- 675 名前:ヒゲのひと1 mailto:sage [2010/07/21(水) 21:32:13 ID:qz/Mq2L+]
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「ほんと…別人みたいでしたねぇ…」 川の字で寝床につき、寝ついた藍子にうちわ風をあてながら、 布美枝が呟いた。 「ン? ああー…あのアシスタントか」 「はい」 「仙人のような顔つきがいいだろう。腕も確かだ」 自らスカウトして見つけてきたことを誇らしげに鼻息を荒げるが、 布美枝はまだぼんやりとした顔つきで首を傾げている。 「仙人…というか……」 「何だ? ごぼうか? タロイモか?」 「うふふ。髪を整えたら随分男前が上がっちょってでしたよね」 まるでテレビの人みたい…と呟いた布美枝に、無論他意はなかった。 が。 (何を上の空な顔つきをしとるんだ…うちのは) 無意識にちょちょいと前髪を分けてみる。 授賞式のごとくじっと見つめたまま首を傾げた布美枝は、 それに気付いてそっと手を伸ばした。 「お父ちゃん」 「お…おぉ」 やっと、目の前の”いい男”に気付いたかと、胸を反らした…が。 伸ばされた布美枝の手はそっと茂の額から前髪を払い、 寝ついた藍子の代わりに今度は茂にうちら風を送った。 「今夜も暑いですねぇ…。髪が汗で張り付いちょってですよ?」
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