貧書生
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著者名:内田魯庵 

「ふゥむ、」と得意らしく小鼻を揺(うご)めかしながら毬栗頭は褪(は)げチヨロケた黒木綿の紋付羽織をリウとしごいて無図(むづ)と座つた。
「首尾よく落第かナ?」
「勿論及第しおつた、」と毬栗君は大得意で有つた。
「君、及第しましたか?」と新聞配達の小説家は眼を□つた。
「諸君、最(も)う馬鹿にし給ふな、片岡禅吉は最早托鉢坊主ぢやないよ、明日辞令を請取(うけと)れば台湾総督府の巡査片岡禅吉ぢや。大いに新領土の経営をして日本国家に報ゆる覚悟ぢや。」
「壮快々々。一番片岡君の為(た)め祝宴を開いて万歳(まんざい)を称へやう、」と伊勢武熊は傲然として命令するやうに、「そこで会場は横町の牛店として駿河君は実業家ぢやから会費の半分を負担し、亀井君は懸賞小説が当選るさうぢやから登用人材の片岡君と共に残る半額を負担すべし。処で俺は当分志を得んから諸君の御馳走になるのぢや。あッはッはッ……。」




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