二人町奴
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著者名:国枝史郎 

「おうそうか、隨意に致せ」
 そこで藤兵衛庭へ下り、素晴らしい一つの放れ業をした。そうして、それをしたために、公平な政治が行なわれ、水野は切腹、家は断絶、白柄組一統の者、減地減禄されることになった。
 その放れ業とはなんだろう。
 藤兵衛、腹切って死んだのである。
「町奴の肝玉ごらん下され!」
 叫ぶと一緒に臓腑を掴み出し、地上へ置くと、
「藩隨院長兵衛と黄泉において、水野の滅亡、白柄組の瓦解、お待ち受け致すでございましょう!」
 そのまま立派に死んだのである。

 緋鯉の藤兵衛の葬式が、非常に盛大に行なわれた日、浅草寺で鳴らす鐘の音が一種異様の音を立てた。
 手慣れた寺男のつく鐘とは、どうにも思われない音であった。
 それは当然と云ってよい、ついたのは釣鐘弥左衛門なのだから。




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