日本再建と科学
著者名:仁科芳雄
又科學教育に必要な設備の充實といふことも非常に大切である.實驗を生徒自ら行ひ得るやうにするのと,實驗もしないで只ノートだけを取らせる教育方法とでは,生徒の能力を引き出せる點に於て,又理解の深さに於て同日の論ではない.この點では映畫による教育も今後大いに採用せらるべきであらう.然しこれ等の實施に就ても直ちに經費の問題がつき纒ふのである.然し國を創り上げるために費す金は決して無駄にはならない.
以上は學校教育であるが,學校以外の社會教育に於ても,科學的に事物を考へ,科學知識を與へることが必要である.これには色々の方法と設備とが考へられる.例へば生きた科學博物館の増設,科學圖書館の活用,種々の展覧會の開催,映畫並に講演による教育,その他多くの案があるであらうが,茲にはその詳説を省くことにする.
6.結語
これを要するに我が國再建の基礎は科學によつて築かるべきものであるから,以上述べた諸方策は必ずしも短時日にその成果を期待し得ないものであつても,今日からその準備乃至は實施に着手して將來の科學振興を期すべきである.
(昭和21・3・12)
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