金の目銀の目
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著者名:豊島与志雄 

「そんなに悪いところではないでしょう」と、チヨ子は言いました。
 太郎は黙って、淋しそうな顔をしていました。九州のおじいさんのことや、大連(だいれん)の松本さんや一郎のことがなつかしく思いだされるのでした。チヨ子にもその気持ちがよくわかりました。
「ねえ、帰っていっちゃ、いけませんよ」
 太郎はふり向いて、微笑(ほほえ)んで、チヨ子の手を握りしめました。
「そうだ、不思議な地図があったろう、あれを便りに、この国を立派なものにしていこうよ」
「ええ、立派な国にしましょう。そして、チロの国と名をつけましょうよ」
 ふたりは一緒に金目銀目(きんめぎんめ)のチロを抱きかかえて、かたく握手をしました。




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