月見草
著者名:水野葉舟
「いいえ、その早池峯の裾の平にね、蜜蜂を飼うと言って種を播いたのです。ところが二十三年の洪水の時に、そこがすっかり流れてしまった。すると、この猿(さる)ヶ石(いし)の河岸一帯に、どうして広がったものか、月見草が咲き出したのです。それから年々殖えて行く。」
「おもしろい話ですね。」と私は心底(しんそこ)から言った。
そして、今まで自分の目に見えていた、草の枯れた姿を思い浮かべて、生きた人の運命を思うように、その草の、亡びなかったのを祝した。
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