虫喰ひ算大会
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著者名:海野十三 URL:../../index_pages/person1159

   自序

 本書の中に、「“虫喰ひ算”大會」の會場が、第一會場から始まつて第三十會場まである。われと思はん方は御遠慮なく、第一會場から出發して、智惠だめし根だめしをなされたい。
「虫喰ひ算」とは、そもそもどんなものであるか。
 簡單にいへば、「虫喰ひ算」とは、虫に喰はれて判讀できない數字を、推理の力によつて判定する算數學のことである。
 但し學といつても、頭の芯がじーんと痛くなり、苦しみの外に何にもないといふやうな詰らないものではない。「虫喰ひ算」は非常に面白く樂しいもので、一旦これで遊んだものは終生「虫喰ひ算」のうれしい味を忘れ得ないであらう。私も二十年來これを愛好し、時にはこれを探偵小説に組立てて書いたこともあつた(海野十三作“暗號數字”)。
 本書の中には、「虫喰ひ算」の親類筋にあたる「覆面算」もいくつか收めてある。「覆面算」といふのは、數字が虫に喰はれて穴があいてゐるのではなく、文字又は符號の覆面をつけてゐる運算なのであつて、皆さんたち名探偵はその覆面を推理の力で叩き落として數字を剥し出すのだ。
 この兩方をひつくるめて、ここに「“虫喰ひ算”大會」を開いてあるが、會場の初めの方はやさしいが、だんだん後の方の會場となるとむつかしくなる。その代り「虫喰ひ算」の魅力はだんだんに強く加はり、最後の第三十會場までが殘り少くなるのが惜しまれるやうになるであらう。第一會場を合格すれば第一階選士と名乘る。が、第三十階選士となるには、とてもたいへん[#「たいへん」は底本では「たへいん」]である。
 やさしい問題は國民學校の二年生でも解ける。一等むつかしい問題でも、中學生なら解けるであらう。しかもこの「虫喰ひ算」の魅力は大學教授をして鉛筆を嘗めながら呻らせる魔力をも備へてゐて、實に神祕なところがある。
 本書にはわざと空白を用意してあるが、そこでは部分的計算や、やりかへしをするためにせいぜい鉛筆を運動せられて然るべし。
 本書には全部で百三十二箇の問題を集め得たが、これだけ集めるのはずゐぶん苦心し、且つ長い年月を要した。もつと多くの新しい問題を探し出したいと思ふが、私が二十年で得たものはこれで全部である。同好の諸氏で御存知ならば御惠投を煩はしたい。最後に本書は次の各書を參考としたことを記し、謝意と敬意とを表する。
F.C.Boon,“Puzzle Papers in Arithmetic”
G.C.Barnard,“An Elementary Puzzle Arithmetic”
F.F.Potter and F.C.Rice,“Common Sense Arithmetic”
H.E.Dudeney,“Modern Puzzles”
A.S.E.Ackermann,“Scientific Paradoxes and Problems”
藤村幸三郎氏著「新數學パヅル」

   昭和二十一年正月七日
著者識

[#改ページ]



    一 虫喰ひ算とは?

 古い大福帳や證文や勘定書などがしみといふ虫に喰はれてをり、肝腎の數字のところが穴になつてゐる。さあたいへん、困つたことになつた。さういふとき推理の力でもつて、その穴になつた數字はかういふ數字であらねばならぬと判別する。この算數學がいはゆる「虫喰ひ算」と稱ばれるものである。
 もちろん、一金五萬兩也、右借用候事しかじかといふやうな一本建の數値だけがあつてそのうちの數字が虫に喰はれてゐるのでは、探しやうがないが、もしそれが加減乘除の運算書であれば、その一部が虫に喰はれてゐても、前後の關係から推理によつて正確に判別することができる。時には、數字の全部が虫に喰はれてゐても、それらの數字の配列が分つてさへゐれば、推理の力を積んでその全數字をいひ當てることができる。
 なほ「虫喰ひ算」に似たものに「覆面算」と名附けるものがある。これは虫喰ひ算ではその數字が虫に喰はれて穴があいてゐるのに對し、「覆面算」では符號または[#「または」は底本では「また」]文字になつてゐるのだ。もちろん數字は一から九までの外に〇の十箇だから、その覆面の符號または文字は十箇以内に限られる。
「虫喰ひ算」と「覆面算」とどつちが面白いか。それは人によつて違ふが、私はどつちも面白いと思ふ。
「虫喰ひ算」を解く鍵は、普通の場合、まづ初めに零の數字か、一の數字であらねばならぬところの穴を探し出すことにある。
「覆面算」では、同樣のこともあるけれど、同じ文字又は符號がいろいろな關係で並んでゐるところからして、ははあ、この文字はこつちの文字の二倍だなどといふ相互關係が見出されると、後は急に解けやすくなる。
 虫喰ひ算の類を解くときは、徹頭徹尾推理の力で推していくところに興味と實益があるのであつて、一かなあ、それとも二かなあ、それでなければ三かといふふうに、いちいち代入法でやつて行くやり方は面白くない。
 虫喰ひ算は、序文にも述べてあるとほり、中級以上のものは一題一題が寶石のやうに尊く且つ愛づべきものであるからして、なるべくじつくりと解いていただきたい。一日に十題も二十題も解くことは、頭も疲れるし、それに虫喰ひ算の妙味が分らないと思ふ。
 そこで本書の“虫喰ひ算”大會の設計に當つても、やさしいものとむつかしいものとを交ぜて四題ぐらゐを一會場とすることとした。
 なほ、第一會場から第三十會場までのうち、初めの三分の一ぐらゐは割合とやさしいが、それから先はだんだんと複雜難解なるものが入つて來、それだけに推理に成功すれば嬉しさがこみあげる。第二十會場以後となると、虫喰ひ算の愛好者にとつては、こたへられないほどの歡喜と興奮とをもたらすことであらうと思ふ。


    二 やさしい虫喰ひ算とその解き方

 まづやさしい虫喰ひ算の方から、その解き方を述べて行く。
【例題一】このやうな加へ算がある。四角の穴は、いはゆる虫の喰つたところである。さういふものが、この問題には四つある。これを推理で探しあてるのだ。

  1□92
  29□1
  971□
+ 2□17
――――――
 17592

 まづ右端の縱列の□から考へて行く。これは一の位である。2と1と□と7とを加へた結果、その値の一位は2となることが、この計算によつて分つてゐる。□は別として、分つてゐる2と1と7とを加へると10[#「10」は縦中横]となる。しかるに、一の位の合計の一位の數字は0ではなくて2である。するとこれは□が0ではなく、2であることが推理される。そこでその2を書き入れ、上のやうになる。

  1□92
  29□1
  9712
+ 2□17
――――――
 17592

次は十の位だ。一位から1が送られてゐることを忘れてはならぬ。やはり□が一つある。それを別にして、分つてゐる數字9と1と1と、一位からくりあがつた1とを加へると、その結果は12[#「12」は縦中横]となる。しかるに、十位の合計の十の位は9となつてゐて、2ではない。これはつまり十位の□を加へてないからかうなるわけだから、9から2を引いて7、この7が□の數字と決まる。そこで計算を整理すると次のやうになる。

  1□92
  2971
  9712
+ 2□17
――――――
 17592

 その次は百位だ。これは今までのやうには行かない。□が二つもあるからだ。分つてゐる9と7とを加へ、それに十位から上がつてきた1を加へて17[#「17」は縦中横]となる。この縱列の合計の百位の數字は5であるから、□と□との合計は8であるかもしれず、18[#「18」は縦中横]であるかもしれない。さあ分からなくなつた。
 が困ることはない。もう一つ上の千位の數字を見ると、この縱列には□がない。1と2と9と2を加へて14[#「14」は縦中横]となるが、下の合計では17[#「17」は縦中横]となつてゐる。すると百位から千位へ送られた數字は17[#「17」は縦中横]から14[#「14」は縦中横]を引いた3だと分かる。
 さうなると百位の二つの□の和は8ではなくて18[#「18」は縦中横]であらねばならぬ。18[#「18」は縦中横]でないと、3は上つてこない。
 これで一應解けたわけだ。□と□の合計が18[#「18」は縦中横]となる關係があれば、どんな數字でもいいのだ。いや、どんな數字といふわけにもいかない。二數字の和で18[#「18」は縦中横]なら、いづれも9である外にない。なぜなら9以上の數字はこの縱列に存在しないわけで、ぜひとも9でなければならないのだ。そこで答は上の如く決まつた。

  1992
  2971
  9712
+ 2917
――――――
 17592

 同じ加へ算でも、「覆面算」ふうなものが加はつた場合がある。次の例題がそれだ。

【例題二】Nといふ文字で現された數字が五箇所に入つてゐる加へ算である。もちろん、どのNも同じ數字である。

  2N8
  2N2
  88N
+ N2N
―――――
 2164

 この配列を見ると、どこから手をつけていいか分らぬやうであるが、しばらく見てゐると鍵が發見される。それは一位の四數字の和が8と2と二箇のNであり、また十位の四數字も同じく8と2と二箇のNである點だ。しかもこの合計を下列でみると、一位では4だし、十位では6となつてゐる。これだ、鍵は。
 これは一體どういふことを意味するか。一位から十位へあがつた數字は、6から4を引いた2であることを意味する。
 どうして2をあげることができるか。8と2を加へて10[#「10」は縦中横]だから、これでまづ1があがる。その外に二つのNがあるから、この和で1があがらねばならぬ。すると二つのNの和は14[#「14」は縦中横]である。よつてNは7だといふことになる。
 うそだと思つたら五箇のNに7を代入して檢算してみるがよろしい。かういふやり方では、百位のNにはつひに手をつけないで解くことができた。一刀兩斷の快味に、ちよつと似てゐる。

 引き算を一つやつてみよう。やさしいものであるが……。

【例題三】これは國民學校の一年生でもできるであらう。一位からやつて行く。

 □84562
− 8□1□3
―――――――
 6□7□7□

 2から3は引けないから、十位から10[#「10」は縦中横]を借りて、12[#「12」は縦中横]から3を引いて9が出る。
 次は十の位だ。6は既に5に減つてゐる。それから□を引いて7が出るといふからには、この□は逆算して8でなければならぬ。この際、百位から10[#「10」は縦中横]を借りた。
 次は百位だが、被減數の5は、先に1を右へ貸したから4となつてゐる。だからそれから1を引くと3であるから、□は3と決まつた。
 次は千位。これはわけなしだ。□は7であらねばならぬ。但し上から10[#「10」は縦中横]を借りた。
 萬の位では、被減數の8は下へ1を貸したので、實は7である。それから8を引けば9である。□は9と決まる。
 十萬の位の□は7である。なぜなら下へ1を貸してあつて、答は6となつてゐるから、7にちがひない。これで出來た。下のやうになる。

 784562
− 87183
―――――――
 697379

 次は掛け算の場合である。掛け算だからといつて別にやり方が根本的にちがふわけではないが、一つの方針をごらんにいれておきたいと思ふ。
【例題四】この問題を見ると、虫喰ひ穴が八箇所もある。こんなに穴だらけで、果して推理の力で解けるだらうかと不安になる。

  97□
×  □8
―――――
 □□□0
 9□□
―――――
175□0

 しかししばらくこの計算をながめてゐると、そのうちに有力なる手懸りが發見されるのだ。そこが興味津々たるところだ。
 すなはち、まづ第一の手懸りは、乘數の十位の穴は、1であるといふことだ。なぜなれば、上から四段目を見ると、三桁の數であり、その百位は9に始まつてゐる。しかるに被乘數を見ると、やはり三桁であり、百位の數字は9である。すると乘數の十位は1であらねばならぬことが分る。さうなると上から第一段目と第四段目とは同じ數である。そこで上のやうに穴を二つふさぐことができた。

  97□
×  18
―――――
 □□□0
 97□
―――――
175□0

 第二の手懸りは、乘數の一位の8を、被乘數の一位の□に掛けると、その答の一位は、8の字の下にあるとほり0となるのだ。さういふ場合、□はどんな數字でもいいといふわけには行かぬ。すなはち□は0か5かのどつちかであらねばならぬ。さうでないと第三段目の右端の數字は0とならない。
 では、0か5か、どつちであるか。それを判定する段取に移る。
 □は0ではない。なぜなら、第三段目は 7760 となり、第四段目は 970 でそれを加へると、第五段目のやうに 175 云々とはならず、174 云々[#「174 云々」は底本では「173 云々」]となつて勘定が足りない。そこで被乘數の一位の□は、5であらねばならぬと決定する。
 □を5として計算してみると、正しく下の如く、ちやんと勘定が合ふのである。

  975
×  18
―――――
 7800
 975
―――――
17550

 次は、割り算である。割り算は虫喰ひ算としての面白さを十分に備へてゐる。すぐれた虫喰ひ算は、たいてい割り算の形をとつてゐる。次にあげたのは、やさしい割り算の虫喰ひ算である。

【例題五】[#「【例題五】」は定本では「【例題六】」]この問題では、二桁の除數が穴になつてゐるし、答も十位が穴だし、計算の中にも六箇所の穴があいてゐる。

    □3
  ____
□□)949
   □□
  ――――
   □□9
   □□9
  ――――
     0

 なほよく見るのに、肝腎の除數が全然不明であり、またその答も半分しか判明してをらず、これではどうにも手のつけやうがない――やうに思はれる。
 が、しばらく氣を落着けて、じつとこの運算書を眺めてゐると、うまい手懸りがだんだんと見つかつてくるのである。まづ第一に除數の一位の穴が3であることに氣がつく。そのわけはかうだ。除數[#「除數」は底本では「被除數」]に答の一位の數である3をかけたとき、その合計の一位の數は9となつてゐる。(上から五段目の右端)つまり、3に或數(除數の一位)をかけて、答の一位に9が出てくるためには、その或數は3の外にないのだ。33が9であるからだ。そこで上のやうに、穴を一つうめることができた。

    □3
  ____
□3)949
   □□
  ――――
   □□9
   □□9
  ――――
     0

 さて次に、答の十位の數は、3よりも少い2か1かのどつちかであることに氣がつく。なぜなれば、除數と答の一位をかけた計算は、上から五段目であつて、三桁の數□□9 だ。ところが、上から三段目の、答の十位をかけた計算は□□となつてゐて二桁の數である。すなはち、答の十位の數は2か1かのどつちかに制限される。これで餘程探求の範圍は狹くなつた。
 一方、除數の十位の□は、4か、4よりも大きい數でなければならぬことに氣がつく。なぜなれば、上から五段目のところで、除數の□3 に、答の一位の3をかけると、一位は9となる。次に除數の十位に答の一位の3をかけたものは、百位と十位との二桁ものとなるが、これは除數の十位の數が3以下では二桁とならない(つまり33が9や23が6では二桁とならない。どうしても34の12[#「12」は縦中横]以上でなければならぬ)。そこで除數の十位の穴は、4か、4よりも大きい數だと分る。
 そこで今度はもう一度、答の上位の計算、すなはち上から三段目へ戻る。前に述べたやうに、答の十位は1か2かの何れかである。ところが、これが2であつては、今しがた導き出したところの、「除數の十位の數は4以上」といふ關係がぶちこはされる。假りにそれが最低數の4とすれば、答の十位の2をかけると 43×2=86 となるから、被除數の 94 からこれを引くと、殘りは8となつて一桁となる。すなはち上から第四段目は□□9 とはならずして□9 の形となり、桁があはぬ。從って答の十位は1か2かといふことであつたが、これは1であらねばならぬと確定する。さあこれで、大體解けた。今まで解けたところを穴に入れて書いてみると下のとほりになる。

    13
  ____
□3)949
   □3
  ――――
   □19
   □19
  ――――
     0

 これでみるとほり、答の十位が1と決まれば、第三段目の右端は當然3である。するとこの下は、4から3を引くのだから1であり、その1の下も、第六段目が0だから、同じく1であらねばならぬわけである。
 第五段目に於いて、十位に1が出る計算で、3の倍數である謎の數字(すなはち除數の十位の數)は何か。順番はこの問題にうつる。これはすぐ分る。それは7である。37の21[#「21」は縦中横]であるからだ。よつて除數の十位の數は、7だと分る。これで重要なところはすべて解けたわけである。念のために、 73×13 で、果してこの計算がうまく合ふかどうかやつてみる。すると下に示すやうに十分滿足することが分る。推理力萬歳! である。

    13
  ____
73)949
   73
  ――――
   219
   219
  ――――
     0

 やさしい問題の解き方はこのぐらゐにして、次はもつとむつかしいものの解き方を二つ三つごらんに入れることにする。


    三 高級な虫喰ひ算とその解き方

 高級だといつても、解き方の根本に別にかはつたことがあるわけではない。ただむつかしい點は――從つて大いに興味のある點は――どこに手懸りが隱されてゐるか、どこから解き始めたら一番うまく行くかといふところにある。すぐれた寶玉のやうな問題は、このように鍵の隱し場所が極めて意外なところにあり、そしてそれにぶつかつて解くと、あとは全部ががらがらがらと崩れるやうに解けて行くやうなのを指していふのだ。
 それを解きにかかる皆さんは、名探偵の明智小五郎か、シャーロック ホームズか、それともファイロバンズかエラリー クヰーンか、とにかくせいぜい智能をふるはれたい。
 そこで例題の解説にうつる。

【例題六】[#「【例題六】」は底本では「【例題七】」]これは「覆面算」である。いろいろなアルファベットが並んでゐるが、これはもちろん二十六種の文字が並べてあるわけではなく、皆で十種しかない。つまりCMLQTPAINSの十種である。この十種の覆面者のどれが1234567890のどれであるかを、これから推理でもつて探偵しようといふわけである。

      QCN
   ______
CML)QTPAI
    QIS
    ―――――
     QPA
     CML
     ――――
     CCCI
     CSNS
     ――――
       MI

 ちよいと見たところでは、何が何だか見當がつかず、まるで突然火星國へ不時着したやうな當惑を感じ、取りつく島もなささうに思はれる。しかし、いつもいふとほりに、名探偵らしくじつくりこれを觀察してゐれば、やがて祕密の扉を開くべきすばらしき鍵を發見することができ、思はずにつこり微笑まるることであらう。
 さて、いよいよこの覆面算の探偵に移らう。

 名探偵が、第一に目をつけたところは、上から五段目の CML である。これは除數である CML と全く同じではないか。大發見、大發見!
 然らば、この五段目の計算を導くに至つた答の十位の數Cは1であらねばならぬ。さうですねえ。すなはち計算の中のCを悉く1に書き改めて、下の如くに整理をする。

      Q1N
   ______
1ML)QTPAI
    QIS
    ―――――
     QPA
     1ML
     ――――
     111I
     1SNS
     ――――
       MI

 さあ、こんどはどこに第二の鍵を發見すべきであらうか。うん、これだ。三段目の右端のSが曲者である。このSの上はPである。またこのSの下も同じPである。PからSを引いて答はPだ。P−S=P。これは變な關係だ。いや變ではない。かういふ關係はSが零のときのみに成立つ。これでいい。第二の鍵はこのSが0であることだつた。
 そこで運算書の中のSを0として再び書き改める。これで大分明るく[#「明るく」は底本では「明る」]なつた。
 いや、まだ安心するのは早い。前途にどんな難關が横たはつてゐるか分らない。

      Q1N
   ______
1ML)QTPAI
    QI0
    ―――――
     QPA
     1ML
     ――――
     111I
     10N0
     ――――
       MI

 いよいよ第三の鍵の發見に掛る。さあ、それはどこにあるか。今度はなかなか手ごはい。ほほう、これは氣がつかなかつた。これらしいぞ第三の鍵は!
 今求めた三段目の「Sは0なり」のところであるが、ここに0を書き入れたについては、除數の一位の數のLと答の百位の數のQをかけた結果である。つまりLとQとかけて、その答の一位が0となつたのである。さういふ場合は、LとQとのいづれかが5であり、他の數が偶數でなければならぬ。(誰です、LかQが零の場合でもいいぢやないかといつた方は……。零は既に出てゐますよ。Sは0であると、さつき導き出したばかりです)――さて、これだけでは決定的でないが、もう一つ目をつけるべきところがある。それは七段目の右端の數字も、同じく0であることだ。この0は、除數のLと、答の一位の數のNとを掛け合はせた結果出てきたのである。するとさつきと同じ理窟から、LとNとのどつちかが5であり、偶數であらねばならぬこととなる。
 そこでLが5であることが確定される。なぜなれば、前にはLとQのいづれかが5か偶數かとあり、今またLとNのいづれかが5か偶數かとなつたからには、この兩條件を共通に滿足すべき答としては、Lが5である場合しかない。(また聞えましたよ、誰ですか。Lが偶數であつてもいいではないかといひましたね。とんでもないことです。Lが偶數なら、初めの條件によりQは5となります。すると後の條件のとき、つまりLとNのいづれかが5であり偶數であるといふときには困つてしまふではありませんか)とにかくかうしてLは5、そしてQとNとは偶數だといふことが分つた。早速これを書き入れると下のやうになる。

      Q1N
   ______
1M5)QTPAI
    QI0
    ―――――
     QPA
     1M5
     ――――
     111I
     10N0
     ――――
       MI

 このへんで貴君が「虫喰ひ算て面白いなあ」と心臟をどきどきされたとしたら、それは既に虫喰ひ算の「鬼」が貴君にのり移つたことの證據である。一旦この「鬼」にとりつかれたら、お氣の毒ながら(?)貴君はもう一生涯虫喰ひ算のファンとして離れられなくなる。決して嚇かすわけではないが、事實がさうだから仕方がない。
 餘計な話はやめて、次へ進む。第四の鍵はどこにあるか。四段目のQであるが、この下に1がある。その下にも1がある。するとQから1を引いて1が出たわけだ。するとQは1と1との和の2であるか、それともQは下位へ1を貸してあつて、本當は3であるかもしれないと臆測される。つまりQは2又は3であらねばならぬと。ところが、どつこい、Qは2であらねばならぬ。3であることは許されない。なぜならば、QとNとは共に偶數なりと、さつき決定したばかりだから。

      21N
   ______
1M5)2TPAI
    2I0
    ―――――
     2PA
     1M5
     ――――
     111I
     10N0
     ――――
       MI

 第四の鍵は、比較的樂であつたから、あとはもういいだらうと安心すると、たいへんな間違ひが起る。
 ここで六段目と七段目の眞中を見る。11[#「11」は縦中横]から0N[#「0N」は縦中横]を引きMが殘りとなつてゐる。この關係を書き直すと N+M=11 となる。前にNは偶數と分かつてゐるから、Mは奇數でなければならぬ。
 奇數といつても、既に1と5とが決まりずみだから、Mは3、7、9のどれかであらねばならぬ。
 ところがMについては、もう一つ制限がある。それは三段目のところで、除數の 1M5 に2をかけて 2I0 となつてゐるが、Mは4か、4より小さい數でなければならぬ。なぜならMが5以上なら計算は二桁の數となり、三段目の左端は2とならずに3に變つてしまふからである。Mは4か、4よりも小さい數でなければならぬといふ條件を、前に導き出したMは3か7か9のどれかであるといふ條件に加へると、當然Mは3であるしかない。これが第五の鍵だ。
 さきに N+M=11 といふ關係が明かになつてゐたから、このMを3に置きかへると、Nは當然8だと分る。
 それで除數は 135、答は 218 であると分つた。もうこれで後はがちやがちや解ける。すなはち下に示すやうな計算になつて、この問題はりつぱに解けたこととなる。名探偵の勝利である。さあ、シャンパンでも拔かうかといふ順序になるわけだ。シャンパンがなければ鐵管ビールで間に合はせておけ!

      218
   ______
135)29467
    270
    ―――――
     246
     135
     ――――
     1117
     1080
     ――――
       37

C=1
M=3
L=5
Q=2
T=9
P=4
A=6
I=7
N=8
S=0

 次は非常にむつかしい問題の一例として、一數字の外は全部穴ばかりといふ例題を出してみる。こんな問題が推理だけで解けるとは思はない人が少くないであらうから、推理でちやんと追込んで行けるといふところをお知らせしたい。

【例題七】[#「【例題七】」は底本では「【例題八】」]一目見ただけでこれが難問題といふことがはつきり分る。分つてゐるのは、答の千位の數字が7だといふだけである。この穴を埋める答がもしも出たとしたら、それは出鱈目のまぐれ當りか、それとも初めから問題を知つてゐたせゐだらうと邪推する人があるかもしれない。しかしさうではなく、やはり推理の力でどんどん押していつて、これが解けてくるのである。もちろん大骨が折れる探偵事件であるが、さやうに大骨が折れるところが、また虫喰ひ算ファンにとつて、實にこたへられない快味である。では取懸ることとしよう。

       □7□□□
   _________
□□□)□□□□□□□□
    □□□□
    ――――――――
      □□□
      □□□
     ―――――――
      □□□□
       □□□
      ――――――
        □□□□
        □□□□
       ―――――
           0

 まづ第一着手は0を探すこと。これは容易である。答の十位の□は0である。なぜなれば、八段目をよく見ると一度に上から二桁下りてゐる。だから答の十位は0であることは歴然である。そこで□の中に0を書き込む。
 次は、答の萬位と一位は、共に7より大なる數字だと分る。つまり8か9であらう。なぜなら、7の場合は、計算すると五段目のとほり三桁であるのに、萬位の計算である三段目も、一位の計算である九段目も、共に四桁の數字である。であるからして、どつちも7より大きい8乃至9であることが分る。
 それから次は、六段目の左端に目をつける。これは1であらねばならぬ。七段目で一桁下つて引いてあるが、その下にも何もないのであるから間違ひなくそれは1である。
 それから今度は、二段目左端の除數の百位の數字が1であらねばならぬと判定を下す。なぜなれば答の千位の7を、三桁の除數に掛けたものが、五段目に出てゐる如く、やつぱり同じ三桁であるからには、除數の百位の數字は1であらねばならぬ。もし2以上であつたら四桁以上になるから不合理だ。
 三段目左端と、九段目左端は、共に1であらねばならぬ。なぜなら、除數の百位の數字が今1と決まつた以上は、この四桁の數字の左端はどんな數字を掛けようが1以外にはなり得ない。
 すると八段目左端も1であらねばならぬ。なぜなれば、この八段目は九段目と同一であるからである。
 まあこの邊で、原運算を整理して下に示して置かう。但し▲は、8か9かのどつちかだといふことを示す。

       ▲7□0▲
   _________
1□□)□□□□□□□□
    1□□□
    ――――――――
      □□□
      □□□
     ―――――――
      1□□□
       □□□
      ――――――
        1□□□
        1□□□
       ―――――
           0

 かうしてやつと七八つの穴は解いたが、のこりの穴は三十二ホールだ。前途遼遠の感を深うする。
 さて、元氣を出して次に掛る。
 二段目の除數の十位の數字は2以下である。つまり2か1か0であらねばならぬ。なぜなれば、五段目左端は7か、或ひは8故(これが6以下では六段目の左端は1とはならず[#「これが6以下では六段目の左端は1とはならず」はママ。五段目は 1□□の7倍だから五段目左端は7以上になります。]、又9であれば0となるから不合理)、除數の十位の數字が2と1と0以外では五段目左端が7或ひは8とならない。
 ところが、なほよく檢討すると、それが0では不合理で、2か1かのどつちかに狹ばめられる。なぜなら、それが0では、除數は 10□となるわけだから、これに答の萬位の數字と思はれる8を掛けようが9を掛けようが、共に三桁の數となり、三段目や九段目に示されるやうな四桁の數とはならないからである。
 次に、一段目の答の百位の數字は8である。なぜなれば、除數は既に追込まれたとほり、12□か 11□のどつちかである[#「どつちかである」は底本では「どつちかある」]が、それに百位の數字を7と假定して掛けたのでは 84 又は 77 となり、六段目四桁目の 1□□□からそれを引いて、その殘りが八段目の左端の1の如く二桁も下るためには不都合である。これはどうしても8でなければ成立たぬ。
 答の百位の數が8だと決まれば、答の萬位の數及び一位の數は共に9でなければならぬ。そのわけは8でさへ三桁である。しかるに萬位のも一位のも共に四桁であるから、これは9であるしかない。
 これで、答の數は全部判明した。すなはち□7□□□は 97809 であると決まつた。
 尚、七段目左端は9である。なぜなれば、これを8だとすると、その下に何か數字が殘る、しかし實際にはこの下には何にもないのであるから、9であるしかない。
 これだけのことを計算に書入れてみると下のやうになる。

       97809
   _________
1□□)□□□□□□□□
 ↑  1□□□
 2  ――――――――
 又    □□□
 は    □□□
 1   ―――――――
      1□□□
       9□□
      ――――――
        1□□□
        1□□□
       ―――――
           0

[#八段目九段目左端「1」は底本では「□」]

 さあ、あと一息である。
 除數の十位の數は2か1かのどつちかであると、既に追つめられてゐる。この問題を片づけるのは比較的樂である。これまで當つてきたところから考へると、それは1であるよりも、2である方がずつと有力である。そこでこれを假りに2と考へる。
 すると、除數は 12□の形となつたわけ。
 さうだとすると、除數の一位の數は、4又は4より小さい數でなければならぬことになる。なぜなれば、七段目[#「七段目」は底本では「五段目」]に於いて、124×8=992 であり、それが5以上では 125×8=1000 となつて四桁になる。しかるに七段目[#「七段目」は底本では「五段目」]は三桁であるから、除數の一位の數は4、又は4より小さい數字であらねばならぬ。
 これを4とすると、除數は 124 となる。これと先に判明した答の 97809 とで、この計算を行つてみると下のやうになる。

       97809
   _________
124)□□□□□□□□
    1116
    ――――――――
      □□□
      868
     ―――――――
      1□□□
       992
      ――――――
        1□□□
        1116
       ―――――
           0

[#八段目左端「1」は底本では「□」]

       97809
   _________
124)12128316
    1116
    ――――――――
      968
      868
     ―――――――
      1003
       992
      ――――――
        1116
        1116
       ―――――
           0

 このあとは逆にやつて行くと穴の中は全部數字で埋められるが、その結果はすこしも不都合がなく上のやうになる。これが答だ。やれやれ骨を折つた。
 解法は、何もこれ一つに限らず、もつといい別の方法があつてもいいわけで、よく考へて頂きたいものである。

 このへんで例題の解説は打切ることとする。


    四 “虫喰ひ算”大會について

 いよいよこれから「“虫喰ひ算”大會」を開催する。第一會場から第三十會場まである。一會場につき、いづれも四題ぐらゐづつが掲げてある。じつくりとぶつかつて、推理の力により答を出して頂きたい。
 空白の頁は、こまかい計算をしたり、またやり直すのに便利なために明けておいた。
 一日に一會場以上は進まない方がよろしいと思ふ。どんどん通つてしまつては、頭も痛くなるであらうし、珠玉のやうな虫喰ひ算の味が十分は味へないと思ふ。
 四問題のうち、初めの二問題か三問題は比較的やさしいが、後に出て來るものは大分むつかしくなつてゐる。
 また最初のうちの會場は、わりあひ樂であるが、會場が進むにつれて、だんだんむつかしくなつて來る。第二十會場あたりからあとは相當お骨が折れて頭から湯氣を出されることと思ふ。その代り十分骨折り甲斐のある虫喰ひ算の魅力を滿喫せられることであらう。
 尚、これらの答は、わざとつけてない。答を操つてみて、「ははあ、なんだこの□は9か」などとやられては、虫喰ひ算の妙味はなくなつてしまふ。もしやり方に詰つたら、その前の例題を復習して、虫喰ひ算の解き方のこつを會得せられ、それからもう一度問題と取組んでいただきたい。
 第一會場をパスすれば、第一階選士となられる。かくてどんどん進んで、第三十會場をパスすれば、當然第三十階選士として最高の名譽を獲得せられるわけで、メダルでも出したいところであるが、生憎手許にないのは遺憾である。
 第三十階選士になつたからといつて、この虫喰ひ算の書はつまらないものと化したわけではない。また改めてもう一度第一會場からくりかへしてみられると、また新なる感興を覺えられるであらう。虫喰ひ算は、一度や三度[#「三度」はママ]解いたから、そのあとはもう興味索然とするやうな、そんな薄つぺら[#「薄つぺら」は底本では「薄つらぺ」]なものではない。かうして二度三度四度とやりかへすために、本書にインキで書き込むことは控へて、なるべく軟い鉛筆で記入されたいものである。
 では會場を開きますぞ。さあさあ世界にめづらしい「“虫喰ひ算”大會」の會場は、こちらが出發點でございます。自信と興味のある方は、どんどんこの門から御入場なされませい。どうぞ、お先へ、お先へ……。


[#改ページ]



        “虫喰ひ算”大會 第一會場

 さあ、こちらが第一會場です。“虫喰ひ算”大會の出發點です。加へ算、引き算、掛け算、割り算と全部揃つてゐます。
(4)は、五つの穴から成立つてゐる數を、11[#「11」は縦中横]で割つた答が、穴の下に出てゐますが、殘りがあることに御注意のこと。(5)はこの會場で一番むつかしいものですが、よく見てゐれば、どこから解いたらいいか分ります。(分らない方に、智惠をちよつと貸しませうか。8に如何なる數をかけたら、一位に4の數が出るか、出てゐる桁は三桁ですから……そこまでいつては興味がなくなりますね、ごめんなさい)

(1)

  □937
    8□
   109
+ 4□75
――――――
  74□5

(2)

 8□74□
− 6□23
――――――
 □11□6

(3)

  □□□□1□
×      7
――――――――
 □999998

(4)

11)□□□□□
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    7996

     殘り9

(5)

     □□
  _______
28)1□□4
    □□
  ―――――――
    □□4
    □□4
  ―――――――
      0


        “虫喰ひ算”大會 第二會場

 第一階選士となられた貴下の御來場を歡迎します。どうぞ本會場も見事にパスして、第二階選士の名譽を獲得せられんことを希望いたします。
 本會場にも五問題が配置されてあります。
(1)はやさしい。(2)ではちよつと頭をおひねりになるでせう。(3)もへいちやら。(4)は、ちよつとむつかしさうに見えて、案外やさしいです。右の方の或數字と或數字に注意力を向ければねえ。(5)は面白い問題です。三つのCと、それからBによく御注意を……いや、いはない方がよかつたかなあ。

(1)

   526
 − □7□
――――――
   347

(2)

  AB2DEF
×      2
――――――――
  2DEFAB

(3)

9)□□□□□
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   4140

    殘り8

(4)

   823
×   1□
――――――
  □□□5
  823
――――――
 □□□□5

(5)

      DC
   ______
ABC)DEDC
    DAB
   ――――――
     CDC
     CDC
   ――――――
       0


        “虫喰ひ算”大會 第三會場

 こちらが第三會場です。今までとちがつて少しむつかしくなりますよ。
(1)の穴は8以内の數字をあてはめてください。(2)は樂ですね。(3)は、いささか骨つぽいですぞ。AとCを掛けて三十いくつになるためには、AとCはどんな數でなければならぬか。7と3は既に決まつてゐるからこれは除外です。また0でもあり得ない。3以下の小さい數字でもあり得ない。だんだん範圍が制限されてきますね。それにもう一つ考へ合はせます。最後のところで、3にAを掛けると、一位はCとなる。さういふ特定の數はたくさんありませんね。……ここらでお分りになるでせう。(4)は大したことありません。(5)は面白いです。

(1)

   2344
   □□□□
 + 5720
――――――――
  13252

  □ 8以内の數字のこと

(2)

   □7□6□
 ×     7
―――――――――
  3□29□6

(3)

A)3B7AC
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   CB73

(4)

  AB□A
×   AB
――――――
  □□□□
 □□□9
――――――
 □□□B□

(5)

     1□2
  ______
□□)□□□64
    □□
   ―――――
    246
    □□1
   ―――――
     □□4
     □□4
   ―――――
       0

[#第一段目「1□2」は底本では「1□4」]
[#第二段目の被除數「□□□64」は底本では「□□64」]
[#第四段目「246」は底本では「226」]


        “虫喰ひ算”大會 第四會場

 前會場で第三階選士を獲得なされて、おめでたうございました。しかし、前會場は、ちよつとこたへたやうでございますね。
 本會場は、その埋合はせに、比較的やさしく且つ面白いものを並べてあります。(5)に於いては、答のところにAが二つありまして、そこに……。
 喋りすぎるぞ、といふお叱りです。はいはい、では沈默いたします。

(1)

   674□
    2□7
     63
 + 2□□8
―――――――
  □□1□3

(2)

7)□□□□□
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   6618

    殘り1

(3)

   CB8A6
 ×     A
―――――――――
  21CB8A

(4)

   2N8
   2N2
   88N
 + N2N
―――――――
  2164

(5)

     A7A
  ______
□□)1□□□□
   1□□
   ―――――
     □□
     □□
   ―――――
     □□□
     □□□
   ―――――
       0


        “虫喰ひ算”大會 第五會場

 いらつしやい、ここが第五會場です。
 いかがですか。大分面白くなりましたね。本會場も五問題を用意してございます。
(1)、(2)、(3)は、居睡りしてゐてもお出來になりませう。
(4)は? “この計算は間違ひぢやないかなあ、三桁の數をかけてあるのに、計算は二桁しか出てをらんぞ”と、誰方か喚いてゐますが、やれやれお氣の毒。
(5)は三段目の4[#「4」は底本では「5」]にお目をとめられて[#「お目をとめられて」は底本では「お目とめられて」]……。いや、餘計な口出し[#「餘計な口出し」は底本では「餘計なこと口出し」]でしたかね。

(1)

   □□7□4□
 ×      7
―――――――――
  1□2□8□1

(2)

   □84562
 −  8□1□3
―――――――――
   6□7□7□

(3)

   □2□
 _____
8)3□24

(4)

     WTFR
 ×    STX
――――――――――
     XRSY
   SWQY
――――――――――
   SYRQSY

(5)

     A□1
  _______
1A)□56□□
   □4□
  ―――――――
    □□□
    □□□
  ―――――――
      1□
      1□
     ――――
       0

[#第二段目の被除數「□56□□」は底本では「□66□□」]
[#第三段目「□4□」は底本では「□5□」]


        “虫喰ひ算”大會 第六會場

 既に第五階選士となられしことなれば、その實力に敬意を表し、本會場以後に於いては、それとなくヒントを袖の下からちらりと見せるやうなことはよしませう。
 ささ、どうぞお進み下さい。

(1)

    □□57□
 ×      9
―――――――――
   3□1□02

(2)

   5483□
 − □□2□□
――――――――
    9639

(3)

6)□□□□□
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
9) □□□□  殘り1
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    470  殘り1

(4)

     3□□□
 ×     9□
―――――――――
    2□□□1
   30□17
―――――――――
   33□□□1

(5)

       7F
   ______
ADC)BAEFC
    BDG8
   ――――――
     DEEC
     1EEC
   ――――――
        0


        “虫喰ひ算”大會 第七會場

 はい、こちらが第七會場です。
 だんだん面白い問題が出て來ます。
(1)も(2)も(3)も、あまり面白くない――とおつしやいますか。やさしすぎて面白くないのですか。さうでせう、もう貴下は第六階選士なんですからねえ。しかし何事にも、ウォーミング アップといふことが必要でございますと存じます。
(4)と(5)は、たいへん面白い。おほめにあづかつて恐れ入ります。

(1)

   2157
   □□□□
 + 1625
―――――――
  10342

  □は8以内の數字のこと

(2)

    □□□
 ×   □7
―――――――
   3□□4
  5□□□
―――――――
  □□□□□

(3)

   A7
 ____
3)1A1

(4)

    ABCD
 ×   DCB
――――――――
    BDKG
   CHEB
  DFCK
――――――――
  LCCEGG

(5)

      □74
   ______
31□)□□6□□
    63□
   ――――――
    □□8□
    □□□□
   ――――――
     □□□□
     □□□□
   ――――――
      □18


        “虫喰ひ算”大會 第八會場

 第八會場はこちらでございます。例によつて問題は五つ並べてございます。どうぞお氣のままにお進み下さい。
 え? 前のやうに喋つてくれとおつしやるのですか。それは困りましたね。本會場の問題はそんなにむつかしかありませんよ。
(4)ですか。これはわけありません。六段目でBが何者かと分れば、除數の十位も分つてあとは……あとは、むにやむにや。
(5)ですか、貴下が本當に助け舟をお求めなさるのは。割る數も商も皆穴で、手がかりがないとおつしやいますか。なあに、これもやさしいですよ。五段目の數字は何と何とを掛けると出るべき數か、因數の知識をちよいと……叱られぬ先に默りませう。

(1)

   3456□8
    □324□
 + □6□123
―――――――――
   959045

(2)

   4□□□4
 − □947□
――――――――
   26205

[#「−」は底本では「+」]

(3)

    7□4□
 ×    53
――――――――
   23□□7
  38□□□
――――――――
  410□□7

(4)

    STP
  _____
BT)KDNG
   PK
  ―――――
    FN
    TN
   ――――
    BGG
     NB
   ――――
      N

[#第七段目「NB」は底本では「NG」]

(5)

      □□□
   ______
□□□)□□□□□
    □□□
   ――――――
    □□□□
    1851
   ――――――
     □□□□
     □5□□
   ――――――
        0


        “虫喰ひ算”大會 第九會場

 やつぱり叱られてしまひました。餘計なお喋りをして、興味を削いだといふので……。それなれば、私のお喋りに對して耳に蓋をして下さればそれで目的は達せられる筈ですが……いや、ぐちは申しますまい。
 いよいよ第九會場となりました。(5)に取組んで、虫喰ひ算の味を滿喫していただきませう。

(1)

    45□7□
     23□1
    □2931
 +   □246
―――――――――
   104196

(2)

   57
 ____
3)A7A

(3)

   1ABC57
 ×      3
―――――――――
   ABC571

(4)

    □3
  ____
□□)949
   □□
  ――――
   □□9
   □□9
  ――――
     0

(5)

       BQM
   _______
XVS)XQARAM
    XMAB
   ―――――――
      CQA
      BBA
     ―――――
       VAM
       VAM
      ――――
         0


        “虫喰ひ算”大會 第十會場

 ここがもう第十會場になります。
 全三十會場の、ちやうど三分の一の境界線に達したわけです。本會場をパスなされば、すなはち第十階選士です。
 滿々たる自信をもつて、本會場を樂々とパスされることと信じます。しかし油斷は禁物ですぞ。この後には山あり谷あり流れあり、嘘だと思つたら、次の會場へ。そこで目をお□しになりませんやうに。

(1)

  1□92
  29□1
  971□
+ 2□17
――――――
 17592

[#「17592」は底本では「17392」。【例題一】と同一と考えられるため、【例題一】に合わせました。]

(2)

□)56□96
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   81□8

(3)

    97□
 ×   □8
―――――――
   □□□0
   9□□
―――――――
  175□0

(4)

   3N
 ____
N)259

(5)

       □□□
   _______
□□□)□□□□□1
    □□89
   ―――――――
      75□
      □□□
     ―――――
       □81
       □81
      ――――
         0


        “虫喰ひ算”大會 第十一會場

 第十一會場でございます。どうぞ、ごゆるりとお樂しみ下さい。いや、皮肉をいつたつもりではございません。
 ブーン先生の“虫喰ひ算集”は、なかなか數も多く、傑作も集つてをり、私は最も尊敬してをります。先生はこの虫喰ひ算を生徒に與へて、大へん樂しく算數を勉強させました。ところが生徒は、これが縁となり、虫喰ひ算がすつかり氣に入つてしまひ、遂には先生と一緒に問題を考へ出すまでになりました。さういふ生徒さんの作つた問題が、會場の方々に陳列されてゐます。

(1)

□)81□8
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   □0□

(2)

    3□AB
 ×    □B
――――――――
   □6□□A
   □□□□
――――――――
   □□□□9

(3)

  56N
  N65
  6N5
  5N6
+ 65N
―――――
 3240

(4)

      □□□
   ______
□4□)9□□□5
    □□□
   ――――――
    2□□□
    □□□□
   ――――――
      2□□
      □□□
     ――――
        0

(5)

       GQRDQN
 ×      SLADE
―――――――――――――
      GGGTAQN
      DERLTT
     EALDTT
    ASRELN
   LDTNNT
―――――――――――――
   ARLDQSQAQN


        “虫喰ひ算”大會 第十二會場

 こちらが第十二會場です。どうぞお入り下さい。
 およそ、この虫喰ひ算といはず、いはゆる數學パヅルと稱せられる趣味深い[#「趣味深い」はママ]問題を古くから研究し、そして集録して早くから著書として世に紹介したのは、イギリス人エッチ イー デュウデニー氏でありませう。今日までに紹介された數學パヅルで、このデュウデニー氏の本の中にないものは殆ど稀だといつてよいくらゐであります。

(1)

7)3□5□6
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   □93□

(2)

    □52□
 ×    3□
――――――――
    □0□8
   4□□2
――――――――
   4□7□8

(3)

   A3B
 − 3BA
――――――
   189

(4)

    EAK
  _____
AE)ETFG
   EK
  ―――――
    AF
    AE
   ――――
     KG
     KG
    ―――
      0

(5)

        2□□□
    ________
1□5□)□□□□□□6
     □7□□
    ――――――――
      □□□□
      5□□□
     ―――――――
       □□□□
       8□□□
      ――――――
       □□□□□
       □□□5□
      ――――――
           0


        “虫喰ひ算”大會 第十三會場

 本會場から、問題の數は四つになりました。數は一つ減りましたが、問題の質は格段にむつかしくなりましたから、十分齒ごたへがあると思ひます。
 齒ごたへがありすぎる! ああ、さうですか、さうですか。
 でも、もう第十二階選士になられたのですから、これくらゐの齒ごたへがないとお氣の毒に存じまして、かくの通り……。

(1)

    □□7□□
    □10□9
     □006
 +     □9
―――――――――
   2□□□□1

(2)

    285
 ×   □□
―――――――
   1□2□
   □□□
―――――――
   □9□□

(3)

     □7□
  ______
□□)17424
    □□
  ――――――
    □52
    □□□
   ―――――
     □□4
     □□4
    ――――
       0

(4)

      PLPR
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