- 126 名前:既にその名前は使われています [2009/03/12(木) 22:46:14 ID:9ZKYeISV]
- 「出る」と評判の廃屋で、おれたちグループの中でもいちばん気が強く、心霊現象完全否定派である竹田が、夜に一人で肝試しをすることになった。
「やめといた方がいいって」 とおれたち四人は引き留めたが、竹田は鼻で笑い、 「じゃあ、必ず約束守れよ。おれが一人きりで朝まであそこで過ごせたら、おまえらはおれに二千円ずつ払う。 もしおれが逃げ出したりズルをしたら、おれがおまえら全員に二千円ずつ払う。証拠のハンディカムはちゃんと回しとくから」 『……っと、位置はこのへんでいいか。映ってるよな? つーわけで、一人肝試しのはじまりはじまり。朝までヒマだねしかしこれ。 携帯もノートパソコンも駄目とは、自分で言いだしたもののチト厳しい縛りだったかな。さて、と。このままボーッとしてるのもなんだからさ、ひとつおれが、そう霊なんか一切信じてないこのおれが、とっておきの「怖い話」をしてやるよ。 おまえらのこと。おまえたち「四人」の話……』 『……おまえたち、まだ気づいていないのか? 違うだろ、本当はとっくに気づいてて、なのに知らないふりをしてるだけなんだよな。 なあ、正直に言うよ。おれはいま、怖くてたまらない。この廃屋がじゃない。おまえたちが、だ。おまえたちの視線が。いま、こうして、おまえたち「四人」におれを見られていることが。 怖くて怖くて死にそうだ。ずっと前から。……どうやら賭けはおれの負けだな。ちゃんと払うよ、六千円は』 結局、竹田はおれたちに金を払うことはなかった。 ハンディカムの映像だけを残し、あの夜に廃屋から出たあと突然失踪したから。 行方はいまだに知れない。 いまでもたまに、おれたち四人は竹田の残した映像を見る。 そのたびに不可解な気分にとらわれる。 いったい竹田は、おれたちの何がそんなに怖いのだろう。
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