さて、まずは実際に乗ってみよう。
JR大船駅の東口側、バスターミナルの上空に、大船(おおふな)乗降場は浮かんでいる。昔は梯子でしか上がれなかったため、手足に障害を持っている人はこの時点で篩い落とされていたが、現在では小型の軌道エレベーターが設置されており、誰でも乗降場に上がることができる。(なお、軌道エレベーターが設置されているのは、ここと湘南町屋乗降場のみであり、その他の乗降場では現在でも梯子でしか地上との行き来はできない。但し片瀬山乗降場は地上に設置されている(後述)。)
約7分30秒間隔で運行されている(早朝と深夜は15分間隔)ので、行楽シーズンと通勤ラッシュ時以外はほぼ待たずに乗ることができる。終点の湘南江の島乗降場までは1回300円、ジェットコースターとしては破格の安さだ。券売機で切符を買って、改札のおじさんに見せよう。
「おや、パスはお持ちではないですか?」
そうそう、湘南ジェットコースターは切符だけでは利用できない。切符と“パス”が必要なのだ。
「安全のため、このジェットコースターに乗られる方は、まず規定の安全講習を受けて頂かなければならないんです。講習は無料ですし、終わりましたら3年間有効の安全講習修了済み証(パス)を差し上げますので、2回目からは切符を買っていただければ、あとは切符とパスを見せるだけでお楽しみ頂けますよ。」
というわけで、まずはこの安全講習とやらを受ける。改札の横にある小さな部屋に連れて行かれ、そこで3時間ほどビデオを見なければならない。ビデオの内容は、最初の15分がこのジェットコースターの概要とその歴史について、次の15分で利用者が安全上守るべき事柄と、緊急時の対処についての説明である。
残りの2時間30分は、それらの事柄を守らないとどのような悲惨な事故が起こるかを実演した映像だ。例えば、足をぶらぶらさせていると傍の建物や樹木に当たって脱臼や骨折をしてしまったり、ひどいときには足が建物側に引っ掛かって座席から外れてしまい、そのまま地上へと落下することになるという。地上へと人間が落ちて、脳漿や血沫などが飛び散る様子などは凄くリアルだったが、一体どうやって撮影したのだろう?
安全講習を終えると、パスが貰えて、いよいよ乗車となる。上で述べたように車両は懸垂式で、4名分の座席を1つの単位としてレールにぶら下がっており、それを15個連ねたものが「1両」だという。で、今日乗っている編成は3両編成だ。座席は1人分ずつ分かれており、上半身を固定する安全ベルトは各自が自分で固定しなければならない。懸垂式なので当然だが足は宙ぶらりんだ。大丈夫かなあ。
発車メロディーとして『真白き富士の嶺』が流れた後、車両はゆっくりと動き出した。さあ、スタートだ。確かこれは追悼の歌だった気がするが、とりあえず気にしてはいけない。
富士見町乗降場ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディアの専門家気取りたちが「富士見町駅 (神奈川県)」の項目を執筆しています。
1分ほどで最初の乗降場、富士見町(ふじみちょう)に到着。足の下に遊園地があったり雪原があったりしたことはあったが、ここでは足の下は自動車がびゅんびゅん走っている普通の道路だ。はっきりいって怖い。更に、ここまでの区間ではJR横須賀線の線路の上空も通っている。高さはギリギリで、足が長い人だったら横須賀線の架線に触れてしまうんじゃないだろうかという気さえする。
地元の人らしき何人かが乗ったり降りたりする。大船で買い物でもしたのだろうか、重そうな買い物袋を両手に持っている主婦もいる。あんな重いものを持ってこのジェットコースターに乗り、しかもこの乗降場の梯子(さすがに縄梯子ではなく、金属製で丈夫そうではあるが)を昇り降りできるなど信じ難いが、慣れれば大丈夫なんだろうか。
ところで、このジェットコースターは、単線であるにも関わらず往復両方の利用を可能としているため、さながら単線の鉄道と同様に交換所が設けられている。この富士見町も交換所のひとつだ。交換所そのものは開業当時からあったが、地元の要望などを受けて交換所を乗降場に改造したようだ。
なお、大船乗降場以外の乗降場は基本的に全て無人であり、安全講習も大船乗降場でしか受けることはできない。また、無人の乗降場は全て自動券売機のみが設置されており、切符とパスのチェックは乗務員によって行われている。
そんなことを考えている間に大船へと向かう車両が来る。目の前の線路が開くや否や、乗務員が軽くホイッスルを吹いただけで発車となる。
湘南町屋乗降場ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディアの専門家気取りたちが「湘南町屋駅」の項目を執筆しています。
次の湘南町屋(しょうなんまちや)乗降場は、三菱電機前という別名でも呼ばれている。三菱電機の基地と軍需工場が近くにあり、ここと大船乗降場との間は兵士や工作員たちの通勤路線も兼ねているのだそうだ。また、前述のように湘南ジェットコースターを設置したのも三菱グループであるため、大船から湘南町屋までの利用料金については1回170円と割安に設定されている。
確かに兵士であれば梯子の昇り降りくらいは問題なくできるのだろう……と思ったら、ここには軌道エレベーターも設置されている。最近改築された際に取り付けられたとかで、それまでは梯子が1本しか無く、ラッシュ時にはホームに兵士が溢れかえるために小競り合いによる死者が絶えなかったのだという。現在では、この軌道エレベータのほかにも梯子が2本設置され(計3本)、混雑は大分緩和されているようだ。
昼間だったので乗降客は地元住民しかおらず、すぐ発車となる。
湘南深沢乗降場ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディアの専門家気取りたちが「湘南深沢駅」の項目を執筆しています。
湘南深沢(しょうなんふかさわ)乗降場のすぐ傍には、かつてJR東日本の「大船工場」と呼ばれる基地があり、工場とその隣の社宅とでかなり活気があったと言われている。しかし、現在では基地機能は廃止されてしまっており、隣の社宅(社宅といっても優に10000戸以上はある大規模集合住宅群である)からは住民が全員追い出され、封鎖されてしまった。建物はそのまま解体されず残っているため、割れ窓理論に従って、廃墟としての成長の道を順調に歩んでいる。この廃墟を湘南ジェットコースターと組み合わせて、アミューズメント施設として活用しようという案が現在持ち上がっているそうで(乗降場にも看板が掲げられていた)、今後の展開が期待される。
車窓(といっても勿論、ジェットコースターなので窓なんか無く吹きっさらしだが)からは、この廃墟群と、かつて工場があった更地(現在では草原になっている)を、乗車したままで眺めることができる。ひとつ廃墟探検といきたいところだが、自分の身体を固定している安全ベルトはどうやったら外せるのだろう。一応さきほどの安全講習で外し方は習ったし、実際に、地元住民らしき周りの乗客は、みな僅か数秒でベルトを外していっている。が、観察してもどうもよくわからない。まあ、とりあえず湘南江の島に着いてから乗務員に再度習えば良いだろう。
ここからコースは山間部に突入する。乗降場間の距離が最も長いのはこの区間で、最高速度の75km/hもここでの記録である。また、途中にはトンネルもあり、このトンネルを70km/h以上の速度で通過するのだ。
西鎌倉乗降場ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディアの専門家気取りたちが「西鎌倉駅」の項目を執筆しています。
首から提げていたカメラが無い。被っていた帽子も、両手でしっかりと抱えていた鞄も無い。どこへ行ってしまったんだ。いや、それよりも、なんで身体中が水浸しなんだ? 空はこんなに晴れているのに。
何が起こったのかわからず、うろたえていると、近くに座っていた地元住民らしき老人が声を掛けてきた。
「あんた、モノレールは初めてかい? きっとトンネルの中で魔物にやられたんじゃな(笑)」
えっ、魔物? そういえば確かに、アンサイクロペディアの鎌倉市の記事には「妖怪アヤカシ魑魅魍魎」が出没していたと書いてあるし、そこで紹介されていた文献資料『鎌倉ものがたり』では、鎌倉では現在も人間と魔物が共存しているとの記述もある。