なつかしい仲間
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著者名:宮本百合子 

 それに私は、境遇の関係からきっとよけい友だちを大切に感じるところもあるのだろう。仲間というもののよさ。男の人たちが終生仲間は離せなくて、漫画の親爺教育のジグスのあわれおかしき仲間恋いの心持は、もう私たちの心にももちものとなっているかと思う。
 家庭生活をやってゆく、仕事をしてゆく、その心持のバランスの一方が我も知らずに、仲間への心持のなかにおかれているようなところも、今日ではあながち男だけの心でもないらしい。栄さん、稲子さん、私、三人仲間がもっともっと年をとって、いろんな思いを互に経て、益々その老いて若き仲間ぶりを発揮したら、さぞや愉快なことであろうと思う。
 私たちぐらいの年ごろの者が友達について語るといえば、今日の友達、世間のひとも面白く思いそうな逸話など男ならひとりでに書くのだろうが、こうして、友達というもののうつりかわりやそれに反映する女の生きかたの推移が心の前面を占めるところも、決して偶然といえないものがあるのだと思われる。
〔一九四〇年五月〕



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