硯箱と時計
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著者名:沖野岩三郎 

r>  そのとき石之助は、この落第生の殿様を、何だかえらい人のやうに思ひました。
 それから石之助は、勉強の目的をかへました。今までのやうに、褒美をもらつたり、一番になつたりするための勉強ではなく、自分の志したお医者になるための学問を、必死に勉強しました。
 大学を出る時、茂丸は理科の一番でした。石之助も医科の一番でした。
 落第生の殿様は、その頃(ころ)すつかり、からだが達者になつて、北海道で牧畜をして大成功してゐました。
「殿様の牛乳配達」といふ記事が、日本中の新聞にのつたのは、二人が大学を卒業した年の夏でした。




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