三田社会科学研究会報告
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著者名:野呂栄太郎 

 ともかくも順調な歩みをもって、華々しくはないが危なっけの少ない生長を遂げている。会員が案外よく会の本質を理解して積極的な活動を吝(おし)まないことと、絶えず熱心な入会者のあることとは、前途になお幾多いよいよ大なる困難の横たうものあるを予想しながらも、常に新たなる努力への尽きざる源泉を供するものである。ある会員が、一身上の都合で、活動資金三十円の寄附を申出たごときも、物質的にはもちろん、精神的にも一つの力強さを感せしめるものがある。なお予科の加入者増加は予科部独立の蓋然率を増したとともに、会友の熱心は会友部設置の必要を切ならしめつつある。こうした諸種の事情は必然会の内部組織の変更! というよりもむしろ新組織の採用―を可能にした。すなわち従来の一部専断に代うるに、研究。庶務。調査。図書出版。講演。会計の六部をもって事黎を分担することとした。未だ充分その効果を挙げ得ないが、会員を会に親しましめると共に一部の者を過重なる煩労から救い兼ねてその活動を能率的ならしめることができると思う。今学期の研究課目は左の通りである。
(イ)資本主義の構成……高橋 亀吉氏
(ロ)A Short Coures of economic Science. ……浜田 恒一氏
(ハ)History of economic Doctrines. ……金原賢之助氏
(ニ)State and Revolution ……伊藤 秀一氏
(ホ)金融資本と帝国主義……猪俣津南雄氏
(ヘ)社会統計学……北沢新次郎氏
 右の中(イ)はすでに講了、(ロ)、(ハ)、(ニ)、は目下講義中、(ホ)、(ヘ)は十一月八日より、いずれも毎週一回二時間ずつある。外に隔週一回会合して懇談のかたわら、各自研究意見の発表をすることになっている。
―「社会科学連合会」会報一九二四年十一月二十五日―



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