- 1 名前:きつねうどん ★ [2018/03/18(日) 06:33:40.70 ID:CAP_USER.net]
- かんべえ(吉崎 達彦):双日総合研究所チーフエコノミスト
tk.ismcdn.jp/mwimgs/d/1/1140/img_d12076bcf3664601aecc91f7e8235fb7171206.jpg 3月に入って本領を発揮しているトランプ大統領。これから安倍首相に「シンゾー、北朝鮮との会談は決裂だ。軍事オプション行くから」などと言ってくるのだろうか(写真:ロイター) 今から考えれば、2月のドナルド・トランプ米大統領は比較的おとなしかった。その間にロシアゲートの捜査が着々と進み、フロリダの高校で起きた銃乱射事件に対しては歯切れの悪い対応を繰り返し、ポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんとの関係が蒸し返されたりもした。 大統領の身辺では、ロブ・ポーター秘書官が元妻2人への虐待容疑で辞職に追い込まれ、お気に入りの美人広報部長のホープ・ヒックスさんがホワイトハウスを去った。 娘婿ジャレッド・クシュナー上級顧問は「セキュリティ・クリアランスの不備」を理由に遠ざけられて、身近な人が周りからどんどん減っていく。メディアの扱いも心なしか小さくなっているようで、天下のお騒がせ男も大統領就任から1年も過ぎて、さすがに鮮度が落ちてきたのかなあ、と思っていたところであった。 3月に入って反撃に出たトランプ大統領 ところがトランプさんは、今月に入ってから果敢に反撃に出た。まずは3月1日、鉄鋼とアルミへの追加関税をぶち上げた。安全保障上の理由に基づく輸入制限措置とのことであったが、筆者としては「あ、アレが原因だな」と反射的に思いましたな。 トランプさんの頭の中を占めていたのは、3月13日のペンシルベニア州第18区下院議員補欠選挙。ピッツバーグ市南方の選挙区で、かつては鉄鋼業で栄えた地域である。保護主義の風を吹かせたのは、かつての鉄鋼労働者たちを鼓舞する選挙戦術であったのだ。 435人もいる下院議員のわずか1補欠選挙のために、世界を相手に貿易戦争を吹っかけるというのはまるで「尻尾が犬を振る」ようなもの。このバランス感覚の悪さがいかにもトランプ流なのだが、ここは2016年大統領選挙で、ヒラリー・クリントン候補に20ポイント差をつけて勝った地区。すなわち、ラストベルトに位置する典型的な「トランプ王国」で、ここを落とすようなら一大事。秋の中間選挙に向けて重要な前哨戦だったのだ。 とはいえ、こんな調子ではまともに仕事をしている経済スタッフはやっていられない。国家経済会議担当のゲイリー・コーン議長がとうとう辞表を提出した。もともと不満を溜めていた上に、懸案の減税法案は昨年末に成立させたことだし、もう十分に義理は果たしたと考えたのであろう。かくして数少ない「大人」のキーパーソンが政権を去り、代わりにピーター・ナヴァロ教授のような保護貿易論者がのさばることとあいなった。 しかるにトランプ大統領は、本気で全面的な貿易戦争を仕掛けたわけではなかった。3月8日にはカナダとメキシコを適用除外にすると発表。代わりにNAFTA再交渉での見返りを要求した。追加関税を正式に発動するのは3月23日からで、日本など他の国は「今後の協議次第」であるという。「そっちが色を付けてくれれば勘弁してやるぜ」という交渉術で、「な〜んだ、いつものプロレス流か」と周囲を拍子抜けさせた。 次々とさく裂した「トランプ爆弾」 ところが同日夜、今度は別の爆弾がさく裂した。この日、ホワイトハウスを訪れた韓国の鄭義溶大統領府国家安保室長らから、先般の南北会談の結果について説明を受けた際に、トランプ大統領は「金正恩朝鮮労働党委員長と5月までに会う」と通告したのである。同盟国への相談はもちろんのこと、国務省など専門家の意見もろくに聞いてはいない。まるで中小企業のオーナー社長のような独断専行、電光石火の即断即決なのである。
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