新しき大地
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著者名:宮本百合子 

 大地は大変旧いものだ。けれども同時に刻々生成をやすめない恒に新鮮なものでもある。
 私たちの生活に、社会について自然についていろいろと科学的な成果がゆたかに齎(もた)らされるにつれて、旧き大地の新しさや、そこの上に生じてゆく社会の歴史の様相が極めて複雑であることを理解する。
 日本の勤労人員の幾割が農民であろうか。
 約四十八パアセントが農業に従っている。
 そのうち女性は何割だろう。
 四十三パアセント強約六百三十二万人は女子及び子供である。そして、昭和十一年の調査によると、小学校を卒業した子供たちの就業する先は農業が第一位を占めていて、男子は十九万六千余人(総数の四一・一%)女児は十八万四千五百余人(総数の四〇・六%)であった。
 農家を維持するに必要な最小限の耕地面積は略(ほぼ)一町七反であると云われている。
 ところが実際では日本の全耕地所有農家の約半数が五反未満の田畑をもっているに過ない。
 玄米一石の生産費(昭和十二年度)
自作農二五円八七銭 小作農二八円七一銭
 現在の農村は事変以来二割近い手不足で甚だ困難している。従って老人、女子、子供は一層農村で大切な労働力となって来た。昨年は一部落当に老人二人婦人一人半子供十人半が平常より多く働いた。
 明日の農村の希望は零細な耕地の整理と資材の問題の解決とともに耕作が益々機械化されてゆかなければならないことである。日本型トラクターの能率は馬耕の二倍、人耕の十二倍で、しかも反当りの費用は人耕の四円五十三銭に比べて僅か一円九十五銭ですむ。
 明日の農村の希望はまた生活の習慣や衛生条件の改善にある。共同炊事や托児所や診療施設など。若い農村の女性こそ青年たちと力を合わせ、新しい農村は生活を建設してゆく輝きでなければならないと思う。




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