新劇協会の更生について
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著者名:岸田国士 

 かういふと、私が独り俳優養成の衝に当るやうに聞えるかもわからないが、そんな相談はまだ誰からも受けてゐないし、現在の私にそれだけの自信もないが、今度の計画について私の意見を述べた機会に、私は、その問題を除外して、今、われわれが「舞台の仕事」に関係することは殆ど無意味であるとさへ説いた次第である。
 関口、高田の両君も、此の点は深く考慮にいれてをられる筈である。
 上演目録についても、理想から云へば、めいめい、それぞれ抱負もあらうが、今の処、「現在の俳優を使つてやゝ無難に近いもの」といふ限られた条件がある以上、広い範囲に亘つて、優れた作品を選ぶことができない。われわれは、今、決して「われわれの望んでゐる脚本が無い」と断定はしない。寧ろ、「脚本はあつても、それを演る俳優がゐない」ことを極力叫びたいと思ふ。
 そして、その叫びが、何時か、何らかの形で、世の好劇家の注意を惹くことになれば、今度の企ても、全然無意義には終るまいと思ふ。(十月十日)




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