空中漂流一週間
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著者名:海野十三 

「脱れるといっても、この気球は風のまにまに流れるだけなんだ。どこへ下りるか、それとも天へ上ったきりで下りられないか、分ったものじゃない」
「出鱈目(でたらめ)をいうな、日本人(ヤポンスキー)。気球はいつかは地上に下りるもんだ。天空(てんくう)に上ったきりなんてぇことはない」
 と、キンチャコフが生意気な抗議を試みた。
「そこまで分っていれば、いいではないか。この気球が下におりるまで、貴様一人で風や雨と闘うつもりか、それとも貴様と俺と二人で闘った方がいいと思うか」
「火の玉」少尉は、話をうまいところへ追込(おいこ)んでいった。
「ふん」
「それが分ったら、ピストルなんざポケットへ収(しま)っとくことだ。下手な射撃をして、気球にでも当れば、どういうことになると思うんだ。たちまち気球は火に包まれ、俺たち二人は、火を背負いながら地上に飴(あめ)のように叩きつけられて、この世におさらばを告げることになるだろうよ」
「……」
「おい、お前は思いきりのわるい奴だな、キンチャコフ。そのピストルなんか収(しま)って、これからどうすればわれわれは無事地上に下りられるかを研究して、すぐさま実行にかかるのだ。無駄なことはしないがいい」
 そういわれて、キンチャコフはつい兜(かぶと)を脱(ぬ)いだ。彼は不承不承(ふしょうぶしょう)に、逞しい形のピストルをポケットの中に収いこんだ。そして達磨(だるま)が起きあがるように、身体をごろんと一転させて、「火の玉」少尉と向いあった。
「ははあ、お前がキンチャコフか。だいぶん俺よりも年上らしいが……」
「火の玉」少尉は、どこまでも相手を呑んでかかった。


   呉越同舟(ごえつどうしゅう)


 それから、この奇妙な日ソ組合せによる空中漂流がつづいた。
 マイクロフォンの修理はできたけれど、これをつけても送信器は働かなかった。マイク以外に、故障ができたものらしく、専門家でない六条には、すぐさまその故障箇所を見つけることができなかった。
 だから無電器械は、受信器だけが役に立った。
「ハア、××繋留気球第一号!」
 といつまでもこっちを呼んでいるのが聞えたが、その声は、だんだんと強さを減少していく。それはいよいよ××陣地から遠く距(へだた)ったことを意味するのであった。
 無電は、しきりに救援の飛行隊が出動したことを報じていた。
 たしかに、それに違いなかった。午前二時ちかくだったであろうか、赤青の標識(ひょうしき)をつけたすこぶる快速の偵察機らしいのが一機、漂流(ひょうりゅう)気球に近づいた。
「おいキンチャコフ。俺も振るから、貴様もこの懐中電灯をもって、こういう具合に振れ。いいか」
 六条は、キンチャコフにも信号をさせて、二人のうちのどっちかが偵察機に認められればいいと思ったのである。
 キンチャコフは、あまり気がすすんでいなかったようであるが、それでも協力して懐中電灯を輪のように振った。
「おお、あそこを飛んでいるんだから、もう見えてもよさそうなものだが……」
 と、「火の玉」少尉は、上を指した。黒暗澹(こくあんたん)たる闇をぬって、三つの飛行機標識灯(ひょうしきとう)がうごいていく。それはだんだんこっちへ近づくように見えた。
「うまいぞ。たしかにこっちへやってくる」
「すこし変だよ。あれじゃ高度が高すぎて、気球の上を通りすぎてしまいそうだ」
 キンチャコフが、なかなか理窟(りくつ)のあることをいった。
「通りすぎられて、たまるものかい。おい、今だ。信号灯をもっと振れ」
 二人は、懸命に懐中電灯をうち振ったつもりであった。
 だが、この飛行機は、ついにキンチャコフのいったとおり気球の上方、約五百メートル近いところを飛び過ぎ、やがてだんだん遠くなってしまった。
「畜生、とうとう行かれてしまった」
「どうも無理だよ。こんな小さな灯(あかり)じゃ仕様がない。そのうえ、千切(ちぎ)ったような雲が一ぱいひろがっていて、上からは案外見透(みとお)しがきかないんだぜ」
 キンチャコフは、得意らしく喋りたてた。「火の玉」少尉は、キンチャコフが、ソ連仕立のかなり優秀なスパイであることを見破った。そうなると、これからさらに一層、油断はならないわけだ。
 やがて午前三時をすこし廻って、月が出た。それから一時間半ほどたつと、東の天が白くなった。
 前夜以来、しきりに呼びつづけていた××陣地からの無電が、急に小さな音響になってしまった。そして間もなく、なんにも聞えなくなった。
 それっきり救援の飛行機も、こっちへ追駈けてこなくなった。
 ただ涯しなく拡がった雲海(うんかい)のうえを、気球は風のまにまに漂流しつづけるのであった。その外(ほか)に、生物の影は、なに一つとしてうつらぬ。このひろびろとした雲海は、天国へ到る道であるのかもしれない。二つの屍(しかばね)を埋(うず)めるのは、どの雲のあたりであろうかなどと、「火の玉」少尉もあまりの荒涼(こうりょう)たる天上の風景に、しばし感傷の中におちこんだのであった。


   鋭い牙


「ねえ、六条。気球が上昇をストップしたようだぞ」
 寒そうに身体を叩(たた)いていたキンチャコフが、送信器の解体に夢中になっている六条にいった。
「ふん、なんだか動きもしなくなったようではないか」
 六条が相槌(あいづち)をうった。高度計を見ると、実に八千メートルの高空だ。いくら夏でも、これは寒いはずだ。
 気球は、ぴーんと膨(ふく)れきっている。
「これじゃ天井にくっついた風船みたいで、一向面白くない」
 キンチャコフが呑気(のんき)そうな口を叩いた。
「おい、貴様は無電の知識をもっとらんのかね」
 六条がたずねた。
「さあ、さっぱり駄目だねえ」
 と、キンチャコフは気のなさそうな返事をした。キンチャコフの方が、六条よりも死生を超越(ちょうえつ)しているらしく見える点があって、「火の玉」少尉も少々癪(しゃく)にこたえている。しかし、単にぐうたらに生きるものと、帝国軍人としてその本分に生きるものとは、どうしてもちがうのがあたり前で、六条の方が臆病だというわけではない。
「おおっ、気球が下りだしたぞ。ああ、ありがたい。温くなるだろう。ふん、あの辺の雲の中へとびこむな」
 キンチャコフがはしゃぎだした。
 六条は、とうとう無電器械のことをあきらめてしまった。空中漂流以来、戦友戸川のことを思い出し、こっちもこんどは一つ細心(さいしん)且(かつ)沈着にいこうと努力をつづけてきたわけだが、たかが無電器械一つと思うのが、どうしたってこうしたって、うんともすんとも直りはしないのだ。
(やっぱり、自分の柄(がら)にないことは、駄目なんだ)
 彼ははじめて悟りに達したような気がした。と同時に、今までの妙な気鬱(きうつ)が、すうっと散じてしまったようであった。
「ほう、なるほど下るわ下るわ。いよいよ墜落の第一歩か」
「あまり嚇(おどか)すなよ」
 と、キンチャコフがいって、
「へんなことをいうと、きっとそのとおりになるという法則がある。ちと慎(つつし)めよ」
「なあに、今のうちにこれでも喰っておけ。そうすれば元気になるだろう」
 六条は、携帯口糧(けいたいこうりょう)をゴンドラの戸棚の中からひっぱりだして、キンチャコフにも分けてやった。戸棚の中には熱糧食(ねつりょうしょく)だとか、固形(こけい)ウィスキーなども入っていた。なにしろ予(あらかじ)め六人分の食糧が収(おさ)めてあったので、食糧ばかりは当分困らない。
 ただ困ったのが水だ。水は、ゆうべ庶務の老人が持ちこんでくれたが、一人一日分しか入れてない。
 携帯口糧は口の中で一杯になった。水を上から注ぎこまなければ、とても咽喉(のど)をとおらない。といって水は大事にしなければ、この先どんなことになるか分らない。六条は、目を白黒させながら、これも同様に目を白黒させて携帯の口糧(こうりょう)をぱくついているキンチャコフの顔を見やった。
「おう、雲だ。いよいよ下るぞ」
 ほんの僅かの間に、気球は密雲の中に包まれてしまった。見る見るうちに、服はびっしょり水玉をつけ、やがてそのうえを川のように流れおちる。二人の頭のうえからも、小さい滝がじゃあじゃあと落ちてくる。仰(あお)げども見えないけれど、気球に溜った水滴が集って、上からおちてくるのであろう。が、なにしろなにも見えない。ゴンドラの中まで、磨硝子(すりガラス)を隔(へだ)てて見ているような調子だ。キンチャコフは、このときとばかりに、顔のうえを流れおちる雨水(あまみず)を、長い舌でべろべろ嘗(な)めまわしている。
 密雲が下にある間や、その密雲の中をくぐりぬけている間は、そうでもなかったけれど、気球が密雲をすりぬけて、それを上に仰ぐようになったとたんに、俄(にわ)かに墜落感がつよく感ぜられた。眼下はひろびろとした一面の海原(うなばら)であった。そして海面までは案外近くて、ものの四五百メートルしかない。
「ああ、海だ」
「おお海だ。どこの海だろうか」
「この色は、日本海だ」
 六条のいったことは、間違いでなかった。
「日本海なら、船がたくさん通るだろう。墜落しても大丈夫助かる」
 とキンチャコフは、俄かに喜色をうかべていったが、なに思ったか、ポケットから例のピストルを出して六条につきつけた。
「なにをするんだ、キンチャコフ」
「いや、嚇(おどか)しではない、本気なんだ。船が見えたら、貴様は綱をひいて、気球の瓦斯(ガス)を放出して下におりて、助けられるつもりだろうが、それについて、ちと注文があるんだ」
「それはどういうことか。早くぬかせ」
「日本の船舶(せんぱく)が通っても下(お)りないことさ。つまり日本以外の船舶に救助されることをもって条件とするのさ。もちろん、貴様に異議はいわせないがね」
 と、キンチャコフはピストルの引金にしっかと指をかける。
「火の玉」少尉は、別に愕(おどろ)いた顔もしなかった。
「そんなものを握っているよりは、下を船が通りやしないかどうかが、生命びろいのためにはその方が肝腎(かんじん)のことだぜ」
「ふん、うかうかそんな手にのるもんかい。飛び道具の方が勝にきまってらあ」
 キンチャコフは、本性を露骨(ろこつ)にあらわして、「火の玉」少尉に擬(ぎ)したピストルをひっこめようとはしない。
(うるさい奴だ)
 と思ったが、六条は別にピストルがこっちを向いているのを気にするようでもなく、ゴンドラの中から朝霧のかかった海面をじっと見下(みおろ)していた。
 キンチャコフの方が、かえってふうっと溜息(ためいき)をついた。


   涯(はて)なき漂流


 不連続線という悪戯者(いたずらもの)がなかったら、二人のうちのどっちかは、間もなく日本海を航行中の汽船のうえに助けられたかもしれないのだ。そしてその滞空記録も、僅か十何時間で終ったかもしれないのだ。
 ところが、どこにひそんでいたのか、不連続線という悪戯者が漂流気球の正面にぶつかったからたまらない。
「おう、気球がまた上りだしたぞ」
「あっ、ちがいない。おお六条。あの黒い雲を見ろ」
「思いきって、ここで瓦斯(ガス)をぬいて海面へ下(お)りようではないか」
「なにを。下りるのはいやだ。わしは泳げないんだからな」
「俺が助けてやろう」
「いやだといったらいやだ。このピストルが眼にはいらないのか」
 キンチャコフはピストルをふりまわした。
「うーぬ、貴様。さっきからピストルをかまえて、それで俺を嚇(おど)かしつけているつもりなのか」
「なにを、来るか日本人。来てみろ、一発のもとに赤い花が胸から咲きでるだろう」
「莫迦野郎(ばかやろう)!」
 といったのと、轟然(ごうぜん)たる銃声が耳許にひびいたのと、ほとんど同時だった。
「うーむ、やったな」
 六条は、突然右胸部(きょうぶ)に焼火箸(やけひばし)をつきこまれたような疼痛(とうつう)を感じた。胸に手をやってみると、掌(てのひら)にベットリ血だ。とたんに彼ははげしく噎(む)せんだ。がっがっがっと、咽喉(のど)の奥から音をたてて飛びだしたのは、真赤な鮮血だった。
「畜生、やりやがったな」
「火の玉」少尉は重傷に屈せず、奮然(ふんぜん)と立ち上った。そしてキンチャコフがピストルを握り直そうとしたところを、すかさずとびこんで足蹴(あしげ)にした。ピストルが、ぽーんと上に跳(は)ね上ったと思ったら、ゴンドラの外にとびだした。
「あっ、失敗(しま)った!」
 と、キンチャコフがゴンドラの外に手を伸そうとしたとき、踏みこんだ「火の玉」少尉は、腹立ちまぎれに右手でぴしりとキンチャコフの脳天をなぐりつけた。その右手は、ただの手ではなかった。鋼鉄製の義手(ぎしゅ)だった。キンチャコフは獣のような悲鳴をあげると、へたへたとゴンドラの底にその身体を折り崩(くず)した。
「火の玉」少尉は、相手がうごかなくなったのを見ると、そのまま自分も瞠(どう)とその場に倒れた。しかしそれから十数分とたたないうちに、彼はまたむくむくと頭をもちあげた。そしてとうとうその場に起きあがって、また口から血を吐いた。
「うーむ」
 彼はぐっと歯を喰いしばった。そして胸のあたりをさすっていたが、やがて上衣(うわぎ)をまくって白い襯衣(シャツ)をひきだし、べりべりと破った。彼はその破った襯衣(シャツ)で、傷口をおさえて血止めにした。なお彼の眼と手とは動いて、そこにあったズックの布を引裂きにかかったが、ついに及ばず、そのズックの布を砲(かか)えたままその場にどっと転がった。

 それが「火の玉」少尉の、これまで連続していた記憶の切れ目であったのである。
 そのころ、人事不省(ふせい)の両人をのせた気球は、不連続線の中につき入って、はげしく翻弄(ほうろう)されていた。ものすごい上昇気流が、気球をひっぱりこんだから、たまらない。今の今まで下降一方だった気球は、あべこべにぐんぐん上昇をはじめた。一千メートル、二千メートルは、瞬間にとび越して、まるで地球の外にとんでいってしまうかのように、なおもぐんぐんと雲と雲の間を昇っていった。あたりは、岩窟(がんくつ)に入ったように真暗で、そして雹(ひょう)がとんでいた。折々ぴかりとはげしい電光が、密雲の間で光った。
 それからどの位経ったか、よく分らない。キンチャコフの方が先に気がついたらしく、そのころ六条は、気息奄々(きそくえんえん)としてゴンドラの底に横たわっていた。キンチャコフが六条を絞め殺そうとすれば、わけないことであったけれど、彼は別になんにもしなかった。それはどういうわけだかよく分らないが、キンチャコフは、もう再び六条を襲うのがいやになったのかもしれないし、或いはまだ鮮血を胸から顔から一杯に彩(いろど)ったすさまじい六条の姿に怖(お)じ気(け)をふるった結果かもしれなかった。もちろんキンチャコフも、意識だけがよみがえったというだけで、ゴンドラの底に身うごきもしないで転っていることは、六条の場合と大差(たいさ)なかったのである。
「うーむ、よく眠った」
 これが意識を回復した六条がいった最初の言葉だった。
 それからまたあと三時間ばかり、彼は昏々(こんこん)として眠った。
 その次に目覚めたとき、彼は本当に気がついたのであった。ゴンドラの中には飛びちった血の痕(あと)がもうくろずんでいた。ふしぎに生きているなという気持であった。彼は左手をのばして、あたりを幾度も幾度もさぐっていた。やがて硬い丸いものが二つ三つ、彼の指先にふれた。
 握りしめて、眼の前へもってきて開くと、それは固形ウィスキーであった。ああ天の助けだなと、そのとき彼は思ったことであった。
 彼は、貪(むさぼ)るように、その二つを喰べた。それはまるで霊薬(れいやく)のごとくに、彼を元気づけた。彼は思わず、最後の一つを口のところへ持っていきかけたが、急にそれをやめて、
「キンチャコフ!」
 とよんだ。
「……」
 キンチャコフの腕が、六条の腕の方につつーっと搦(から)むように近よってきたが、固形ウィスキーは、ぽとんと二人の間に落ちたままになって、それから数時間を、二人は昏々として眠った。
 それから一日二日たったと思うころ、六条もキンチャコフも、相変らずゴンドラの底に寝たままではあるけれど、どうやら口だけ利(き)けるようなところまで体力を回復した。それは六条が食糧の入っている戸棚を知っていて、それを引出しては分けあって喰べたからである。しかし困ったのは、水が一滴もなくなったことである。二人は、寝たままで、ときどき口を利いた。
「おい、キンチャ。もうどの辺を漂流しているかなあ」
「この気球は、最初北へいって、その翌日は西へ流れた。そしてもう四、五日にはなるだろう。すると、これはどうも外蒙(がいもう)かザバイカル区の辺まで流れて来ているよ」
「そんなになるかなあ。よし今日はなんとかして腕の力で起きあがる練習をして、一度ゴンドラの外をのぞいてみたいものだ。俺は、太平洋の真中あたりへ出ているような気がするが」
 そしてまた、二人は昏々(こんこん)と眠った。
 どれだけ眠ったか、飛行機の爆音がするので、二人は目が覚(さ)めた。気をつけていると、飛行機は、ゴンドラの周囲をぐるぐる廻っているらしい。ときどき、ゴンドラの縁(ふち)と気球との間に、飛行機のような形が見えるのだけれど、二人とも視力がよわっていて、はっきり見えない。
 そのうちに、サイレンらしいものが鳴るのが聞えた。
「気のせいか、××陣地のサイレンと同じ音色だが……」
「なにをいうんだ。あれはザバイカル管区の号笛(ごうてき)だ。わしはよく知っている」
 それから暫くして、二人はいきなり激しい衝撃をうけ、あっと思う間もなくゴンドラから放り出された。とたんに二人とも気を失ってしまったのは無理ではなかった。気球が下(くだ)りに下ってついにゴンドラが大地にぶつかったのだ。
 その翌日、「火の玉」少尉は病院のベッドで目を覚ました。おやと思って目をあげると、そこに田毎大尉や戸川中尉の顔があったので、びっくりした。それからの歓喜は、ここに綴(つづ)るまでもないが、彼ののっていた気球の下りたところは、不思議にも実に七日前に離陸したもとの××陣地であったのである。まるで嘘のような出来事であった。言う者も聞く者も、ともに不思議な出来事に、驚嘆(きょうたん)の連発であったが、これこそ不連続線のなせる悪戯(いたずら)であったとは、後に「火の玉」少尉が元気を回復してからの種明(たねあか)しであった。
 キンチャコフは、不運にも、ゴンドラが地上に激突したとき、当りどころが悪くて脳震蘯(のうしんとう)を起こし、そのままあの世へ逝(い)ってしまったそうである。




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