Sketches for details Shima
著者名:宮本百合子
杉、しゃぼてんの鉢
――○――
かた木の庭木 大名竹 槇 周防の花
下ぬりのまま五六年たった壁。
床の間に紫檀の台、上に焼きもの。
どくろに蛙がとまっている飾もの
掛ものは歌集のきれ
くまもなきかゝ見と見ゆる月影に
こゝろうつさぬ人もあらしな 云々
○近さァを区長にせよう思っとったら洗濯もんの騒ぎしよったから どうとも云い出せんようになってしもうた
○野菜市場。近さん120[#「120」は縦中横]本の胡瓜を「こりゃわしが皆ひきうけた」と二円何ぼかで買う。小商は、大きいが一本五銭なり。
よろしゅうあります
とんびース(飛の魚)
つかあせ
やっつかわせ(やっつか)ときこえる
さア、どんなもんでありましょうかな
えっと(沢山)切った
だいしょう 出来ます(多少の意味)
生えちょるか
恐れちょる
頭がはしる(痛む)
裏の田の畦づたいに中谷の婆さんが 国旗をかついで多賀さんの当番参詣を終ってかえって来る
「えろう御無礼どすが ここから通してもらいます」
多賀子
「あの武の字がちごうちょる」
武が※[#「武」の「弋」が「戈」、583-8]の由。武運長久と書いてあったが
「武運長久が襷がけならいいんだろ。この頃は白襷がはやるから。こんど出来た字かもしれない」
○栗山の婆さん
「自殺すると云っちょるげな、息子に話しもめるさかい と云っちょる」
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