世界一もいろいろ
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著者名:宮本百合子 

 日本原理の上に樹つ新日本諸学を建設し、全国民に日本文化の神髄を深く自覚せしめるための日本文化中央連盟が、松本学氏などを中心として実業家、役人、学校経営者などによって結成された。百万円をかけて、日本文化大観を編纂するのもよいであろう。しかしこの事業内容が発表された時、先日来、山川菊栄女史によって発表されていた現代日本の女学生気質についての批判をおのずから思いおこした人が、決してすくなくなかったであろうと思う。
 都下のある女学校で女学生たちの将来の希望を質問したら八十パーセント以上が平凡な主婦、母になりたいと答えたそうであるが、この如き必然性を欠いた返事に反映している現代日本の教育方針に対する疑いと、日本文化中央連盟の事業の指導精神に対する疑いとは同一の性質をもって、真に日本を愛する良識ある人々の心にある憂いを抱かせるものである。「平凡な母」となることが、どれほど複雑、困難な現実の内容を持っているかを知ろうという方向に導こうとせず、愚な鸚鵡(おうむ)のようにきまり文句を平気で若い女性たちがくりかえしているのをよしとするのであれば、それこそ、日本文化中央連盟がそれに向って勇ましい戦いを宣言している国民文化の模倣性、独創性の欠如そのものの実際的な強化以外の何ものでもないのである。
 日本の女は一人たりとも自身たちの愚かさと、乳児死亡率の最高位であることで世界に冠絶したいとは願っていないのである。〔一九三七年八月〕



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