レ・ミゼラブル
著者名:ユゴーヴィクトル
司祭はジャン・ヴァルジャンが残していったもののうちからできるだけ多くの金を貧しい人々のために取って置いた。彼はそうするのがいいと信じた、そしてまたおそらくそれは至当であったろう。結局、だれに関係したことであったか、一人の徒刑囚と一人の醜業婦とに関することではなかったか。それゆえに彼は、ファンティーヌの埋葬を簡単にし、共同墓地と言われるただ形(かた)だけの所に彼女を葬った。
ファンティーヌはかくて、すべての人のものでありかつ何人(なんぴと)にも属さない墓地、貧しい人々の消え失せゆく無料の墓地の一隅(いちぐう)に埋められた。ただ幸いにも神はその魂のいずこにあるかを知りたもう。人々は何人たるを問わない無名の死骨の間に暗やみのうちにファンティーヌを横たえた。彼女は塵(ちり)にまみれてしまった。彼女は共同墓地に投げ込まれた。彼女の墓地はその寝所に似寄っていた。
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