- 150 名前:名無しさん@恐縮です [2019/01/13(日) 14:05:55.93 ID:5u4R4Rvp0.net]
- 小さな誇り
オーストラリアの乾いた大地を疾走するトラックの車内。 「ところで相棒、バックミラーにかかってるこの銀色のメダルは何なんだ?」 「いや、ちょっとしたお守りみたいなもんさ」 「おい、ちょっと待てよ。これ、本物の銀じゃねえか!」 「そんな目で見るなよ。昔、あるスポーツの大会でもらったのさ。そう、俺は オリンピックに出たんだ」 「オリンピック? 冗談よしてくれ。あれは選びぬかれたスポーツエリートだ けが出られる大会だろうが。お前みたいに一日中トラック転がしてる奴がどう やってオリンピックに出るんだ?」 「それもそうだよな、ハハハ。」 「わははは」 しかし、遠い地平線を見る運転手の青い瞳には、ある一日の光景が焼きつい ていた。ありあまる資金で高級ホテルに泊り、薄ら笑いを浮かべながら会場に 現れる東洋人の球団。彼らのほとんどが一年で百万ドル以上を稼ぐプロの選 手だという。 若いオージー達は燃えた。そして、全力で立ち向かい、ぎりぎりの勝利を掴 みとったのだ。たいていの人間が野球というものを知らないこの国では、誰も 彼らを賞賛しなかった。しかし、胸の奥で今も燃え続ける小さな誇りとともに 今日も彼はハンドルを握り続ける。
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