利根川
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特にマスクラットは江戸川・中川下流域にほぼ限定して生息しているが、その鋭い前歯による行動は堤防などの河川施設に重大な被害を及ぼすことがヨーロッパで確認されており[21][注 3]、個体数の増加は江戸川の治水に影響を与える可能性がある。

鳥類については植物や昆虫同様上流域と中・下流域で生息する種類が異なる。上流域にはオオワシイヌワシクマタカといった猛禽類イワヒバリホシガラスといった高山性の鳥類が生息。矢木沢ダムや藤原ダムといった利根川上流のダムにおいても飛来が確認されている[26][27]。このほか渓流などでカワセミサンショウクイなども確認できる。中流部以降ではスズメカラスホオジロなどのごくありふれた鳥類のほかヨシ群生地などでカイツブリなどが見られる。渡り鳥としてはオオハクチョウコハクチョウが霞ヶ浦に飛来するほか、渡良瀬遊水地や渡良瀬川合流部付近は自然植生が豊富なこともありサシバチュウヒノスリホオアカなどの猛禽類やカモシギチドリ類が飛来、または定住する[24][25]。一方外来種としては2003年(平成15年)に取手市において特定外来生物であるソウシチョウの1個体が確認されている[21][22]。利根川流域に生息・飛来する鳥類は136種を数える[25]
魚類・水生生物 ハクレン。産卵期には利根川中流域で勢い良く飛び跳ねる姿を観察できる。 サケアユ遡上のため魚道の新設などを実施した利根大堰(利根川)。遡上数は上昇傾向にある。

魚類については8目13科43種が確認されており、上流ではイワナヤマメカジカが主に、中流ではオイカワコイギンブナモツゴウナギなどが生息し、絶滅危惧種のゼニタナゴも一部に生息する。また下流ではボラスズキハゼカタクチイワシなどが遡上し、河口部ではクロダイカレイといった海洋性の魚類も生息している。利根川においては固有種としてソウギョハクレンといった中国よりの移入種が生息し、毎年夏になると国道4号利根川橋付近において産卵のために勢い良く飛び跳ねる姿を確認することができる[28][29]

回遊魚としてはアユサケが代表的で、サケについては利根川は太平洋側に注ぐ河川としてはサケ遡上の南限とされている[29]。回遊魚については江戸時代以降の用水路建設、また戦後の利根特定地域総合開発計画などでダムやが利根川流域に多く建設されたことから(後述)、一時これら回遊魚の遡上が大幅に減少した。特に河口から154km上流にある利根大堰はこれら回遊魚の遡上を大きく阻害する要因であった。このため堰を管理する水資源開発公団(現独立行政法人水資源機構)は1983年(昭和58年)からサケの遡上調査を開始するとともに1995年(平成7年)からは2年掛けて魚道の新設と改築を実施。また2005年には環境保護団体の要望を受け、アユの遡上・降下期に堰のゲートを開く運用が試験的に開始された。こうした官民の協力もあって利根大堰地点でのサケ・アユの遡上数は経年的に増加している[30]。その一方で利根川河口堰については完成以後ヤマトシジミの生息に多大な影響を与えたなど環境保護団体から指摘を受けている[31]。一方特定外来生物として日本各地で問題となっているブラックバスブルーギルは利根川流域についても河口堰上流の全域に広範な生息が確認され、チャネルキャットフィッシュも生息域が拡大している。また世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれ、メダカを捕食するカダヤシの生息が確認された[21][22]

水生・底生生物については177種が確認されているが、その主なものはトビケラカワゲラカゲロウ類で主に上流・中流域に多く生息している。一方下流域は河床(川底)が砂質・泥質主体となるので水生生物類の生息は少なくなり、代わりにヒメタニシサカマキガイゴカイイトミミズなどが多く生息するようになる[28]。利根川下流域は山梨県甲府盆地福岡県佐賀県筑後川下流域などとともに日本住血吸虫症の発生地として知られ[32]中間宿主であるミヤイリガイが生息していたが、1973年に虫卵排出患者とミヤイリガイの棲息が報告されたのを最後に新たな疾患の発生および貝の棲息は確認されていない[33]。代わりに特定外来生物で大量斃死(へいし)すると水質汚濁をひき起こすカワヒバリガイが我孫子市・印西市の利根川流域や霞ヶ浦で新たに確認されており[21][22]、北総東部用水など利根川下流域農業用水施設の通水・揚水障害といった被害が増加している[34]

利根川水系は内水面漁獲量では日本全国の総漁獲量に占める割合が約30%と、水系としては日本最大の漁場でありかつ首都圏という大消費地に近い。このため漁業協同組合の数も多く、流域一都五県で81組合が存在し第1種・第2種・第5種漁業免許を取得している[35]
名称

利根川の名称は、『万葉集』巻第十四に収載されている「東歌」のうち「上野国の歌」にある以下の和歌が文献上の初出である[36]。刀祢河泊乃 可波世毛思良受 多太和多里 奈美尓安布能須 安敞流伎美可母(利根川の 川瀬も知らず ただ渡り 波にあふのす 逢へる君かも) ? 『万葉集』巻第十四、東歌「上野国の歌」

この和歌の冒頭にある「刀祢河泊」がすなわち利根川のことである。意味は「利根川の浅瀬の場所もよく考えないで真っ直ぐに渡ってしまい、突然波しぶきに当たるように、ばったりお逢いしたあなたです」と解され、庶民女性による寄物陳思の表現様式を採る相聞歌である。これについて犬養孝は自著『万葉の旅(中)』において、上野国の歌でありかつ人が渡河できる程度の川幅であることから、歌に詠まれた利根川の位置は現在の沼田市から渋川市にかけてではないかと推定している[36]

和歌に見える「刀祢」について、これまで様々な説が提唱されたが何れも定説となっておらず、真の意味は未だに不明である。主な説としては利根郡から来た説、水源地の辺りには尖った峰、すなわち「尖き峰(ときみね)」が多くそれが簡略転化したという説、水源である大水上山の別称が「刀嶺岳」・「刀祢岳」・「刀根岳」・「大刀嶺岳」と呼ばれ、それに由来する説[36]、「等禰直(とねのあたい)」あるいは「椎根津彦(しいねつひこ、とねつひこ)」というの名に由来する説[37]などがある。さらに語源をたどるとアイヌ語に行き着くとされるが、そのアイヌ語の解釈も諸説ある。


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