寡婦の除夜
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著者名:内村鑑三 

月(つき)清(きよ)し、星(ほし)白(しろ)し、
霜(しも)深(ふか)し、夜(よる)寒(さむ)し、
家(いへ)貧(まづ)し、友(とも)尠(すくな)し、
歳(とし)尽(つき)て人(ひと)帰(かへ)らず、

思(おもひ)は走(はし)る西(にし)の海(うみ)
涙(なんだ)は凍(こほ)る威海湾(ゐかいわん)
南(みなみ)の島(しま)に船出(ふなで)せし
恋(こひ)しき人の迹(あと)ゆかし

人には春(はる)の晴衣(はれごろも)
軍功(いくさいさほ)の祝酒(いはひざけ)
我には仮(か)りの侘住(わびずまひ)
独り手向(たむく)る閼伽(あか)の水(みづ)

我(われ)空(むなし)ふして人(ひと)は充(み)つ
我衰(おとろ)へて国(くに)栄(さか)ふ
貞(てい)を冥土(めいど)の夫(つま)に尽(つく)し
節(せつ)を戦後(せんご)の国(くに)に全(まつた)ふす

月(つき)清(きよ)し、星(ほし)白(しろ)し、
霜(しも)深(ふか)し、夜(よる)寒(さむ)し、
家(いへ)貧(まづ)し、友(とも)尠(すくな)し、
歳(とし)尽(つ)きて人(ひと)帰(かへ)らず。




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