

再突入の際、衛星は中間圏(高度80km)に突入した時点で急速に破壊が始まり速度低下するが、落下物がどこに落ちるかは形状、材質により異なってくる。具体的にはアルミニウムよりは耐熱性の高いチタンの方が地表に落下する可能性が高い。また、中が空洞の燃料タンクは衛星の破壊が始まった地点から数百キロ程度の地点に落ちるが、リアクションホイールは千キロ以上離れたところに落ちることもある。

上記の通り衛星の破壊が始まる地点は、衛星が中間圏に突入した地点となるため、再突入の際の軌道は円軌道の半径を次第に狭めるのではなく、マヌーバによって楕円軌道に変化させ、その近地点(ペリジー)を落下予定地点に合わせることで行う。
無人宇宙探査機の地球大気圏再突入 再突入によって分解・焼失する「はやぶさ」。右下に離れて見える光点がカプセル。

月軌道以遠から無人宇宙機が直接地球の大気圏に再突入した事例は、2004年9月ジェネシス2006年1月スターダスト(いずれもサンプルリターン用カプセルのみ)、2010年6月はやぶさ(はやぶさ本体およびサンプルリターン用カプセル)がある。

月軌道も含めれば1970年 - 1976年に行なわれたルナ計画のサンプルリターン機(16・20・24号)も挙げられる。また着陸機でないものも含めると、嫦娥5号T1も月周回後に地球に帰還している。


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