国家
[Wikipedia|▼Menu]

プラトンの著書については「国家 (対話篇)」をご覧ください。

国家(こっか)とは、国境線で区切られた領土に成立する政治組織で、その地域に居住する人々に対して統治機構を備えるものである。

領域人民に対して、排他的な統治権を有する(生殺与奪の権利を独占する)政治団体もしくは政治的共同体である。

政治機能により異なる利害を調整し、社会の秩序と安定を維持していくことを目的にし社会の組織化をする。

またその地域の住民は国家組織から「国民」(こくみん)あるいは「公民」(こうみん)と定義される。
目次

1 概論

2 国家の起源

3 法学上の定義

3.1 国家の三要素

3.2 現代的な基準外の国家

3.3 連邦国家の構成国家


4 社会学的な定義

5 様々な国家論

6 脚注

7 関連項目

8 参考文献

概論

国家という用語は古来特定の政治集団を表す用語として使用されてきたものであり、その語源は複雑である。漢語においては諸侯が治める卿大夫が治める家との総称であり、特定の境界を持つ支配地・支配民を意味していた。その対義語は、いかなる限定もされない支配地と支配民、つまり天下である。古代日本では律令制の用語法としての国家は天皇を意味しており、そのため国家を「ミカド」と訓ずることもあった。西欧においてはプラトンの著作『国家』の原書である: Πολιτε?α(politeia)を国家と翻訳する場合もある。また: res publicaや: commonwealthなども広い意味において国家と訳される場合がある。直訳として国家に該当する言葉のStateの語源: status(スタトゥス)である。: statoは「状態」を意味するが、フィレンツェの政治思想家ニッコロ・マキャヴェッリによって: lo stato「かかる(その)状態」を「現在の支配体制」という意味に転用した。彼は『君主論』で「政治共同体がはじめにあり、次いでそれに対応した支配機構が作られる」というそれまでの政治思想の想定を近世ヨーロッパの現実に即して逆転させ、「まず支配機構たる国家(stato)があり、それが各々の力に応じて土地と人民を領有する」というモデルを提示した。政治共同体の要素をそぎ落として把握した支配機構がマキャヴェッリのいう: statoであった。

国家は政治制度の集合体、領土の単位、哲学的な理念、弾圧や圧政の手段など多様な文脈で論じられる対象である。このような意味の混合は国家をどのように捉えるかという着眼点においてさまざまな立場を採りうることが原因である。例えば倫理的、機能的、そして組織的な観点を置くことができる。哲学者ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルの国家理論では倫理的な観点から国家を論じており、家族市民社会、そして国家に大別している。そして家族は限定的な利他主義、市民社会は普遍的な利己主義、そして国家を普遍的な利他主義の領域であると位置づけていた。つまり国家は家族のような利他性を備えていながらも市民社会の普遍性を持った社会的な存在として考えられるのである。機能の観点から見れば、国家は社会に対して担う役割から捉えることができる。国家の中心的な機能とは社会秩序を継続的に維持することであり、社会的安定を担保することである。例えばマルクス主義は国内の資本主義のシステムを長期的に存続させる国家の機能性を強調している。組織的な観点に転じれば、国家とは広義において政府の組織であり、市民社会とは区別される公的制度である。つまり政府、議会官僚軍隊警察裁判所社会保障体制などさまざまな制度から成立している組織として国家は概念化することができる。

さらに国家の諸々の側面について観察するならば、国家にはいくつかの特徴があることが指摘できる[1]。まず国家とは主権を備えており、それは社会における全ての集団よりも上位に位置する絶対的権力として行使されるものであり、その表現として政治思想家のトマス・ホッブズは著作で国家を海の怪物であるリヴァイアサンとして示している。また国家は公的な組織であり、私的な利益を確保しようとする家族や会社などから構成される市民社会から区別されるべき存在である。そして国家とは正当化の一つの実践であり、議会が社会の利害を反映する限りにおいて国家の決断は社会成員の合意として基本的に受け入れられる。さらに国家は支配の道具であり、社会学者マックス・ウェーバーが国家は「正当化された暴力」を独占していると指摘したように、法に従わせることを確実なものとする能力を持たなければならない。最後に国家は領土的な集団でなければならず、国家は国境によって地理的に区別されることで、国際社会において国家として承認される。
国家の起源

国家の起源には諸説あり、定説はないと言っていい。それは国家が、特に現代においては、多様であり、ひとつのモデルで説明しきれないことを表している。しかし、国家を静態的ではなく、動態的に捉えることは非常に重要である。動態的な国家起源のモデルを設定してそれを理念型とすることで、多様な国家の成り立ちをよりよく理解することができるようになるからである。

国家起源の動態モデルの例としてカール・ドイッチュの説がある。

ドイッチュは国家の起源を社会的コミュニケーションの連続性から説明する。彼によれば、国民 (nation) とは次の2種類のコミュニケーションの積み重ねの産物である。すなわち、第1に、財貨・資本労働の移動に関するものである。第2に、情報に関するものである。西欧における資本主義の発展に伴って、交通や出版、通信の技術も発達し、これら2種類のコミュニケーションが進展し徐々に密度を増すと、財貨・資本・労働の結びつきが周辺と比較して強い地域が出現する。ドイッチュはこれを経済社会 (society) と呼ぶ。また同時に、言語と文化(行動様式・思考様式の総体)における共通圏が成立するようになる。ドイッチュはこれを文化情報共同体 (community) と呼ぶ。日本のように経済社会と文化情報共同体が重なり合う例も存在するが、この2つは必ずしも重なり合うとは限らない。現在でも、複数国家で共通の言語が使われている例は珍しくない。一定の地域である程度のコミュニケーション密度が長期間継続すると、そこは「くに」(country) となる。そして、そこに住む人たちが「民族」(people) と呼ばれるようになる。この「民族」(people)が自分たち独自の政府 (government) つまり統治機構 (state) を持ちたいと考えた瞬間に「民族」peopleは「国民」(nation) となるのである。people、nationをともに「民族」と訳さざるをえない場合があるのは日本語の社会科学概念の貧困に由来する。民族自決を英語でself-determination of peoplesというのは以上のような思考過程を表すものと考えられる。

こうした「民族」(nation) あるいは「国民」(nation) が実際に政府を樹立し成立するのが「国民国家」nation-stateなのである。

現代における国家は必ずしもこうした理念型に合致するものではない。まともなコミュニケーションの進展も存在せず、それ故、「国民」(nation) と呼べる実体が全く不在の場所に国家 (state) だけが存在するという場合もあれば、ひとつの国家 (state) の中に異なる政府の樹立を求める民族 (nation) が複数存在する場合もある。ヨーロッパにおいては、これまでの国民国家 (nation-state) を包括するような大きな主体の出現が議論されている。それに対して、さらに細分化された民族 (people) が自らの政府の樹立を望んで国民 (nation) となろうとしているようにも見える地域も無数に存在している。こうしたことはEUの発展するヨーロッパにおいても見られる。

静態的な国家論だけでは国家を捉え切ることは非常に困難であると考えられる。
法学上の定義

法学政治学においては、以下の「国家の三要素」を持つものを「国家」とする。これは、ドイツの法学者・国家学者であるゲオルク・イェリネックの学説に基づくものであるが、今日では、一般に国際法上の「国家」の承認要件として認められている。
国家の三要素

領域(Staatsgebiet:領土、領水、領空)- 一定に区画されている。

人民(Staatsvolk:国民、住民)- 恒久的に属し、一時の好悪で脱したり復したりはしない。

権力(Staatsgewalt)ないし主権- 正統な物理的実力のことである。この実力は、対外的・対内的に排他的に行使できなければならない、つまり、主権的(souveran)でなければならない。

このモデルにおいては、国家とは、権力が領域と人民を内外の干渉を許さず統治する存在であると捉えられているのである。領域に対する権力を領土高権(Gebietshoheit)、人民に対する権力を対人高権(Personalhoheit)という。国際法上、これらの三要素を有するものは国家として認められるが、満たさないものは国家として認められない。この場合、認めるか認めないかを実際に判断するのは他の国家なので、他国からの承認を第四の要素に挙げる場合もある(モンテビデオ条約の項目も参照のこと)。
現代的な基準外の国家

要件を満たさない支配機構や政治共同体も存在しうる。国家は近代の歴史的産物(近代国家も参照)であり、それ以前には存在しなかった。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:42 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:FIRTREE