夫即ち妻ではない
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著者名:宮本百合子 

 どういう意味からにしても、今の場合それをいうのは少し困ります。表面だけで誤解されることが厭なんです。でもこういうことはいわれると思います。今の時代では、妻は自分の生活をすべて夫の生活に適応させなくては生活することはできないということ。または、たとい妻の意見が夫の意見と違っていても、世間の人は、夫の意見は妻の意見だという風に看做(みな)してしまうし、それから夫が間違ったことをして、妻がその間違いであることをいっていても、一般の人達は妻も間違っているものだと思っているという風に、何でもかでも、夫即ち妻でなくてはならないというのは、苦しい生活です。また日本の昔ながらのいい妻であれと願われることも現代の妻にとっては可なり大きな不平の一つでしょう。
〔一九二六年五月〕



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