きょうの写真
著者名:宮本百合子
むかしの人たち、と云っても日本へ写真術が渡来して間もないころの人たちは、写真は、仕掛けでひとがたがとられるのだから、それだけ寿命がちぢまることだと、こわがった。きょうでの笑話だけれども、科学の力はうそをつかないと思いこんでいたところに、心がひかれる。素朴なわたしたちのもののうけとりかたのなかには、写真についてそう思いこんでいるそのことを、さかてにとられるチャンスもある。きょうの写真のおそろしさには、そういう科学の逆用がしのびこまされている。同時に、写真のまともな機能も、ずいぶん拡大された。社会のあらゆる場面の報告者。人生の各断面の語りて。写真がますます生活についたものとして扱われて来ていることは面白い。
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