樹木とその葉
著者名:若山牧水
冷たさよ
わが身をつゝめ
わが書齋の窓より見ゆる
遠き岡、岡のうへの木立
一帶に黝(くろ)み靜もり
岡を掩ひ木立を照し
わが窓さきにそゝぐ
夏の日の光に冷たさあれ
わが凭る椅子
腕を投げし卓子(てーぶる)
脚重くとどける疊
部屋をこめて動かぬ空氣
すべてみな氷のごとくなれ
わがまなこ冷かに澄み
あるとなきおもひを湛へ
勞れはてしこゝろは
森の奧に
古びたる池の如くにあれ
あゝねがふ
わが日の安らかさ
わが日の靜けさ
わが日の冷たさを
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