奇巌城
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著者名:ルブランモーリス 

「うぬ!畜生!」とルパンはショルムスに飛びついて咽喉(のど)を絞(し)め上げた。ショルムスは苦しさに身をもがくばかり。
「まあ、そんな手荒なことを。」と老婦人はうろうろする。ボートルレも驚いて走り寄る。
 この時ルパンは相手から手を放し、その傍に突伏(つっぷ)して、息も絶え絶えに声を呑んで男泣きに泣いた。
 ああ、とうとう悲劇は来た。
 巨人ルパンがすべてを捨てて、平和に日を送ろうという望みは破られて[#「破られて」は底本では「破らてれ」]しまった。
 まもなくルパンは起き上り、死んだレイモンドを軽々と背に負うた。
「行こう!ヴィクトワール。」
「行きましょう。」と老婆がそれに従う。
「さようなら、ボートルレ君!」
 ルパンと乳母の姿は海岸の方へ寂しく消えていった。
(おわり)



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