中止したダム事業
[Wikipedia|▼Menu]

中止したダム事業(ちゅうししたダムじぎょう)とは、様々な理由から建設計画が中止されたダム事業のことである。この項では主に日本国内のものについて記述する。
目次

1 概要

2 事業中止の理由

2.1 反対運動によるもの

2.2 代替事業・立ち消えによるもの

2.3 需要の減少・事業者の財政問題によるもの

2.4 地質的制約の問題によるもの

2.5 環境問題・既得権益(漁業権・水利権)によるもの

2.6 脱ダム宣言によるもの


3 中止ダム一覧

3.1 北海道

3.2 東北

3.3 関東

3.4 北陸

3.5 中部

3.6 近畿

3.7 中国・四国

3.8 九州・沖縄


4 脚注

4.1 注釈

4.2 出典


5 出典

6 関連項目

概要

ダム事業は通常一度計画されたものについては時間がかかっても最終的には完成するのが常で、一部の例外を除きダム事業が中止となることはありえなかった。だが、時代の変化と共に河川行政に対する国民の視点が大きく変化し、ダム事業もその中で大きな転換点に差し掛かった。これを現実のものとしたのは1990年代以降特に行われた公共事業見直しの風潮である。実施計画調査開始から10年以上経過したり予備調査のみしか行われていないダム事業について河川行政を管轄する国土交通省が事業の総点検を行った。その中で反対運動等でこれ以上の事業進展が不可能であったり、代わりとなる治水・利水案がダム事業よりコストパフォーマンスが優れている、事業に対する流域のメリットがなくなったなど、様々な理由により事業が中止となっている。

主な理由としては以下のものあるが、近年では単独の理由で中止となるよりは複合的な事情が重なって中止となるケースが多い。ダム事業の中止とは以前は極めて稀なケースだったが、現在では公共事業見直し論の浸透で多くのダム事業が建設中止となっており、今後もこの傾向は継続するものと見られている。
事業中止の理由

この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2013年7月)

反対運動によるもの

ダム事業の中には、様々な理由で建設事業に対する反対運動が起きる。反対運動が強烈だと市町村議会挙げての「ダム建設反対決議」を行う自治体も多く、本体工事以前に事前調査を拒否する為実施計画調査段階で膠着化する。そしてこの状態が20年 - 30年以上継続するケースが現れ事業が事実上凍結になる事も多い。

反対運動によるダム事業中止は北海道勇払郡占冠村に建設予定であった赤岩ダム(鵡川)が大規模多目的ダム事業としては初である。占冠村の主要部を含め大多数が水没予定となることに村民が一丸となって反対運動を起こし、1961年(昭和36年)に事業中止となった。徳島県建設省(現・国土交通省四国地方整備局)が計画していた細川内ダム(那賀川)は30年以上地元の木頭村(現・那賀郡那賀町)が強硬に反対し、1996年(平成8年)に建設事業は事実上休止、2000年(平成12年)には計画中止となっている。この他「利根川改定改修計画」の根幹施設として、群馬県沼田市に同じく建設省によって建設が計画されていた沼田ダム(利根川)は、総貯水容量8億トンという日本最大の人造湖を誕生させようとしたが、沼田市中心部が完全水没するのを始め2,200世帯という前代未聞の住民移転が見込まれ、群馬県全体が反対姿勢を見せ膠着。計画自体が立ち消えとなった。
代替事業・立ち消えによるもの

ダム事業は通常、どの地点にダムを建設するかを調査するところから始まる。これを「予備調査」と呼ぶが、この時点において計画されたダム事業は、そのまま継続して完成する場合もあれば、その後の諸事情によって計画地点を変更したり、あるいは立ち消えで終わる例もある。

ダムを建設しても治水や利水に有効なだけの貯水量(有効貯水容量)を得ることができない場合はダムを建設するメリットが全くないため、大抵予備調査の段階で中止となる。この他、ダム建設に必要な河川勾配や流域の地質が十分な条件に満たない場合や流域に余りにも人家が密集し過ぎてダム建設計画が成り立たない場合も中止となる。前者では釧路川米代川雄物川富士川加古川円山川四万十川遠賀川といった一級水系の本川がこれに当たり、長良川もこの範疇に入る。こうした水系では、ダムが建設されない代わりに多目的ダムの機能を兼ね備えた可動堰河口堰放水路を本川に建設するか、あるいは主な支川に多くのダムを建設して対処する。後者では代表的なものとして四十四田ダム北上川)があり、当初は現地点より上流部に建設予定だったのが変更となっている。

これらの理由でも計画変更による中止や、立ち消えとなる場合もある。こうしたダムにおいては、計画段階で中止となる例がほとんどであるために型式を始めとする諸元が全く分からなかったり、不確かである場合が極めて多い。
需要の減少・事業者の財政問題によるもの

ダム事業は1950年(昭和25年)の国土総合開発法に基づく「河川総合開発事業」や1962年(昭和37年)の水資源開発促進法に基づく「河川水資源開発基本計画」に沿っている場合も多く、そのためこれらの法律が施行された1950年代?1960年代のいわゆる高度経済成長期に計画されたダムも多い。こうしたダムでは当時の水需要に沿った計画がなされたまま事業を進めているダムも多く、水需要の変化した現在ではかえって不要・過剰な供給であることも指摘されている。かんがい用ダムについても、減反政策第一次産業人口の減少、農業施設合理化等に伴う耕地面積の縮小により当初予測より農業用水の需要が減少する傾向が見られた。こうしたことから現在の需要と照らし合わせて実情にそぐわない事業に関しては、計画見直しに伴う事業中止もある。

これと関連して地方自治体の税収減少による財政難で、当初は事業主体としてダムを計画していたり、特定多目的ダム事業に利水で参加していながらも、巨額の負担に耐えられず事業を再検討する自治体も現れ、補助多目的ダム事業中止・凍結の他利水目的で参加していたダム事業からの撤退が利根川水系や淀川水系で相次いだ。また、発電事業にかかわるダム事業についても、当初予測した電力需要に比べて実際の電力消費量が伸び悩むケースが多々あり、こうしたことから大規模な揚水発電用ダムを建設してもコストパフォーマンスに欠け、企業経営を圧迫する可能性がある等の理由からこうした発電用ダムの建設事業が計画段階で中止となっている事も近年散見される。

これらは、経済成長の鈍化とそれに伴う税収の減少、産業構造が重厚長大型から軽薄短小型に構造転換して行ったこと。さらには大都市人口のドーナツ化現象等による減少傾向が水需要の減少・電力需要の減少に繋がっており、ダム事業のみが当時の計画のまま時代の趨勢に追い付けなかったことが背景にある。近年のダム事業中止の大半はこうした事情によるケースが多い。
地質的制約の問題によるもの

ダム事業の予備調査・実施計画調査において最も重要な調査の一つが地質調査である。ダムサイトの地盤が脆弱であると巨大な水圧に耐えられず堤体が崩壊し、決壊事故となる。また地形的に脆弱な地点にダムを建設し、湛水すると土壌に貯水した水が浸透してさらに地盤が緩み、地すべりを惹き起こす。前者による事故としてフランスで発生したマルパッセダム決壊事故があり地盤ごと決壊して500人以上の死者を出し、後者の例では1962年に北イタリアで発生したバイオントダム貯水池地すべり事故があり、地質調査を怠って建設を強行したことにより結果2,200人が死亡するダム事故史上最悪の惨事を招いた。故に地質が悪い所にダムは建設できず、このために事業が中止になるのは安全上やむをえない。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:181 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:FIRTREE