尾崎放哉選句集
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著者名:尾崎放哉 

夕空見てから夜食の箸とる

窓あけた笑ひ顔だ

おそくなつて月夜となつた庵
(をそくなつて月夜となつた庵)

小さい島に住み島の雪

名残の夕陽ある淋しさ山よ

故郷の冬空にもどつて来た

雨の中泥手を洗ふ

山畑麦が青くなる一本松

窓まで這つて来た顔出して青草

渚白い足出し

貧乏して植木鉢並べて居る

霜とけ鳥光る

あついめしがたけた野茶屋

森に近づき雪のある森

肉がやせて来る太い骨である
(肉がやせてくる太い骨である)

一つの湯呑を置いてむせてゐる

やせたからだを窓に置き船の汽笛

すつかり病人になつて柳の糸が吹かれる

春の山のうしろから烟が出だした


底本:「尾崎放哉句集」彌生書房
   1997(平成9)年12月25日初版発行
   「尾崎放哉全句集」春秋社
   1997(平成9)年12月10日第3刷発行
入力:j.utiyama、浜野 智
校正:浜野 智
1998年4月28日公開
1999年3月6日修正
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