- 40 名前:人食い怪物vs少女戦士 ◆gRbg2o77yE mailto:sage [2010/01/23(土) 23:03:57 ID:/8xdEKDJ]
- その怪物が現れたのは、およそ20分前に遡る。
突然割れた地面から這い出たのは、全長10メートルはある巨大な肉塊だった。表面は腐敗したキャ ベツのように黒い薄皮が何枚も重なり、動くとゴムのように柔軟に形を変える脂質体。 底部は吸盤と柔毛が無数に付いており、それらを器用に動かして移動している。 しかし、その移動速度は驚くほどに遅かった。 冗談のようにゆっくりと動いているそいつに、人々は戸惑いを隠せない。 一見すると、深海に生息している構造不明の畸形にも見えるが、ここは陸上。近くにいた人々は戸惑 いながらも離れて警察に通報したり、携帯電話で写真を撮影したりと反応を見せた。一部には動画サイ トに映像をアップしようと、デジカメを構える準備の良い者までいる。 眼鏡をかけた小太りの若者が鼻息を荒くして、カメラを向けた。 そして、群衆から前に出て、怪物の映像を撮り始める。 「ふう、はあ、やっべえ、こいつマジなん。ふう、ふう、記録してる俺、映画の主人公みたいじゃん? クローバーフィールドみたいな感じ」 「ここまで至近距離だと、RECやダイアリー・オブ・ザ・デッドでござろう。お主はミィハァでござるな」 痩身の男性が非難めいた口調で、小太りの後ろに続いた。 そのとき、怪物の表皮がべりべりと破れ、鋭い牙が生えた口が現れる。10メートルの巨体の前半分に 切り込みを入れたかのような大口は、人間ならば顎が外れているレベルまで開かれた。 「ちょ、おまっ、待て待て待て待て!」 人々が悲鳴を上げて後退し、撮影していた男性二人も腰を抜かして倒れる。 直角に近い角度まで開かれた上顎部は、唾液に濡れた赤黒い肉から太い牙が放射状に生え、巨大 な肉壁のオブジェのよう。下顎部には黄色い垢が雪のように積もった、マットのように厚い舌。 怪物の表皮から赤黒い触手が飛び出して、前方の男二人を絡め取る。
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