- 444 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/25(金) 23:12:20 ID:y3a99+Nu]
- 布美枝が村井姓になってそろそろ一ヶ月が過ぎようとしていた。
出会って5日目で結婚というスピード婚。漫画家という人種の生活スタイルに面食らう事 ばかりで、心細さを打ち明けられる親しい相手もなく、これから何十年と続くであろう 結婚生活に不安が膨らんでいた当初。 しかし、上京して数日後、茂とサイクリングへ出掛けたのをきっかけに少しずつ 茂と距離が縮まっていくのを感じた。彼は破天荒な所があるものの、普段は大らかで 優しくて、時折見せる茶目っ気がまるで少年のようだ。そんな茂と暮らしていくうちに、 布美枝はどんどん茂にひかれているのを自覚した。つまり、布美枝は今、夫に恋を していた。 その布美枝がある日の昼前、洗濯物を干していると茂が玄関から出てきた。 「おい。仕事が一息ついたけん深大寺までサイクリングに行かんか。桜が咲いとる頃だぞ」 「わあ、ええですね。あ…でも」布美枝は笑顔になった後、すぐ思案顔になった。 「そろそろお昼ご飯の支度するところでしたけど、どげしましょう?お昼食べてから 行きましょうか?おなか空いとりますか」 茂は少し考えて答えた。 「ほんなら握り飯でも作ってくれ。あっちで桜見ながら食べたらええ」 楽しそうな企画に、布美枝はいそいそしながら「じゃあ、急いで作りますね」と台所へ向かった。
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