杜松の樹
著者名:グリムヤーコプ・ルードヴィッヒ・カール URL:../../index_pages/person1092
「いいえ、」といって、お母(かあ)さんは跳(は)ね起(お)きると、髪(かみ)の毛(け)を焔(ほのお)のように逆立(さかだ)てながら、「世界(せかい)が沈(しず)んで行(ゆ)くような気(き)がする。気(き)が軽(かる)くなるかどうだか、あたしも出(で)て見(み)ましょう。」
そう言(い)って、扉口(とぐち)を出(で)る拍子(ひょうし)に、ドシーン! と鳥(とり)が石臼(いしうす)を頭(あたま)の上(うえ)へ落(おと)したので、おかあさんはぺしゃんこに潰(つぶ)れてしまいました。その音(おと)をきいて、お父(とう)さんと娘(むすめ)が、内(うち)から跳出(とびだ)して見(み)ると、扉(と)の前(まえ)には、一面(めん)に、煙(けむり)と焔(ほのお)と火(ひ)が立(た)ちのぼって居(い)ましたが、それが消(き)えてしまうと、その跡(あと)に、小(ちい)さな兄(にい)さんが立(た)っていました。兄(にい)さんはお父(とう)さんとマリちゃんの手(て)をとって、みんなそろって、喜(よろこ)び勇(いさ)んで、家(うち)へ入(はい)り、食卓(テーブル)の前(まえ)へ坐(すわ)って、一しょに食事(しょくじ)をいたしました。
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