プライバシー
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ウィキペディアにおけるプライバシーについては、Wikipedia:削除の方針#ケース B-2:プライバシー問題に関してをご覧ください。

橋本美加子のシングル曲については「個人生活(プライバシー)」をご覧ください。

プライバシー、プライヴァシー(: privacy)は、私生活上の事柄をみだりに公開されない法的な保障権利である[1]個人情報保護の文脈では、他者が管理している自己の情報について訂正・削除を求めることができる権利(積極的プライバシー権)を指す。英語の privacy を片仮名表記したものであり、日本語では私事権や私生活と訳されることもある。
目次

1 プライバシーの定義と変遷

2 プライバシーに関する論点

2.1 主な論点

2.2 死者のプライバシー

2.3 他の人権との衝突


3 アメリカにおけるプライバシー権

4 日本におけるプライバシー権

4.1 歴史

4.2 個人情報保護法

4.3 プライバシー権を巡る事例


5 プライバシー権の国際化

5.1 OECD8原則

5.2 EUデータ保護指令

5.3 APECのCBPR


6 プライバシー保護に関する標準

6.1 プライバシー影響評価

6.2 個人情報保護マネジメントシステム


7 脚注

8 参考文献

9 関連項目

プライバシーの定義と変遷

法制度におけるプライバシーの概念はすでにコモン・ローにその萌芽があり、そこでは「不法行為法上の権利として、個人の私生活に関する情報を公開されない自由および私事に属する領域への他人の侵入を受けない自由の意味で用いられた」[2]

法律上の権利としてプライバシーが理論化された起源は、1890年アメリカの弁護士のSamuel D. WarrenとLouis_Brandeisが「プライバシーの権利」(The Right to Privacy)という論文がハーバード・ロー・レビューに掲載されたところに遡る。彼らはプライバシーを「一人でいさせてもらう権利」(the right to be let alone)と定義つけた[3]。「一人でいさせてもらう」の解釈の一つとして、隔絶されることを望めばそれを選べる、というものがあり、自分の家のような私的空間では他人から調べられたり詮索されたりする事から逃れられる事であると解釈できる[4]

1960年になるとウィリアム・プロッサー(William L. Prosser)が「プライバシー」という論文でプライバシーを以下の4つの類型に分類した(プロッサーの四分類):私生活への侵入、私的事実の公開、公衆の誤認を招く公表、(氏名や肖像などの)盗用[3]

その後情報化社会の到来とともにプライバシーの権利に積極的意味が持たされるようになり(積極的プライバシー)、アラン・ウェスティン(Alan Westin)は1967年の著書「プライバシーと自由」で、プライバシーの権利を「自己に関する情報に対するコントロールという権利」であると述べた[5][6]。この定義はプライバシーの意味として最もポピュラーな理論の一つである[7]

京都大学の佐藤幸治はこの説をベースに自己情報コントロール権を提唱し、その定義として「個人が道徳的自律の存在として、自ら善であると判断する目的を追求して、他者とコミュニケートし、自己の存在にかかわる情報を開示する範囲を選択できる権利」を採用した[8][9]。また東京大学の憲法学者である芦部信喜も「プライバシーの権利は、情報化社会の進展にともない、「自己に関する情報をコントロールする権利」(情報プライバシー権)と捉えられて」いるとしている[10]

日本におけるプライバシー権は論者により様々であるが[11]、日本の憲法学においては自己情報コントロール権がプライバシーの権利の解釈の最有力になっている[12]。日本におけるプライバシー権は自己情報コントロール権や前述の一人でいさせてもらう権利以外にも自己決定権や静穏のプライバシー権が提示されている[11]。自己決定権は「個人が一定の個人的な事柄について、公権力による干渉を受けずに自ら決定する権利」を意味し[13]、静穏のプライバシー権を例を用いて説明すれば「電車やバスの中で聞きたくもないにもかかわらず大きな放送を聞かされることにより心がかき乱されることがない利益」[11]である。
プライバシーに関する論点
主な論点

プライバシーに関する議論の論点は、以下のようにカテゴライズできる[14]
放っておかれる権利(the right to be let alone)

他人による個人情報へのアクセスを制限する選択肢(the option to limit the access others have to one's personal information)

秘匿、すなわち他人からの任意の情報を隠す選択肢(secrecy, or the option to conceal any information from others)

自分に関する情報を他人が利用する事へのコントロール(control over others' use of information about oneself)

プライバシー状態(states of privacy)

人間性と自律(personhood and autonomy)

自己のアイデンティティと人間的成長(self-identity and personal growth)

親密な関係の保護(protection of intimate relationships)

「プライバシー状態」に関してはAlan Westinが4つのプライバシー状態(ないし体験)を定義している:孤立(solitude)、親しさ(intimacy)、匿名(anonymity)、担保(reserve)[15]。ここでいう「親しさ」とは、個々人の間の親密でリラックスしてくだけた関係を指し[15]、「担保」とは望まない侵害行為に対して心理的バリアを作ることができ、このバリアによって自分自身に関する情報の伝達を制限したいという要求が尊重される、という状態が担保される事を意味している[15]

「人間性と自律」に関して、Jeffrey Reimanは自身の物理的心理的実体や道徳的権利の自己決定権を自分自身が保有しているという感覚でプライバシーを説明した[16]

「自己のアイデンティティと人間的成長」を確立する前提条件としてプライバシーが理解されることもある。Irwin Altmanはプライバシーによるバリアーは周囲と自己との境界を定義し、自己と定義するのを手助けを与えるとしている[17]。またHyman Grossはプライバシーがなければ自分自身を自由に表現できず、自己の発見や自己批判に取り組むことができなくなる事を示唆している[18]
死者のプライバシー

死者のプライバシー権については、アメリカ合衆国イギリスの法律では、名誉毀損とともに、それによって遺族がプライバシー侵害を受けていない限り訴えることができないものとされている。一方、ドイツなどヨーロッパの法律では死者自体の人格権を認めているものの、判例も学説も二分されている。フランスの法律は、プライベートな場所にいる個人を同意なく撮影した者を、私生活を侵害した罪で処罰するとしている[19]日本においては、死者の人格権侵害によって遺族自身の人格権を侵害(名誉毀損などを)したとして訴訟判決に至る例が多い[20]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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