首から提げていたカメラが無い。被っていた帽子も、両手でしっかりと抱えていた鞄も無い。どこへ行ってしまったんだ。いや、それよりも、なんで身体中が水浸しなんだ? 空はこんなに晴れているのに。
何が起こったのかわからず、うろたえていると、近くに座っていた地元住民らしき老人が声を掛けてきた。
「あんた、モノレールは初めてかい? きっとトンネルの中で魔物にやられたんじゃな(笑)」
えっ、魔物? そういえば確かに、アンサイクロペディアの鎌倉市の記事には「妖怪アヤカシ魑魅魍魎」が出没していたと書いてあるし、そこで紹介されていた文献資料『鎌倉ものがたり』では、鎌倉では現在も人間と魔物が共存しているとの記述もある。しかし、まさか自分が被害に遭うとは……。
「大船のエレベータの下で、護符を売っておらんかったか? モノレールの安全講習じゃ言っとらんが、護符無しであの暗闇のトンネルを通るなんて、死にに行くようなもんじゃよ。命があって良かったのお。」
そうだったのか……。確かに大船乗降場の軌道エレベータの地上側入口で、物売りが何かお札のようなものを売っていた記憶がある。土産物の類かと思い気にも留めなかったが、あれがそんなに重要なアイテムだったとは……。
あれ、そういえば、この先にもう1つトンネルがあるんじゃなかったっけ? やばい?
「いや、目白山の先のトンネルは藤沢市だから大丈夫じゃ。」
そうか。まずは一安心。
――って、なんで私がひとことも喋っていないのに、この人は私の考えていることがわかるのだろう?
そんな疑問を抱いたところで、ちょうど西鎌倉(にしかまくら)乗降場に着き、老人は降りていった。
この区間では2008年2月に、車両のディスクブレーキが何者かの狙撃によって破断させられ、車両がポイントに突っ込むという事故が起きている。幸いにもその事故での死傷者はいなかったが、狙撃の目的や、狙撃を行った場所などは、今もって謎のままとなっている。狙撃の場所を推定すべく、周辺の景色をよく見ようと思っていたのだが、うろたえているうちに通り過ぎてしまったようだ。残念。
片瀬山乗降場ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディアの専門家気取りたちが「片瀬山駅」の項目を執筆しています。
突然、脛に鋭い痛みが走った。
といっても、今度は何が起こったのかはっきりしている。片瀬山(かたせやま)乗降場は、地形の関係からか地表近くに設置されているため、宙ぶらりんのままだった足を地面にぶつけてしまったのである。
そういえば、安全講習でも、片瀬山乗降場付近は地面が近いのでぶつかることがあると言っていた。足が長い人はここだけ少し斜めにしたりしているようだ。スカートでの乗車は推奨できない、と言っていた理由もわかる。
ところで、片瀬山乗降場の近くには、白百合の名前を冠した女子校(小学校から高校まで)があり、このジェットコースターを通学に利用している学生も少なくないという。ぜひ、制服姿の女の子たちが、連れ立ってこの車両に乗る姿を見てみたいものだ。それを車両の下から見上げれば、素晴らしい光景を見ることができるに違いない。
片瀬山乗降場は、梯子もエレベータも設置されておらず、地上から普通にスロープを歩いて入ることのできる唯一の乗降場となっている。杖をついた老婦人などもいるが、こういった方々でも乗降ができるようになっているのは良いことだ。よく見ると、その老婦人は両足とも膝から下が無いようだが、きっと気にしてはいけないのだろう。
目白山下乗降場ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディアの専門家気取りたちが「目白山下駅」の項目を執筆しています。
「目白山下」(めじろやました)という地名はどこで区切るのかわかりづらいが、「目白山」という山があり、その「下」という意味であると考えられている。但し、実際にこの乗降場があるのは、どうみても山の中腹であり、すぐ江の島寄りには2つめとなるトンネルがある。
交通機関としては“片輸送”になっているようで、大船から段々と乗客は減り続け、もう乗客は自分しかいない。ふと時計を見ると、大船を出てからまだ12分ほどしか経っていない。なんだか色々なことがあったような気がする。
湘南江の島乗降場ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディアの専門家気取りたちが「湘南江の島駅」の項目を執筆しています。
1分ほどの短いトンネルを抜けると、もうそこは湘南江の島(しょうなんえのしま)乗降場であった。といっても、その名前に反して江ノ島はまだ見えない。設置当時は江ノ島にほど近い位置が終点となる予定だったのだが、江島神社の弁財天との交渉がうまくいかず、結界のなかにコースを延ばすことができなかったのだという(この結界については江ノ島#概要の項に詳しい)。
元々は大船と湘南江の島の2ヶ所しか乗降場を設けない予定だったので、ここ湘南江の島は豪華に20階建ての自社ビルが建設され、その5階が乗降場となっている。但し、軌道エレベータの類は設置されておらず、2階から4階まではエスカレータがあるものの、1階から2階までと4階以上の移動は階段のみとなる。
さて、ゴールまで着いたので降りようと思ったのだが、やはり安全ベルトがどうしても外せない。乗務員に声を掛けようと思ったが、休憩室でもあるのか到着早々にどこかへ消えてしまった。
数分格闘してみるが、どこでどう引っ掛かっているのかどうしてもわからない。もがいているうちに、腕が座席の別のところにあたり、何か「カチッ」という音がした。動いた弾みで、何か別のボタンを押してしまったようだ。
そのボタンには「Self Bomb Button」と記されていた。
サイレンが響き渡る。「Ten, Nine, Eight,...」とのアナウンスも響き渡る。周りの客や乗務員が泡を食ったように逃げ惑い、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
なんだなんだ、一体どうしたんだこれは? おい誰かこっちに来てベルトを外してくれよ!?
「Three, Two, One...」
あぼーん!氏房!
その後,見た者は誰もいないと言う。
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