- 964 名前:『お兄ちゃんと一緒』 mailto:sage [2011/12/30(金) 23:41:56.38 ID:OaoG9+n4]
- 夜の森の中で泣く女の子の声。
「ったく…なんだよこんな夜中に」 一人のトレーナーが草むらから立ち上がり、声の元を探す。 「ほら、早くでてこーい」 それはすぐに見つかった。 木の影に隠れて「うぇーんうぇーん」とかわいらしい鳴き声を上げているポケモン。 「あ、ムウマ」 彼の存在にも気づかず泣き続けているムウマ。 どうやらムウマがよくある「人間を脅かすために泣いている」行為の一環ではないようだ。 「ほら、どうして泣いてるんだ、教えてくれ」 「森から離れて遊んでたら迷っちゃったの…」 「ほーう、なるほどな。で、住んでるのはどの辺の森なんだ?」 「あのね…ってえええ!」 泣き止んだムウマがびっくりして後ずさりする。 「お、お兄ちゃん、ニンゲンだよね?!」 「ああ、人間だけど?」 「何でムウマの言葉が分かるの?!」 「ああ、生まれつきさ。なんとなく、分かっちゃうんだよね。 おかげで子供のころは同じ人間から苛められっぱなしさ」 「じゃあ、お兄ちゃんはどこに住んでるの?」 「住んでるとこなんてねえよ。旅をして、ポケモンと共に暮らしてる」 「へえ、面白そう!じゃあ、ムウマもお兄ちゃんと一緒に旅する!いいでしょ?」 ムウマは喜んでいるのかその場で体を上下させている。 「いいよ、一緒に来な」 「ありがと!」 暫くムウマを連れて彼は歩き続けた。 「ムウマをボールに入れないの?」 「初めて仲間になったポケモンは一週間ほど外に出しとくんだ。 こいつもそうだ。アブソル!」 モンスターボールからアブソルが出てきた。 「何でしょう、マスター」 「ちょっとその辺の木を切り倒してくれ」 「イェス、マスター」 アブソルが“いあいぎり”で木を切り倒すと木の影からハハコモリが出てきた。 「あら、いつものトレーナーさん。びっくりさせないでよ」 「悪い悪い。子供の調子、どう?」 「問題ないわ。あなたも気を付けてね」 「そっちも人間に掴まるなよ」 「こんなところ来るのあなたくらいだけどね」 「確かにな。そんじゃあな」 手を振る彼にムウマが肩から囁いた。 「この辺のポケモンはみんな仲良しさんなの?」 「ああ、この辺は特にな。ポケモンと会話できると旅も退屈しないのさ」 「へぇ〜。お兄ちゃん、凄いんだねぇ」 「んなことねーよ」 感心するムウマに彼は微笑んでそう言った。
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