堕胎
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人工妊娠中絶(じんこうにんしんちゅうぜつ、: induced abortion)は、人工的な手段を用いて意図的に妊娠を中絶させることを指す。妊娠中絶の一つであり、刑法では堕胎(criminal abortion[1])と言う。俗語で「堕ろす(おろす)」とも呼ばれる。本稿では、人工妊娠中絶を中絶と表記する。
目次

1 中絶方法

1.1 初期中絶(妊娠11週目程度まで)

1.1.1 薬物による中絶

1.1.2 掻爬術と吸引法


1.2 中期中絶(妊娠12週程度?21週目まで)

1.3 後期中絶(妊娠22週以降?)


2 中絶胎児

2.1 処理方法

2.2 先端医療への中絶胎児組織の利用


3 中絶を回避する諸制度や試み

3.1 特別養子縁組

3.2 里親制度


4 各国の堕胎

4.1 アジア

4.1.1 日本

4.1.2 韓国

4.1.3 中華人民共和国

4.1.4 インド


4.2 アフリカ

4.2.1 モロッコ


4.3 ヨーロッパ

4.3.1 ルーマニア

4.3.2 アイルランド

4.3.3 ドイツ

4.3.4 フランス

4.3.5 ポーランド


4.4 南北アメリカ

4.4.1 アメリカ合衆国

4.4.2 カナダ

4.4.3 ブラジル

4.4.4 エルサルバドル

4.4.5 パラグアイ



5 宗教からみた中絶

5.1 キリスト教

5.1.1 カトリック教会

5.1.2 プロテスタント


5.2 イスラム教

5.3 仏教

5.4 ヒンズー教

5.5 ユダヤ教

5.6 ゾロアスター教


6 中絶をめぐる論議

6.1 医学的生命倫理問題

6.2 中絶とメンタルヘルス

6.2.1 影響を否定する調査

6.2.2 影響を指摘する調査



7 中絶を希望する女性と人身売買

8 脚注

9 関連項目

中絶方法 真空吸引法 子宮掻爬法
初期中絶(妊娠11週目程度まで)

ドイツ[2]フランスイタリアなどのように、法定中絶期限または医学上の理由を除く任意の中絶期限を、この初期中絶相当の時期までに制限する国もある。
薬物による中絶

この時期は主にミフェプリストン(RU-486)という人工流産を引き起こす内服薬が使われる(薬剤による妊娠中絶)。メトトレキセートも同様の効果を持つ[3]。海外ではミフェプリストンや同様の効果を持つ[3]メトトレキセートなどの薬剤も使われる。共に不全流産や出血のリスクがあるが、発生頻度は自然流産と同等とされる。
掻爬術と吸引法

日本やポーランド、アイルランド等のミフェプリストンが未認可の国々では、掻爬術あるいは吸引処置が選択される。ラミナリアによる経管拡張には時間がかかり、通常1日間の留置が行われる。子宮頚管をラミナリア等で拡張後に、産婦人科器具(胎盤鉗子やキュレット、吸引器など)で胎児を物理的に直接除去する。苦痛を伴うために通常経静脈的に鎮静剤の投与が必要とされる。掻爬術は、英語で「拡張と掻爬」という意味で D&C(Dilation and Curettage)とも呼ばれ、ドイツ語ではAuskratzungと呼ばれる。子宮穿孔や出血などの合併症のリスクが高く安全性において「薬物による中絶」に大きく劣る。ミフェプリストンが開発される以前は、妊娠初期であっても吸引術や掻破術がファーストチョイスとして選択されていたが、ミフェプリストンが認可された国々ではリスクの問題のためにファーストチョイスとされない。また、術後にアッシャーマン症候群を起こすことがあり、不妊症となるケースがあるのも欠点である。
中期中絶(妊娠12週程度?21週目まで)

この時期は胎児がある程度の大きさとなるため、分娩という形に近づけないと中絶ができない。そのためラミナリアやメトロイリンテルなどで子宮頚部を拡張させつつ、プロスタグランジン製剤(膣剤、静脈内点滴)により人工的に陣痛を誘発させる方法がある。また、海外では中期中絶にも器具を用いるD&E(Dilation and Evacuation;「拡張と吸引」)と呼ばれる手法がしばしば行われ、WHOも陣痛誘発法より優先すべきことを推奨している。日本では妊娠12週以降は死産に関する届出によって死産届を妊婦は提出する必要がある。
後期中絶(妊娠22週以降?)

妊婦側の申し出による中絶は法的に認められておらず、また医療上の理由で母体救命のため速やかな胎児除去の必要性が生じた場合でも、早産の新生児が母体外でも生存可能な時期以降は帝王切開など胎児の救出も可能な方法を優先すべきである。しかし、それが不可能な状況のとき又は他の方法を施しても胎児の生存の見込みが無いと判断されたとき、胎児の体を切断したり頭蓋骨を粉砕して産道から取り出す等の緊急措置が行われることも想定される。胎児縮小術、回生術、部分出産中絶 (partial-birth abortion)、D&X(dilation and extraction;「拡張と牽出」)といった名称で呼ばれる。かつて医療水準が低かった時代には、分娩時に手足が引っ掛かった逆子や胎児の頭が大きすぎて骨盤を通過できず母体が体力を消耗して生命の危機にさらされたとき、こうした救済措置がとられることがあった。
中絶胎児
処理方法

12週未満の大部分の中絶胎児は医療廃棄物(感染性廃棄物)として廃棄され、12週以上の死胎は、墓地埋葬法に規定する「死体」として火葬・埋葬される。2004年、横浜市の産婦人科が一般廃棄物として中絶胎児を処分していた疑いで捜索されたことを受け、環境省および厚生労働省は法的な処理規定が曖昧だった12週未満の中絶胎児の取扱いについて各自治体へアンケートを実施し、「12週未満であっても生命の尊厳に係るものとして適切に取り扱うことが必要であり、火葬場や他の廃棄物とは区別して焼却場へ収集している自治体の事例を参考とするように」との見解を示した[4]
先端医療への中絶胎児組織の利用

中国やアメリカでは、中絶処置で摘出された胎児の組織を利用して、アルツハイマー病やパーキンソン病の治療などの研究に使用されている[5][6]。アメリカではそのための法整備もされており、網膜色素変性症などの一部の難病においては人体への臨床試験が実施され視力が回復した症例もある。日本でも一部の大学で動物研究が行われている[6]。一方、こういった行為に対して「胎児売買に繋がる」として、反対する団体もある。アメリカでは中絶胎児の組織の利用については住民投票が行われた州もあり[6]、推進する州と禁止する州にわかれている。バイオメーカーが集まるカリフォルニア州では研究に州の予算が投入されている[6]。このような研究についてドイツでは明確に禁止している[6]。日本では「ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会」が立ちあげられ議論が進められているが[6]、3年間-20回を超す会合を行っても堂々巡りの議論を繰り返すだけで、先進国で日本だけが2005年現在で「認可するか禁止するか」の結論が出ていない[6]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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