どんたく
是非お友達にも!
★暇つぶし何某★

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著者名:竹久夢二 

こはわが少年の日のいとしき小唄なり。
いまは過ぎし日のおさなきどちにこのひとまきをおくらむ。
お花よ、お蝶よ、お駒よ、小春よ。太郎よ、次郎よ、草之助よ。げに御身たちはわがつたなき草笛の最初のききてなりき。
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N□MU-NO-KI N□MU-NO-KI
N□YA SYANS□.
OKAN□ GA NATTARA
OKYA SYANS□.
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どんたく
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 歌時計

ゆめとうつつのさかひめの
ほのかにしろき朝の床(とこ)。
かたへにははのあらぬとて
歌時計(うたひどけい)のその唄(うた)が
なぜこのやうに悲しかろ。
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 ゆびきり

指(ゆび)をむすびて「マリヤさま
ゆめゆめうそはいひませぬ」
おさなききみはかくいひて
涙うかべぬ。しみじみと
雨はふたりのうへにふる
またスノウドロツプの花びらに。
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 紡車

しろくねむたき春の昼
しづかにめぐる紡車(いとぐるま)。
をうなの指をでる糸は
しろくかなしきゆめのいと
をうなの唄(うた)ふその歌は
とほくいとしきこひのうた。
たゆまずめぐる紡車(いとぐるま)
もつれてめぐる夢(ゆめ)と歌(うた)。
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 人買

秋のいり日はあかあかと
蜻蛉(とんぼ)とびゆくかはたれに
塀(へい)のかげから青(あを)頭巾(づきん)。

「やれ人買(ひとかひ)ぢや人買(ひとかひ)ぢや
どこへにげようぞかくれうぞ」
赤い蜻蛉(とんぼ)がとびまはる。
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 六地蔵

背合(せなかあはせ)の六地蔵(ろくぢざう)
としつきともにすみながら
ついぞ顔(かほ)みたこともない。
でもまあ苦(く)にもならぬやら
いつきてみても年(とし)とらず
赤くはげたる涎掛(よだれかけ)。
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 越後獅子

角兵衛獅子(かくべゑじし)のかなしさは
親(おや)が太鼓(たいこ)うちや子(こ)がおどる。
股(また)のしたから峠(たうげ)をみれば
もしや越後(ゑちご)の山かとおもひ
泣いてたもれなともどもに。

角兵衛獅子(かくべゑじし)の身(み)のつらさ。
輪廻(りんね)はめぐる小車(をぐるま)の
蜻蛉(とんぼ)がへりの日(ひ)もくれて
旅籠(やど)をとろにも銭(ぜに)はなし
あひの土山(つちやま)あめがふる。
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 赤い木の実

雪(ゆき)のふる日に小兎(こうさぎ)は
あかい木(こ)の実(み)がたべたさに
親(おや)のねたまに山(やま)をいで
城(しろ)の門(もん)まできはきたが
あかい木(こ)の実(み)はみえもせず
路(みち)はわからず日はくれる
ながい廊下(らうか)の窓(まど)のした
なにやら赤いものがある
そつとしのむできてみれば
こは姫君(ひめぎみ)のかんざしの
珊瑚(さんご)のたまかはつかしや
たべてよいやらわるいやら
兎(うさぎ)はかなしくなりました。
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 鐘

村で名代(なだい)の鐘撞男(かねつきをとこ)
月がよいのでうかうかと
鐘(かね)をつくのもつひわすれ
灯(ひ)のつく街(まち)がこひしさに
山から港(みなと)へではでたが
日がくれるのに山寺(やまでら)の
鐘(かね)はつんともならなんだ
村長(そんちやう)さまはあたふたと
鐘撞堂(かねつきだう)へきてみれば
伊部徳利(いんべとくり)に月がさし
ちんちろりんがないてゐた。
アトレの馬ではあるまいし
鐘(かね)がならうがなるまいが
子供のしつたことでなし
うらの菜園(さゑん)の椎(しひ)の木に
ザボンのやうな月がでた。
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 ゆく春

くれゆく春のかなしさは
白髪頭(しらがあたま)の蒲公英(たんぽぽ)の
むく毛(げ)がついついとんでゆく
風がふくたびとんでゆき
若い身(み)そらで禿頭(はげあたま)。


くれゆく春のかなしさは
薊(あざみ)の花をつみとりて
とんとたたけば馬がでる
そつとはらへば牛がでる
でてはぴよんぴよんにげてゆく。
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 くすり

雪(ゆき)はしんしんふりしきる。
炬燵(こたつ)にあてたよこはらが
またしくしくといたむとき。

雪はしんしんふりしきる。
しろくつめたき粉(こな)ぐすり
熱ある舌(した)にしみるとき。

雪はしんしんふりしきる。
黄(きい)な袋(ふくろ)の石版(いしずり)の
異形(いぎやう)な虫(むし)のわざはひか。

雪はしんしんふりしきる。
銀(ぎん)ぎらぎんのセメン円(ゑん)
とのもは雪のつむけはひ。
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 雀踊

青い眉(まゆ)したたをやめが
金(きん)の墨絵(すみゑ)の扇(あふぎ)にて
そつとまねけばついとくる
はらりとひらけばぱつととぶ。
雀(すゞめ)おどりのおもしろさ
  やんれやれやれやせうめ
  京(きやう)の町のやせうめ
  うつるるものはみせうめ
あれあれあれとみるほどに
奴姿(やつこすがた)の小雀(こすゞめ)は
山(やま)のあなたへとびさりぬ。
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 わたり鳥

日本(にほん)の春のこひしさに
シイオホスクの海角(みさき)より
はるばる波をわたり鳥(どり)。

庄屋(しやうや)の軒(のき)に巣(す)をかけて
雛(ひゝな)を六羽(ぱ)うんだれど
三羽(ば)の雛(ひな)は死(しに)ました。
のこる三羽(ば)は□(かき)の葉(は)の
毛虫(けむし)がすきでたべました。

やんがて□(かき)のうれるころ
日本(にほん)の島(しま)をあとにして
まだみもしらぬ故郷(ふるさと)へ
親子(おやこ)もろともいにました。
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 納戸の記憶

船(ふね)は酒船(さかぶね)父(ちち)の船(ふね)
三十五反(たん)の帆(ほ)をまくや
玄海灘(げんかいなだ)の夏(なつ)の雲(くも)。

君(きみ)は馬関(ばくわん)の唄(うた)うたひ
髪(かみ)にさしたる青玉(エメラルド)
あだな南(みなみ)のニグレスが
こころづくしの貢物(みつぎもの)。

風(かぜ)のたよりをまちわびて
行燈(あんど)のかげのものおもひ
鬢(びん)のほつれをかきあぐる
銀(ぎん)のかざしのかなしさか
母(はゝ)の腕(かひな)のさみしさか。
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 おしのび

昔(むかし)アゼンに王(わう)ありき。
野(の)にさく花(はな)のめでたさに
ひとり田舎(ゐなか)へゆきけるが
にわかに雨(あめ)のふりいでて
王(わう)は臍(へそ)までうまりける。
それより王(わう)はわすれても
二度(ど)と田舎(ゐなか)へゆかざりき。
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断章
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   1
ドンタクがきたとてなんになろ
子供は芝居(しばゐ)へゆくでなし
馬にのろにも馬はなし
しんからこの世(よ)がつまらない。

   2
おうちに屋根(やね)がなかつたら
いつも月夜(つきよ)でうれしかろ。
あの門番(もんばん)が死(し)んだなら
あの柿(かき)とつてたべよもの。
世界(せかい)に時計(とけい)がなかつたら
さみしい夜(よる)はこまいもの。

   3
もしも地球(ちきう)が金平糖(こんぺいたう)で
海(うみ)がインクで山(やま)の木(き)が
飴(あめ)と香桂(につけ)であつたなら
なにをのんだらいいだろう。
学校(がくかう)の先生(せんせい)もしらなんだ
国王様(こくわうさま)もしらなんだ。

   4
この紅茸(べにたけ)のうつくしさ。
小供(こども)がたべて毒(どく)なもの
なぜ神様(かみさま)はつくつたろ。
毒(どく)なものならなんでまあ
こんなにきれいにつくつたろ。

   5
ままごとするのもよいけれど
いつでもわたしは子供役。
子供が子供になつたとて
なんのおかしいことがあろ。

   6
どんなにおなかがひもぢうても
日本(にほん)の子供はなきませぬ。
ないてゐるのは涙(なみだ)です。

   7
お墓(はか)のうへに雨がふる。
あめあめふるな雨ふらば
五重(ぢゆう)の塔(たふ)に巣(す)をかけた
かわい小鳥(こどり)がぬれよもの。
松の梢(こずゑ)を風(かぜ)がふく。
かぜかぜふくな風ふかば
けふ巣(す)だちした鳶(とび)の子(こ)が
路(みち)をわすれてなかうもの。

   8
ひろい空からふる雨は
森のうへにも牧場(まきば)にも
びつくり草(さう)にも小鳥(こどり)にも
みんなのうへにふるけれど
子供のうへにはふりませぬ。
それは子供の母親が
シヤツポをきせてくれるから。

   9
枇杷(びは)のたねをばのみこんだ。
おなかのなかへ枇杷の木が
はえるときいてなきながら
枇杷のなるのをまつてたが
いつまでたつてもはえなんだ。

   10
めんない千鳥(ちどり)の日もくれて
おぼろな春のうすあかり
この由良(ゆら)鬼(おに)のいとほしさ
ほどいてたもとなきいでぬ。

   11
越中(ゑつちゆう)富山(とやま)の薬売(くすりう)り
おはぐろとんぼがついとでて
白いカウモリ傘(がさ)の柄(え)にとまり
また日(ひ)まわりの葉(は)にとまり
ついととんではまたもどる。

   12
お遍路(へんろ)さんお遍路さん
おやまのむかふは雨さうな
霰(あられ)をおくれ豆(まめ)おくれ
まめがなけねばこの路(みち)法度(はつと)。

   13
股(また)のしたから麓(ふもと)をみれば
さても絵のよなよい景色(けしき)。
どこの町ぞときいたらば
それはわたしの村でした。

   14
梭(おさ)の手(て)をやめ歌(うた)ふをきけば
――もつれた糸(いと)なら
  ほどけもせうが

是非お友達にも!
◇暇つぶし何某◇

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