或る日の動物園
著者名:岸田国士
鷲がその威風に似ず、低脳らしい金属性の声をたてた。
支那の聖人に似てゐる駱駝が、唇をふるはせながら子供にせんべいを貰つてゐる。彼女は、それを見て、やつぱり日向ぼつこをしてゐるときが一番好きだと云つた。
火食鳥は神主。駝鳥は DEMI-MONDAINE のなれの果て。
「さけい」といふ鳥の前で、彼女はまた、「農民ね」と呟いた。
眠つてゐる獅子の檻に近く、長髪の男が、しきりに、「怒れる獅子の図」を描いてゐた。
なまめかしきは黒豹。
熊と川獺は友だちにもちたくない。
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