宇宙戦隊
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著者名:海野十三 

  作者より読者の皆さんへ

 この小説に出てくる物語は、今からだいぶん先のことだと思ってください。つまり未来小説であります。今から何年後のことであるか、それは皆さんの御想像にまかせます。しかしそれは百年も二百年も先のことではなく、あんがい近い未来に、このような事件がおこるのではないかと、私は考えています。
 それはそれとして、私たちは油断をしてはなりません。科学と技術とは、国防のために、また人類の幸福のために、新しい方面にむかって、どんどんきりひらいていかねばなりません。深い科学研究と、奇想天外な発明を一刻も早くつみあげていかないと、私たちも私たちの国も、とつぜんおそろしい危機をむかえなければならないでしょう。
 今日の航空戦隊は、やがて「宇宙戦隊」の時代にかわっていくことでしょう。数千メートルの高空を飛んで、敵機動部隊のま上にとびかかる航空戦隊、さらに成層圏(せいそうけん)を征服して、数時間で太平洋、大西洋を横ぎり、敵の首都に達し、大爆撃を行うことになるはずの、明日の航空戦隊――それをもっともっと強くりっぱなものにして、やがて「宇宙艦」をもって、大宇宙を制圧するまでに進めなければなりません。
 それはいったい誰がするのでしょうか。もちろんそれは、皆さんがた今日の日本少国民たちが、大人になったときにするのです。よわい民族ではできないことです。すぐれた科学技術を、つよい民族が使うのでなくては、とてもこのむずかしい仕事、この苦しい仕事をやりとげることはできません。
 しかしその仕事がむずかしく、また苦しいだけに、それに成功したときのうれしさは、今ちょっと考えただけでも愉快なことではありませんか。日本少国民の皆さん、どうぞしっかりやってください。

   奇妙な死骸(しがい)

 ここに一つの奇妙な死骸が、地底七百メートルの坑道の中で発見された。坑道というのは、鉱石をほりだすため、地の底へむけてほった穴の中のことだ。
 その奇妙な死骸は、たしかに金属と思われるもので作られたかたい鎧(よろい)で、全身を包んでいたのだ。
 しかしその姿は、じつにふしぎな、そしてめずらしいものであった。それを見つけた人々は、なんとかしてその死骸の姿に似たようなものを、これまでに見た雑誌の写真や、映画などから思い出そうとしたが、だめであった。まったく今までに、それに似かよったものが見あたらないのだ。
 だが、それが一つの死骸であることだけはわかった。首もあるし、胴も手足もあったから……。眼もちゃんと二つあるし、鼻もあった。口もあり、耳もあった。たしかに人間の持っている顔の道具はそろっていた。
 こういう風(ふう)にのべると、あたりまえの人間と、あまりかわらないように聞えるが、さてもっとくわしく全身を見て行くと、これもふしぎ、あれもへんだと、次々に奇妙なことが発見されるのであった。
 まずその死骸の色であるが、前にものべたとおり、たしかに金属で作ったと思われるかたい鎧で全身を包んでいたが、その色は、目のさめるような緑色であった。毎年五月になると、木々のこずえには若葉がしげり、それが太陽の光をうけてあざやかな緑色にかがやくが、あの若葉のような緑色であった。
 緑色の金属――そんなものは、あまり見かけたことがない。私たちの知っている金属といえば、たいてい銀色に光っているとか、さびて黒くなっているとか、朱色になっているのがふつうであった。この緑色の金属は、いったい何という金属であろうか。
 死骸のこの緑色にひきつけられて、じっと見つめていた人々は、やがてなんとなく嘔(は)き気をもよおしてきた。熱帯にすむ青いとかげのことを思い出したからであろう。
 しかし何よりも人々にふしぎな思いをいだかせたのは、その死骸の顔であった。顔というよりも、ふしぎな首といった方がよいかもしれない。
 三本の角(つの)が、頭の上に生(は)えていた。二本なら牛や鬼と同じであるが、それよりももう一本多い。そしてその角は前の方に二本生えていて、もう一本はすこし後にあった。後の角は半分ばかり土の中にめりこんでいた。
 その角が、牛の角や鬼の角とはちがい、奇妙な形をしていた。太鼓(たいこ)をうつ撥(ばち)という棒がある。その撥には、いろいろな種類があるが、棒のさきに丸い玉のついた撥があるのをごぞんじであろう。死骸の角は、じつにその撥のような形をしていて、角の先に丸い玉がついていた。太さは鉛筆をすこし太くしたくらいであった。
 その角は、糸をまいたように、横にしわがあった。そこに集っていた一人がおそるおそる、その角をつかんでひっぱってみた。すると、まるで鎖でもひっぱり出すように、角がずるずると長くのびてきて、一メートルほどになったので、その人は、きゃっと悲鳴をあげて手をはなした。
 すると毒蛇のようにのびた角は、ゴムがちぢまるように、するするぴちんとちぢんで、もとのように短くなった。
 目は、大きな懐中時計くらい大きく、そして厚いレンズをはめこんだように、ぎらぎら光っていた。目は二つあったが、あとになって、目は三つあることがわかった。二つの目は私たちと同じように、ならんで前についていたが、もう一つの目は、頭の後についていたのである。それはあとでこの死骸をひっくりかえしたときにわかったことだ。
 耳は大きく、二つあって、その形は、どことなくラッパに似ていた。
 鼻はひくくて長かった。
 口はたいへん大きく、耳の下までさけているように見え、厚ぼったい唇があった。その唇へ、一人の男が棒をさしこんであけてみたところ、たしかに中には口腔(こうくう)があったが、ふしぎなことに歯が一本もなかった。
 まったく、ふしぎな死骸であった。
 この死骸の身長は、はかってみると、一メートル八〇あった。ふつうの日本人より、よほど背が高いわけだ。
 この死骸のふしぎなことについては、まだまだのべることがあるが、それはだんだん後で書いていくことにするが、以上のべたところだけによっても、この死骸がじつに奇妙なものであることがおわかりになったであろう。
 では、この奇妙な死骸が、どうしてこんな地底ふかいところで発見されたか、そのころの話をこれからすこし書かねばならない。

   三人の鉱員

 この奇妙な死骸の発見者は、金田(かねだ)という鉱員と、川上(かわかみ)と山岸(やまぎし)という二人の少年鉱員であった。
 この三人は、梅雨(つゆ)ばれの空をあおぎながら、早朝この山へのぼってきた。
 この山は、この間までりっぱな坑道をもった鉱山であったが、とつぜん五百機に近い敵機の大編隊によって集中爆撃をうけ、そのためにこの鉱山はめちゃめちゃになった。
 坑道の入口はたたきつぶされ、変電所も動力室も事務所も、あとかたなく粉砕されてしまった。坑道を通って外へ鉱石をはこび出すためのケーブル吊下(つりさ)げ式の運搬器(うんぱんき)も、その鉄塔も、爆風のため吹きとんでしまい、今は切れ切れになった鋼索(こうさく)が、赤い土のあいだから、枯草のように顔を出しているだけであった。
 それよりも、すごい光景は、この鉱山の上に爆弾が集中されたため、山の形がすっかりかわってしまって、地獄谷のようなありさまになっていることだ。その間から、ほりかえされた坑道が、あっちにもこっちにも、ぽかんと口をあけ、あるところは噴火口のように見えていた。
 金田と、川上、山岸の三人は、この日このように破壊された坑道のどこからか地中にはいりこみ、この間まで働いていた第八十八鉱区が今どんなになっているか、それをよく見てしらべてくるのが仕事だった。それはかなり危険な仕事であったが、戦争の最中のことで、鉱区はできるだけ早くもとのようになおして、鉱石をほりだすようにしなければならないので、三人はえらばれて、この山へやってきたのである。それは敵機の大爆撃があってから、七日めのことだった。
 山へついた三人は、いつもはいりなれた坑道の入口がわからないので、まごついた。やむなくそれから山の頂上へのぼって、上からようすを見ることにしたが、三人は前にのべたように、地嶽谷のようなものすごい破壊の光景にぶつかって、たいへんおどろいた。しばらくはぼんやりとそこにたたずんで、口がきけなかったほどであった。
 が、金田はもう老人といわれる年齢になった老鉱員であるが、十四歳の時からずっとこの山で働いていたしっかり者だけに、二人の少年をはげまして、ついに地中へもぐりこんだのである。
 頭には、上から落ちてくる岩をふせぐための弾力のある帽子をしっかりかぶり、手にはするどい鉤(かぎ)のついた小さい手斧(ておの)と、強い燭光(しょっこう)の手提灯(てさげとう)をもち、腰には長い綱をさげていた。そのほかに、携帯用の強力な穴ほり道具を、三人が分解して肩にかついでいた。
 せっかくはいりこんだ坑道が、盲管のように行きどまりになっていたので、三人はいくども、もとへもどらなければならなかった。
 でも、そんなことをくりかえしているうちに、ようやくわりあい崩れ落ちているところのすくない坑道にもぐりこむことができて、三人はすこし明かるい心になった。
 それでもやっぱり、落磐(らくばん)の個所がつぎつぎに出てきた。三人は、酸水素爆発を応用した穴ほり道具を、なるべく使わないようにしながら進んだ。こうして進むうちにも、不安定な状態にある坑道は、いつ新しい落磐をおこすかもしれないので、そのときは強力な穴掘り道具を使う方針であった。
 およそ四時間もかかって、ようよう三人は第八十八鉱区の入口にたどりついた。
 たいへんうれしかった。
 しかしこれから先が問題である。働きなれたなつかしい鉱区の中は、いったいどんなになっているのであろうか。
 三人は、そこで持ってきた握飯(にぎりめし)をたべ、水筒から水をのんで元気をつけた。
 それからいよいよ中へ入っていったのである。
 ところが坑内は、意外にもきちんとしていた。もっともここはそうとう深いところでもあるし、地質もしっかりしているので、きちんとしていることがむしろあたりまえだった。だが地上のあのすごい光景にびっくりさせられた三人は、第八十八鉱区のこの無事なありさまが意外に感ぜられた。
 が、三人が、この鉱区の中央をつらぬく竪坑(たてこう)のところへ、横合から出たときには、思わずあっとさけんだ。
 いつもこの竪坑は暗かった。今は電灯もついておらず、さぞまっくらであろうと思っていたところ、その竪坑へ出ようとするところが、ぼうっと明かるかった。日の光が、どこからかさしこんでいる様子だ。それから三人はいそいで竪坑へ出た。そして上を見たのである。竪坑は明かるかった。上を見ると、盆(ぼん)くらいのひろさの空が見え、そこからつよく日がさしこんでいた。
「これはどういうわけだろう」
 と、金田はつぶやいた。
「竪坑はまっくらなはずですね。これは場所がちがうのではないでしょうか」
 と、川上少年鉱員がいった。
「いや、うちの竪坑にちがいない」
 金田はつよくいった。
「ああ、わかった。竪坑の上から爆弾が落ちて、天井(てんじょう)がぬけてしまったんだよ」
 と、山岸少年鉱員がさけんだ。
「そうだ。それにちがいない」と、金田がうなずいて、「それにしても、あんなに厚い山がふきとんで、竪坑の天井がなくなるなんて、すごい爆発だなあ」
 まったくものすごい爆撃をくらったものである。
 それから三人は、竪坑をおりることにした。前にはあった昇降機も見えなければ、それを吊っていた鋼索もないので、三人は持っていた綱をつなぎあわせ、それにすがって下へおりることにした。
 竪坑の底まで、そこからなお五十メートルばかりあった。
 先へ金田がおり、つづいて川上、山岸の順でおりた。
 竪坑の底も、やっぱり明かるかった。しかしそこには上から落ちてきた岩のかけらが、小さい山をなしていた。
 この小山は、一方がひっかいたように、岩のかけらがくずれて凹(へこ)んでいた。
 見ると、そこからくずれて、下へ向けてゆるやかな傾斜をもった坑道の中へ流れこんでいた。その下には最近ほりかけた一つの坑道があるのだ。そこは三人が働いていたところなので、どんなふうになっているだろうかと気にかかった。そこで三人はほかのしらべは後まわしにして、ざらざらすべる斜面を下へおりていったのである。
 奇妙な例の死骸は、その底において発見されたのである。大の字なりに上をむき、足を入口に近い方にし、頭は奥のほうに半分うずもれていたのである。
 三人がどんなにおどろいたかということは、三人とも気がついたときは地上を走っていたことによっても知られる。三人はいつどこをどうして地上にとび出したか、さっぱりおぼえがないといっている。

   謎(なぞ)をとく人

 息せききって、三人は本部へかけこんだ。そのとき本部につめあわしていた人々は、三人が気が変になったのではないかと思ったそうだ。
 顔色は死人のように青ざめて血の気がなく、両眼はかっとむいたままで、まばたきもしない。そしてしきりに口をぱくぱくするのであるが、さっぱり言葉が出ない。出るのは、動物のなき声に似たかすれた叫びだけであったという。
 それでも三人は、水をのませられたり、はげまされたりしてそれからしばらくして、気をとりなおしたのであった。そしてようやく三人が見た「地底の怪物」のことが、本部の人々に通じたのであった。
 その物がたりは、こんどは本部の人々の顔をまっ青(さお)にかえた。なかには、それはこわいこわいと思うあまり、見ちがえたのであろうという者もあったが、三人がくりかえしのべる話を聞いているうちに、その者もやっぱり顔色をかえる組へはいっていった。
 決死視察隊が編成された。
 ふだんから強いことをいっている連中が二十名、それに警官が二名くわわり、金田と二少年を案内にさせて、第八十八鉱区の底へおりていったのである。
 決死視察隊の一同が、そこで何を見たか、どんなにおどろいたかは、ここにあらためてのべるまでもあるまい。とにかく、その結果「地底の怪物」は「奇妙な緑色の死骸」とよばれ、本部へ報告され、さわぎはだんだんに大きくなっていった。
 さらに大勢の社員や、警官などが、第八十八鉱区の中におりていった。
 奇妙な死骸のまわりには、勇気のある人たちが、入れかわりたちかわり集ったり、散ったりした。
「何者ですかなあ、これは……」
「何者というよりも、これは人間だろうか」
「さあ、人間にはちがいないと思いますなあ、手足も首も胴もちゃんとそろっているのですからねえ」
「しかし角(つの)が生えていますよ。角の生えている人間がすんでいるなんて、私は聞いたことがない」
「そうだ、角が生えている。これは私たちが昔話で聞いた青鬼というものじゃないでしょうか」
「なにをいうんだ、ばかばかしい。今の世の中に青鬼なんかがすんでいるものですか。君は気がどうかしているよ」
「でも、そうとしか考えられないではないですか。それとも君は、なにかしっかりした考えがあるのですか」
「そういわれるとこまるが、とにかく私はね、この人間が着ている鎧(よろい)をぬいでみれば、早いところその正体がわかると思うんだがね」
「鎧ですって。鎧ですか、これは。しかし、きちんと体にあっていますよ」
「きちんと身体に合っている鎧は、今までにもないことはありませんよ。中世紀のヨーロッパの騎士(きし)は、これに似た鎧を着ていましたからねえ」
「中世紀のヨーロッパの騎士の話なんかしても、仕方がありませんよ。ここはアジアの日本なんだからねえ。それに今は中世紀ではありませんよ。それから何百年もたっている皇紀(こうき)二千六百十年ですからねえ」
 集った人々の話は、いつまでたっても尽きなかった。しかしだれひとりとして、この奇妙なる死骸の正体をいいあてた者はなかった。
 本部でもこまった。警察のほうでも、同じようにこまった。こまったあげく、ようやくきまったことは、東京へむけてこのことを急報し、だれかえらい学者に来てもらうことと、警視庁の捜査課の腕利(うでき)きの捜査官にも来てもらうことであった。
 さっそくこのことは、電話で東京へ通ぜられた。いきなりこの変な報告をうけた東京がわでは、やっぱり変な人が、電話口に出ていると思ったそうである。くどくどといくども説明をくりかえして、やっとわかってもらうことができた。
 とにかくそれぞれのむきへも連絡して、できるだけ早く、東京から調査官をおくるから安心するように。それから奇妙な死骸のある現場はなるべくそのままにして、手をふれないようにせよと、東京がわから注意があった。
 このような手配がすんで、鉱山の人々も、土地の警察も、ほっとひと安心した。
 そこで人々の気持も、前よりはいくぶんゆっくりして来た。そのとき、ある人がきゅうに大きな声を出したので、まわりにいた人たちは、また何ごとが起ったかとおどろいた。
「そうだ。本社の研究所へ来ている理学士の帆村荘六(ほむらそうろく)氏にこれを見せるのがいい。あの人なら僕たちよりずっと物知りだから、きっと、もっとはっきりしたことが、わかるかもしれない」
「ああ、そうか。帆村理学士という名探偵が、うちの会社へ来ていたね。あの人は前に科学探偵をやっていたというから、これはいいかもしれない。もっと早く気がつけば、こんなにあわてるのではなかったのに……」
 といっているとき、人々の中へぬっとはいって来た長身の人物があった。眼鏡(めがね)をかけ、顔色のあさぐろい、そして大きい唇をもった人物であった。
「ああ、みなさん。あの奇妙な死骸が、どうしてこんな深い地底にあるかということが、はっきりわかりましたよ」
 彼は太い音楽的な声で、そういった。
 あつまっている人々は、声のするほうをふりむいた。
「おお、帆村さんだ。帆村さん、いつのまにここへ来られたのですか」
 と、一同はおどろいて、帆村の顔をうちながめた。
 さてこの帆村理学士は、奇妙な死骸の謎について、いったいどんな科学的解決をあたえたのであろうか。かれはもういつのまにやら、しらべを始めていたのだ。

   奇抜(きばつ)な推理

「いやあ、どうも少し早すぎましたが、あんまりふしぎな話を聞いたものですからね……」
 と理学士帆村荘六は、ちょっときまりが悪いか、あとの言葉を笑いにまぎらせた。
「一向(いっこう)かまいませんよ。誰でもいいから、こんな気味のわるい事件は早く解決してもらいたいと思いますよ。帆村君は、どういう風に考えているのですか」
 そういったのは、この鉱山事務所の次長で、若月(わかつき)さんという技師だった。この人は、年齢は若いが、技術にも明かるく、そして、ものわかりもよく、鉱員たちの信望をあつめている人で、この鉱山にはなくてはならない人物だった。
「僕の考えですか……」
 帆村と若月次長のまわりに、皆が集ってきた。これからどんな話を二人が始めるのか、それを聞き落すまいというのだった。
「まだたいした発見をしているわけではありませんがね、この怪物がどうしてこんな地底にころがっているかということだけは、わかったように思うのです」
 そういって帆村は、次長の顔を見た。
「ほう、それはぜひ聞かせて下さい。私にはまったく見当がつかない」
 次長は帆村の返事が待遠しくてたまらないという風に見えた。すると帆村は右手をあげて、頭の上を指さした。
「空から落ちて来たのです」
「えっ、空から……」
 まわりに集っていた人々は、すぐには帆村の言葉を信じかねた。七百メートルの地底にころがっている死骸が、空から落ちてきたと考えるのは、あまりに奇抜すぎる。
「そうです。空から落ちてきたのです。さっき見ましたが、竪坑(たてこう)の天井が落ちていますね。この怪物は、竪坑の中をまっさかさまに落ちてきて、まずこの第八十八鉱区の地底にぶつかり、その勢(いきおい)で斜面を滑(すべ)ってこの掘りかけの坑道の奥にぶつかって、ようやく停(とま)ったのです」
「そういうことがあるでしょうか」と、次長はにわかに信じられない顔つきであった。
「では証拠(しょうこ)を見てもらいましょう。誰にもよくわかることなんです。ほら、この斜面に幾本も筋がついているでしょう。これは怪物が滑ったときについたものです。この筋を、斜面について下の方へたどって行きましょう」
 帆村は、懐中電灯で斜面を照らしながら先へ立った。
「ほら、こういう具合につづいていますよ。そしてここまでつづいて停っている。ここは第八十八鉱区の竪坑の底です。ほらほら、ここに土をけずったようなところがある。初めこの怪物はここへぶつかったのです。それから今たどってきた筋をつけて、あそこへ滑りこんで停ったのです。これなら誰にもよくわかるでしょう」
「なるほどなあ」と、次長も、まわりにいた人も、声を合わせて叫んだのである。たしかに、帆村のいうことに理窟があった。今まで自分たちは幾度となくそれと同じ場所を見ていながら、帆村が探りだした事実には気がつかなかったのである。なんという頭の悪いことだろうかと、顔が赤くなったが、よく考えてみると、それは帆村なればこそ、こうした謎をとく力があるので、誰にでもできることではないのである。
「すると上から落ちてきたことはわかったとして、なぜこんな怪物が落ちてきたのですかね」
 次長は、背の高い帆村の顔を下から見上げるようにして聞いた。
「はははは、それがわかれば、このふしぎな事件の謎は立ちどころに解(と)けてしまうのですよ。だが、それを解くことは容易なことではない。もっと深く調べてみなければなりません」
 帆村は、むずかしい顔になっていった。
「わかった。この間敵機が五百何機も来て、大爆撃をやりましたね。あのとき竪坑の天井もうちぬかれたのです。あの爆撃のとき、敵機に乗っていた搭乗員が、機上からふり落されて、ここへ落ちこんだのではないでしょうか」
 そういったのは少年鉱員の山岸だった。
「それはいい説明だ。帆村君、どうですか」と、次長は山岸に賛成していった。
「ちがいますよ。あの爆撃のあった翌々日に、大雨が降ったでしょう。この怪物が落ちてきたのは、あの大雨のあとのことです」
「それはなぜですか」
「やはり、よくこのあたりの土を見ればわかります。大雨のあと、このあたりに水がたまり、それから後に水は地中へ吸いこまれたのです。そのあとでこの怪物は上から落ちてきたのです。その証拠には、怪物の身体は、雨後の軟(やわらか)い土を上から押しています。よく見てごらんなさい」
 帆村のいうとおりだった。皆は今さら帆村の推理の力の鋭いのに驚いて、彼を見直した。帆村は、べつに得意のようではなかった。彼はそこで吐息(といき)をつくと、
「とにかくこれは世界始ってこのかた、一番むずかしい事件ですぞ。そして非常に恐しい事件の前触(まえぶれ)のような気がします。悪くいけば、地球人類の上に、いまだ考えたことのないほどの、禍(わざわい)が落ちてくるかもしれない。皆急いで力を合わせ、一生懸命にやらねば、取返しのつかないことになるように思う。皆さんも重大なる覚悟をしていてくださいよ」
 といって、帆村はすたすたそこを立ち去ろうとするのであった。次長が驚いて、帆村をよびとめた。しかし帆村はいった。
「東京からえらい係官がみえて、その怪物を調べるようになったら、私を呼んでください。しかし今いっておきますが、どんなことがあっても、この怪物をここから出してはいけません。地上へ運んではなりませんよ」
 謎の言葉を残して、帆村は出ていった。

   七人組の博士

 東京からは係官が来るかわりに有名な特別刑事調査隊の七人組がやってきた。
 この七人組は、刑事事件に長い間の経験を持った、老弁護士の集団から選び出された人たちで、当局からも十分信頼されて居り、係官と同じ検察権が特に与えられていた。
 この七人組は、「奇妙な死骸」事件の話を聞くと、特に志願して、この事件の解決にあたることになったのである。当局としては、戦時下非常にいそがしい折柄でもあるので、七人組の申し出をたいへん喜び、それに事件をまかせることにしたのである。
 この特別刑事調査隊長を室戸博士(むろとはくし)といい、残りの六人も全部博士であった。殊(こと)に甲斐(かい)博士という人は、法学博士と医学博士との、二つの肩書を持っている人で、法医学には特にくわしい知識をもち、一行の中で一番年齢が若かった。それでも氏は、五十五歳であった。
 このようにすぐれた博士組が、この鉱山へ来てくれたので、事務所はもちろん、東京本社でも大喜びだったし、この怪事件にふるえあがっていた土地の人々も、大安心をしたのであった。
 調査隊の取調べが始った。さすがにその道の老練家たちだけあって、やることがきびきびしていた。
 坑道のあらゆる底が調べあげられた。そして石膏(せっこう)で模型が作りあげられた。その結果、この怪物は土中から出てきたのではないことがあきらかとなった。
 現場の写真が何十枚となくうつされた。竪坑の寸法が測られた。径が六メートルあった。
 竪坑のあらゆる壁が調べられた。そして三箇所において、この怪物がぶつかったと思われる痕(あと)が発見された。怪物が竪坑を下へと落ちてきたことは、いよいよあきらかとなった。
 怪物の死骸は、現場で立体写真におさめられ、実物と寸分ちがわない模型を作りあげる仕事が進められた。それからこの怪物のからだに附着(ふちゃく)していた土が小さく区分されて、いちいち別の容器におさめられた。
 坑道内の土も、全部集められた。
 七人の博士について来た助手たちは、ほとんど一睡もとらないで、この仕事を続けた。この怪物の頭部の後に、第三の眼らしきものがついているのが発見されたのも、この時であった。身体の要所要所の寸法も、くわしく測って記録された。
 あらゆる記録が、これで揃った。隊長の室戸博士は、この報告を受取って、たいへん満足した。
「それでは、あとを甲斐博士にお願いするかな」
 と、隊長は、甲斐博士の方に目くばせをした。
「はい。ようやくお許しが出ましたよ。それでは私が解剖をお引受けいたしましょう」
 甲斐博士は、にっこりと笑った。
 解剖が最後に残されたのであった。
 きれいに水で洗われた怪物の死骸が、白い担架(たんか)の上から、解剖台の上にのせられた。
「おい。甲斐博士。ここで執刀(しっとう)するのかね」と、隊長が聞いた。
「はい。ここの方がよろしゅうございます。静かでもありますし、このとおり照明も十分できていますから……」と、甲斐博士が答えた。
「地上へ持って行こうじゃないか。解剖している途中で、臭気が発散すると、ここでは困るぞ」
「賛成ですな。くさくて息がつまるかもしれない。すでにこの死骸は十数日たっていますからな」と、隊員の一人がいった。
「では、そうしましょう」
 甲斐博士は、すなおに隊長室戸博士の説に従った。怪物の死骸は、地上へ運ばれることとなった。それを聞いていた次長は、はっと顔色を変えた。今日はあいにく帆村荘六がこの席にいないが、彼はこの怪物をここから出すことをかたく戒(いまし)めて行ったのだ。そこで次長は前へ進み出て、そのことを注意した。
 すると室戸博士は首を左右にふった。
「根拠がないね、この死骸を動かしてはいかんというのは……。われわれの診断によると、これはもう死んでいるのだ。心臓の音を顕微音聴診器できいても、全く無音だ。死んでしまっているものを、どこへ持っていこうと心配はないじゃないか」
 この七人組の博士たちは、なかなか偉い人たちの集りで、少しも欠点がなかったが、しいて欠点をあげると、少しばかり頑固(がんこ)なところがあった。他人の言うことを、あまり取上げないのであった。それは刑事事件に対する自分たちの永い経験と、強い自信からきているようであった。次長はもう黙っているほかなかった。
 怪物の死骸は、滑車(かっしゃ)にとおした長い綱によって、簡単に地上へ運ばれた。そこにはすでに、解剖に便利なように、天幕(テント)が張られてあった。
 怪物の死骸は、白い解剖台の上に載(の)せられた。そのころ地底へ持っていってあった甲斐博士の解剖用道具が、つぎつぎに竪坑の下からあがって来た。
 甲斐博士はすっかり白装束(しろしょうぞく)の支度をしていた。背中には、いつでも役に立つようにと、防毒面がくくりつけてあった。用意はすっかり整ったのだ。
 甲斐博士が、電気メスを右手に握って、怪物の死骸に近づいた。その時だった。死骸をおさえつけていた助手の一人が、
「あっ」と叫ぶと、
「先生、この死骸は生きているのじゃないでしょうか。心臓の鼓動らしいものを感じます」と、早口でいった。
「ばかなことをいうな。私は何度も聴診したが、心臓の鼓動なんて一度も聞えなかった。それに、ほら、こんなに冷(ひ)え切っている……」
 と、甲斐博士は、怪物の死骸に手をふれて助手を叱りつけようとしたが、そのとき博士の顔色は、なぜかさっと変って、紙のように白くなった。

   消え行く怪物

 甲斐博士が、恐しそうに身を後に引くのと、怪物の死骸がぴょんと跳(は)ね上がるのとが同時であった。
「あっ」
 解剖に立会っていた者で、青くならない者はなかった。
 怪物の死骸――いや、死んだものとばかり思っていた、その怪物の身体は、解剖台の上に突立った。あまりのすごさに、人々は思わず下にひれ伏した。
 と、怪物の身体は、台の上で独楽(こま)のようにきりきりと舞いだした。それが見るまに台から上にとびあがったと思うと、天幕(テント)を頭でつきあげた。ばりばりぷつんと、天幕の紐(ひも)が切れる音が聞えた。すると天幕がばさりと下に崩れ落ち、次にその天幕は地上を滑って走りだした。その後で、解剖台が大きな音をたててひっくりかえったので、人々はびっくりして目をとじた。
 やがて人々が目を開いたときには、天幕はもう百メートルも向こうの山腹を走っていくのが見えた。なんといっていいか、その奇怪な光景は、文章にも絵にも書きあらわせない。
「追え。あれを追え」
 そう叫んだのは、隊長の室戸博士の声だった。若い助手たちは、隊長の声に、ようやく我にかえった。そして青い顔のままで、逃げて行く天幕のあとを追いかけた。
「追いつけないようだったら、ピストルで撃ってもいいぞ」
 隊長室戸博士は、金切声(かなきりごえ)で、助手たちの後から叫んだ。
 駆けだす天幕の足は早かった。助手たちは息切れがしてきた。そして天幕との距離はだんだん大きくなっていく。
「撃とう。仕方がない。撃っちまえ」
「よし」
 助手は立木に身体をもたせて、逃げる天幕めがけて、どかんどかんとピストルをぶっ放した。銃声はものすごく木霊(こだま)した。だが天幕は、あいかわらず走りつづけるのであった。
「あれっ、たしかに命中したはずだが……」
 天幕はそれでもなお走った。そして山腹の途中の坂を下った。助手はピストルを撃つのをやめて、また追いかけた。
 その坂が見下せるところまで、時間でいってわずか五分ばかりのところだった。そこへまっ先にのぼりついたのは、助手の児玉という法学士だった。彼は坂の下に、天幕が立ち停っているのを発見した。それを見たとき、彼の足はすくんで動かなくなった。怪しい天幕が、彼に戦(たたかい)をいどんでいるように見えたからである。
 ようやく後から来た助手たちも追いついた。そこで若い連中は勢(いきおい)をもりかえし、
「それ行け。今のうちだ」
 と、大勢で突撃して行った。
 天幕は、一本の松の木にひっかかり、風に吹かれてゆらゆら動いていた。だが、目ざす緑色の怪物の姿は、どこにもなかった。
「どこへ行った。あの青とかげの化物は……」
 皆はそこら中を探しまわった。しかし緑色の怪物は、どこにも見えなかった。
「見えないね。どこへ行ったろう」
 ふしぎなことである。たしかに天幕をかぶったままで走って、ここまで来たに違いないのに……。
「あっ、あそこだ。あそこにいる」
 児玉法学士が、するどい声で叫んで、右手を前方へのばした。
「えっ、いたか。どこだ」
「あの岩の上だ。あっ、見えなくなった。ふしぎだなあ」
「ええっ、ほんとうか。どこだい」
 児玉法学士の指さす方に、たしかに裸岩が一つあった。しかし怪物の姿は見えなかった。後からかけつけた連中は、児玉がほんとうに岩の上に怪物の姿を見たのかどうかを疑って、質問の矢をあびせかけた。
 これにたいして児玉は、すこし腹を立てているらしく、頬をふくらませて答えた。
「……怪物めは、あの岩の上に、立ち上ったのだ。さっき解剖台の上で立ち上ったのと同じだ。それから身体を軸としてぐるぐる廻(まわ)りだした。すると怪物の身体がふわっと宙に浮いて、足が岩の上を放れた。竹蜻蛉(たけとんぼ)のようにね。とたんに怪物の姿は見えなくなったのだ。それで僕のいうことはおしまいだ」
「へえっ、ほんとうなら、ふしぎという外はない」
「君たちは、僕のいうことを信用しないのかね」
「いや、そういうわけじゃないが、とにかく君だけしか見ていないのでね」
 緑色の怪物を最後に見た者は、この児玉法学士だけであった。それ以後には、誰も見た者がなかった。そして緑色の怪物にたいする手がかりは、これでまったく終りとなった。
 いったいあの怪物はどこへ行ってしまったのであろうか。そして、どうしたのであろうか。
 失望したのは特別刑事調査隊の七人組の博士たちや若い助手達だけではなかった。集ってきた鉱山の社員や村の人々も、皆失望してしまった。
「やっぱり帆村荘六が言った注意を守っていた方がよかったね。そうすれば、あの怪物は逃げられなかったんだ」
「たしかに、そうだと思う。惜しいことをしたな。しかしあの怪物は、死んだふりをしていたのだろうか」
「そこがわからないのだ。解剖台の上から飛び出す前には、心臓は動いているような音が聞えたそうだが、怪物の身体は、やはり氷のように冷えていたそうだよ」
「それはへんだねえ。生きかえったものなら、体温が上って温(あたたか)くなるはずだ」
「そこが妖怪変化(ようかいへんげ)だ。あとで我々に祟(たた)りをしなければいいが」
 と、鉱山事務所の人々がかたまって噂(うわさ)をしていると、後から別の声がした。
「いや、あれは妖怪変化の類(たぐい)ではない。たしかに生ある者だ」
 この声に、皆はびっくりして、後をふりむいた。するとそこには帆村荘六が立っていた。
「ああ帆村君か。君は今まで何をしていた……。しかし君の注意はあたっていたね」
「そうだ。不幸にして、私の予言はあたった。坑道の底では死んでいた怪物が、地上に出ると生きかえったのだ。あれは宇宙線を食って生きている奴にちがいない」
 帆村は謎のような言葉を吐いた。これでみると、帆村だけは、あの怪物の正体について、いくらか心当りがあるらしい。いったいあれは何者だろうか。そして何をしようとしているのだろうか。

   宇宙線の威力(いりょく)

 青いとかげの化物みたいな怪死骸に逃げられ、皆がっかりだった。はるばる東京からやってきた特別刑事調査隊の七人組も、どうやら面目をつぶしてしまったかたちで、室戸博士以下くやしがること一通りではなかった。
 この上、現場にうろうろして、怪物のとび去った空をながめていても仕方がないので、鉱山の若月次長のすすめるままに、一同は鉱山事務所へ行って休息することとなった。
 青とかげの怪物がにげてしまったことは、すでに事務所にもひろがっていた。皆おちつきを失って、あっちに一かたまり、こっちに一かたまりとなり、今入ってきた七人組を横目でにらみながら、怪物の噂に花がさいている。
「あの七人組の先生がたも、こんどはすっかり手を焼いたらしいね」
「しかし、折角(せっかく)こっちがつかまえておいたものを、むざむざ逃がすとは、なっていない」
「それよりも、僕はあの怪物がきっとこれから禍(わざわい)をなすと思うね。この鉱山に働いている者は気をつけなければならない」
「あんな七人組なんかよばないで、帆村さんにまかせておけばよかったんだ」
「そうだとも、帆村荘六のいうことの方が、はるかにしっかりしている。彼は『あの怪物は宇宙線を食って生きている奴だ』と、謎のような言葉をはいたが、宇宙線てなんだろうね。食えるものかしらん」
 誰もそれについて、はっきり答えられる者がなかった。
「宇宙線というと、光線の一種かね」
「そうじゃないだろう。まさか光線を食う奴はいないだろう」
「それではいよいよわけが分からない」そういっているとき、帆村荘六が、例のとおり青白い顔をして、部屋へはいってきた。彼は皆につかまってしまった。そして宇宙線が食えるかどうかについて、矢のような質問をうけたのであった。
「宇宙線というのは、X線や、ラジウムなどの出す放射線よりも、もっとつよい放射線のことだ」と、帆村は、皆にかこまれて説明を始めた。
「X線が人間の体をつきとおるのは、誰でも知っている。胸部をX線写真にうつして、肺に病気のところがあるかどうかをしらべることはご存じですね。宇宙線はX線よりももっと強い力で通りぬける。X線の約三千倍の力があるのです。X線はクーリッジ管から出るものだが、宇宙線は何から出てくるか。これは今のところ謎のまま残されています。しかし地球以外のはるかの天空からやってくる放射線であることだけは分かっています。だから宇宙線といわれるのです。その宇宙線は、まるで機関銃弾のように、いつもわれわれ人間の体をつきぬけている。しかしわれわれは、宇宙線にさしとおされていることに、気がつかないのです。この宇宙線は、空高くのぼっていくほど数がふえます。それから宇宙線は、更に大きな力を引出す働きをします。火薬を入れた函(はこ)にマッチで火をつけると大爆発をしますが、宇宙線はこの場合のマッチのような役目をするのです。この働きに、僕たちは注意していなければなりません」
 聞いていた皆は、何だか急に寒気がしてきたように感じた。
「ふかい地の底には、宇宙線はとどきません。そこに暮していると、宇宙線につきさされないですみます。そうなると、人間――いや生物はどんな発育をするでしょうか。またそれと反対に、人間が成層圏機や宇宙艇にのり、地球を後にして、天空はるかに飛び上っていくときには、ますます強いたくさんの宇宙線のために体をさしとおされるわけですから、そんなときには体にどんな変化をうけるか、これも興味ある問題ですねえ」
「その問題はどうなるのかね」
 と、若月次長がきいた。すると帆村は首を左右にふって、
「まだ分かっていません。今後の研究にまつしかありません」
「宇宙線というやつは、気味のわるいものだな」
「そういろいろと気味のわるいものがふえては困るねえ。あの青いとかげのような怪物といい、宇宙線といい……」
「帆村さん、あの青い怪物と宇宙線との間には、どんな関係があるのですか」
 と、また一人がたずねた。
「さあ、そのことですがね。あの怪物は宇宙線を食って生きている奴じゃないかと思うのです。つまり地底七百メートルの坑道の底には、宇宙線がとどかない。そのとき彼奴(あいつ)は死んでいた。それを地上へもってあがると生きかえった。地上には宇宙線がどんどん降っているのです。ちょうど川から岸にはねあがって、死にそうになっていた鯉(こい)を、再び川の中に入れてやると、元気になって泳ぎ出すようなものです」
「なるほど、それであの怪物は生きかえったのですか」
「そうだろうと思うのですよ。これは想像です。たしかにそうであるといい切るためには、われわれは、もっとりっぱな証拠を探し出さねばなりません」
「すると、帆村君は、その証拠をまだ探しあてていないのかね」
「そうです。今一生けんめい探しているのです」
「しかし、そんな証拠は、見つからない方がいいね」
「えっ、なぜですか」
「だって、そうじゃないか。その証拠が見つかれば、僕たちは今まで知らなかったそういうものすごい怪物と、おつきあいしなければならなくなる。それは思っただけでも、心臓がどきどきしてくるよ」
「しかし、ねえ次長さん。あの青い怪物とのおつきあいは、あの坑道の底で死骸を発見したときから、もう既に始っているのですよ」
「えっ、おどかさないでくれ」
「おどかすわけではありませんが、あの怪物の方が進んでわれわれ地球人類にたいし、つきあいを求めてきているのですよ」
 帆村の言葉に、聞いていた一同は、ぶるぶるとなって、たがいの顔を見合わせた。
「これからあんな怪物とつきあうのはたまらないな。なにしろ相手の方がすぐれているんだからね。うかうかすると、僕たちはいつ殺されてしまうか分からない。帆村君、一体どうすればいいんだ、今後の処置は……」
 若月次長は帆村の腕をつかまえゆすぶった。帆村はしばらく黙っていた。そして遂にこういった。
「戦争の準備をすることです。宇宙戦争の準備をね」
 聞いている者は、おどろいた。
「えっ、宇宙戦争。そんな夢みたいなことが始るとは思われない」
「その準備は一刻も早く始めるのがいいのです」と、帆村は相手の言葉にかまわず、強くいい切った。
「まあ見ていてごらんなさい。これから先、次から次へと奇妙な出来事が起るですよ。そうなれば、僕の今いったことが、思いあたるでしょう」

   村道の奇現象(きげんしょう)

 帆村荘六がいったことは、あまりにも突飛(とっぴ)すぎるという評判だった。あんなことをいい出したので、それまでこの鉱山でかなり信用されていた彼も、俄(にわ)かに評判がおちた。しかし、帆村は別にそれを気にする風にも見えず、皆に別れると、ただひとりで、例の坑道の底へはいりこんでしまった。
 ところが、帆村の予言したことが、間もなく事実となってあらわれた。これには、鉱山の人々も、びっくりしてしまった。その事実とは、一体何事であったろうか。それは隣村で起ったことであった。
 隣村を白根(しらね)村という。この白根村は、雑穀(ざっこく)のできる農村であった。
 事件が鉱山事務所に伝わったのは、その夜のことであった。が、その事件が起ったのは、もっと早い時刻だった。正しくいうと、その日の午前十一時ごろのことだった。
 白根駅から一本の村道が、山の麓(ふもと)へ向かってのびていた。両側は、ひろびろとした芋畠であった。この村道は畠よりもすこしばかり高くなっていた。
 喜作(きさく)というお百姓さんの一家五人が、そのとき山の麓の方から、この村道を下りてきた。農家の人たちは、いつも午前十一時ごろには、昼飯をたべることになっている。そしてそれは、畠で弁当を開くのが例であった。ところがこの喜作一家は、その日のお昼すぎに、娘の縁談について客が来ることになっていたので、その時刻に畠の用事をすまして、家の方へ戻ってきたのであった。
 すると、ちょうど村長さんの畠の井戸があるところまで来たとき、五人の先頭に立って歩いていた喜作が、へんな声を出して、道の上に立ちどまった。
「あれえ、これはどうしたんだろう」
 喜作の家内のお浜(はま)は、二三歩うしろにいたが、喜作の声におどろいて駆けつけた。喜作は、顔をまっ赤にして、よたよた足踏みをしている。お浜は、喜作が中風(ちゅうぶう)になって、これから前にたおれるところだと思った。
「どうしたんだね、お前さん。しっかりおしよ」と、お浜は胸がわくわく、目がくらみそうなのをこらえて、亭主の前にまわった。いや、前にまわろうとしたのだ。
「あ、いたいっ」
 お浜は急に体を引いた。誰かに前からつきとばされたように感じたからだ。だが、お浜の前には、誰もいなかった。喜作が自分をつきとばしたのだろうかと思ったが、そうでもないらしい。喜作はあいかわらず、すこし前のめりになって、よたよたと足踏みをつづけている。お浜は狐に化かされたような気がした。そこでお浜は、もう一度喜作の前へまわろうとした。
「あれっ、まただよ」
 お浜は、前からつきとばされたように感じた。しかしいくら目をこすってみても、自分をつきとばした者の姿は見えない。お浜は、自分で気が変になったのだと思った。そのうちに、三人の娘が追いついた。お父さんとお母さんは、なにをしているのだろうと、ふしぎに思いながら近づいて行くと、急に足が前に進まなくなった。
「あれえ、どうしたことじゃろ」
「前へ体が進まんがのう」
「わしもそうだよ。狐が化かしとるんじゃろか。早う眉毛(まゆげ)につばをつけてみよ」
 こんどは三人の娘がさわぎだした。
 こうして五人の者は、道の真中に一列に並んだまま、一歩も前へ進まず、うろたえていた。それは奇妙な光景だった。知らない人が見れば、たしかにこの五人の家族は、狐に化かされているとしか見えなかった。しかし狐が化かすなどという、ばかばかしいことがあるものではない。
 ちょうどこの時、列車を下りて、駅から出て来た人たちが五六人、喜作の一家とは反対の方向から、なにも知らず、この村道を歩いて行った。
 一番前を歩いていた農業会の田中さんという中年の人が、喜作たちのふしぎな挙動に気がついた。一町ほど向こうであるが、道はまっ直(すぐ)であるので、よく見える。
「あれ。喜作どんたちは何をしとるのかい。教練をば、しとるのじゃろか」
 一列横隊で五人が足踏みをしている有様は、なるほど教練をしているように見られないこともなかった。
 が、その田中さんも、それから十歩と歩かないうちに、喜作たちと同じように、道の真中で足をばたばた始めてしまった。
「ああれ。なんちゅうことじゃ、体が前へ進まんが……」
 田中さんはがんばり屋であったから、一生けんめいがんばって前へ進もうと努力した。しかしそれはだめであった。何者ともしれず、前から自分を押しかえしている者があった。もちろんその者の姿は見えない。前へ進もうと力を入れれば入れるほど、強く押しかえされる。顔がおしつぶされて、呼吸をするのが苦しくなるし、胸板が今にも折れそうだ。脚は膝(ひざ)から下がよく動くが、それから上は塀(へい)につきあたっているようだ。
 この田中さんのあとに続いて来たのは、三人の工業学校の生徒、それからすこしおくれて、海軍の若い士官が一人と、兵曹長が一人。この二人もやがて、目に見えない力のために、前進することができなくなった。この六人も一列横隊でうんうんいっているし、それから半町ほど向こうには喜作の一家五人がこっちを向いてうんうんいっている。まことにふしぎな光景であった。
 皆初めはさわぎ、あとは恐怖のために口がきけなくなってしまうのだった。
 ただ二人の海軍さんだけは、さすがにしっかりしていて、そうあわてもせず、互(たがい)の顔を見合わせている。

   透明壁(とうめいへき)か

「竜造寺(りゅうぞうじ)兵曹長。これはへんだな」と、山岸中尉がいった。この若い士官は、鉱山の山岸少年の兄だった。
「山岸中尉も、歩けなくなりましたか。どうしたんでしょうか」
 竜造寺兵曹長は、陽やけした黒い顔の中から、大きな目をむく。
「へんだなあ。まるで飛行機で急上昇飛行を始めると、G(万有引力のこと)が下向きにかかるが、あれと同じようだな」
「そうですなあ。あれとよく似ていますねえ。おや、前へ出ようとすると、Gが強くなりますよ」
「そうか。なるほど、その通りだ。どうしたんだろう。おや、前に何かあるぞ。手にさわるものがある。柔らかいものだ。しかしさっぱり目に見えない」
 山岸中尉はついに手さぐりで、怪物の存在を見つけた。何物ともしれず、ぐにゃりとしたものが手にさわるのであるが、それはさっぱり見えない。透(す)かして見ても、つかんでみても、何も見えないのであった。それは透明な柔らかい壁――、ふしぎなものであるが、そうとでも思うしかなかった。
 このふしぎな透明壁が、もし次の日までここに残っていたら、帆村荘六もそこへ出かけて、きっと、くわしく調べたことだろうと思う。ところが、それから間もなく――時間にして三四分後に、透明壁は急になくなってしまった。そして喜作たちも、また反対の側にいた田中さんや山岸中尉たちも、あたり前に歩きだすことができたのであった。そしてこの事件は、ふしぎな話として、この白根村にひろがっていった。それはやがて鉱山事務所へも伝わったのである。
「昨日(きのう)白根村でなあ、まっ昼間、十二三人の衆が揃いも揃って狐に化かされてなあ、その中には海軍さんまでも居なすったそうじゃが、こんこんさんもたちのわるいわるさをなさるものじゃ。この頃、ちっとも油揚(あぶらあげ)をあげなんだからじゃろ……」
 という具合に、この奇怪な噂は、附近の村々へひろがっていったのである。
 翌朝、鉱山事務所の中にある建物の中で、目をさました例の特別刑事調査隊の七人組にも、この奇怪な話が伝わった。
「どういうわけですかなあ」
 と、鉱山の人々からたずねられたが、七人組の博士たちは、ただ苦笑するだけで、何の返事もしなかった。
 この話は、帆村荘六の耳にもはいった。彼がそれを聞いたのは、正午のすこし前であった。その日彼は早朝から研究室にこもったきりであって、お昼の食事のために外に出たとき、始めてこの奇怪な話を耳にしたのであった。
 帆村はこの話を聞くと、さっと顔色をかえた。それから彼は若月次長を探し出すと、彼を引張(ひっぱ)って行くようにして、室戸博士の一行を訪ねたのであった。
「白根村で村道を歩いていた十二三人の者が、急に歩けなくなった話をお聞きになりましたか」と、帆村は室戸博士をはじめ、七人組の顔をずらりと見まわしていった。
「ああ聞いたよ。どうもおかしいね」
 室戸博士は、落ちついて答えた。
「そうですか。重大な事件だと思いますが、あなたがたはあれをどうお考えになりますか」
 帆村は熱心な口調でたずねた。室戸博士はしずかに首を左右に振って、
「まったく気の毒だと思う。この村は、例の青い怪物の出現以来かなりおびえているらしいね。神経衰弱症だねえ」
 博士はしずかにいった。帆村はそれを聞いて、不満の色をうかべた。
「室戸博士は、そうお考えですか。それはちとお考えすぎではないでしょうか。十二人の歩行者が、揃いも揃って神経衰弱になるとは思われませんが……」
「ほほう。君は狐つきの説を信ずる組かね。はははは」
「いやそうじゃありません。第一、あの十二人のうちには海軍軍人が二人いるのですよ。列車から下りたばかりの海軍軍人は、青い怪物事件のあったことも知らないのですし、また話を聞いたとしても、あんなことで海軍軍人ともあろう者が、神経衰弱になろうとは思われません」
「それはそうだ」と室戸博士はいった。しかし熱のない返事であった。そこで帆村はまたいった。
「それに、青い怪物事件のあったのは、この町です。白根村は隣村です。この町の者が神経衰弱にならないのに、白根村の者が神経衰弱になるのは変ではありませんか」
「じゃ君は、あれをどう解釈しているのか」
 室戸博士の質問に、帆村は黙って下をむいた。やがて呻(うめ)くような帆村の声が聞えた。
「……あれこそわれわれ地球人類に対して、恐るべき第二の警報だと思うのです。われわれはすぐ立ち上らねばなりません」

   新しい手懸(てがか)り

「はははは。帆村君。君もすこし体をやすめてはどうかね。この間から、ずいぶん心身を疲らせているようだから、君まで神経衰弱になっては困るよ」
 特別刑事調査隊長の室戸博士は、白い髭(ひげ)をひっぱって、帆村荘六をじろりと見た。帆村が「白根村事件こそは、恐るべき怪物が、われわれにたいして発した第二の警報だ」という意味のことをいったので、そういう突拍子(とっぴょうし)もないことをいうのは、帆村荘六自身がもう神経衰弱になっているのではないかと思ったのだ。
 帆村は室戸博士の言葉を、悪い方へ解釈しなかった。彼はていねいに礼をのべた。それからポケットへ手を入れると、何か紙に包んだものを取出した。それを開けると、中には緑色がかったねじの頭のようなものが、三つ四つはいっていた。それを帆村は、博士たちの前に出して見せた。
「話は、例の緑色の怪物の方へとびますが、今日私は坑道でこんなものを拾ったのです。これまでにごらんになったことがありますか」
 帆村が差出すのを、博士は紙のまま受取って、机の上に置いた。調査隊の七人組が、そのまわりに集った。
「これは何処(どこ)で拾ったのかね」
 室戸博士は、鉛筆の尻で、そのねじの頭のようなものを突きまわす。
「今申したように、鉱山の坑道の下です。例の緑色の怪物が落ちこんだ穴の底を探しているうちに、ついに見つけたのです」
「何かね、これは……」
「さあ、わかりません」
「相当重いね」
 博士は手袋をはめてから、そのねじの頭のようなものを掌(てのひら)の上にのせて重さをためしてみたのだ。手袋をはめたのは、その品物の上に指紋がついていた場合、それを乱さない心づかいであった。
「はい、重いです。金属らしいですね。これは、分析してみないとわかりませんが、例の緑色の怪物の体から、もぎとられた一部分のように思うのです」
「さあ、どうかなあ。坑道に前から落ちていたものじゃないかな。銅が錆(さ)びると、こんな風に緑色になるよ」
「それは緑青(ろくしょう)のことです。しかしこれは緑青ではありません。それに、鉱山でつかっているもので、こんな色をした、こんな形のものはありません」
 帆村は自信をもっていった。
「すると君は、これがたしかに例の怪物の体の一部だというのかね」
「分析してみた上でないとわかりません」
「そうか、とにかくこれはこっちへ預っておこう。大した証拠物件ではないが、また何かの参考になるかもしれん」
 そういって室戸博士は、それを紙に包んで、自分のポケットに入れようとした。
「待って下さい。たいした物件でないというお考えなら、私のところへおかえし願いたいのです」
 博士は、いやな顔をして、紙包を帆村の方へ放り出した。
「君にいっておくが、われわれの許可なくして、事件に関係のあるものを私有することはやめてもらいたい」
「はあ」
 博士は児玉法学士の方へふりかえって、
「分署の者に命じて、坑道の入口から底に至るまで、もう一度よく探させるように。そして変った物があったら、一つところへ集めておかせるんだ。せっかくの証拠物などを他の者に荒されたんでは、わたしたちは大迷惑だからな。場合によっては、職権妨害罪をあてはめることも出来るんだが、そんなことはあまりしたくないし……」
 室戸博士の言葉には、帆村に対して意地わるい響を持っていた。鉱山の者や、調査隊の者には、それがよく響いたが、当の帆村荘六はいっこう響かないらしく、彼はそのとおりだという風に軽く肯(うなず)いていた。
「そうそう、君に聞いておきたいことがあった。帆村君、君は例の怪漢のことを、人間と思っていないという話だが、本当かね」
 と訊く室戸博士は、ある昂奮を圧(お)し隠(かく)しているように見えた。
「は。それはまだはっきりといいきれませんが、私は地球人類ではないと思っています」
「ほほう。地球人類ではないというと、それは何かね。人間でないものというと、常識では解けないじゃないか」
「それがはっきり解けると、この事件もたちどころに解決するのですが、まだわかりません。しかし人間でないということだけは言い切れます」
「なぜ」
「そうではありませんか。心臓のとまっていたのが、やがて地上へ移すと動きだした。これは人間にはないことです。目が三つある。これも人間ではない。岩の上を走っていって、竹蜻蛉(たけとんぼ)のようにきりきり廻った。と、その姿が急に見えなくなった。これは児玉法学士が見たのですから間違いなしです。これも人間業(にんげんわざ)ではありません」
「そうは思わないね。まず心臓の件だが、あれは始め診察したとき心臓のまだ微(かす)かに動いているのを聴きおとしたのだ。第二に、竹蜻蛉のように廻ることは、舞踊でもやることで、ふしぎなことではない。第三に、見ているうちに姿を消したというが、あれは児玉法学士の目のあやまりだよ」
 室戸博士は、三つとも否定した。
「いや博士。僕は見誤りなんかしませんです。たしかに怪物の姿が、まるで水蒸気が消えるように消えてしまったのです」
 いつの間にか、そこへ帰って来ていた児玉法学士が弁明した。
「児玉君。まあ、君は黙っていたまえ。とにかく帆村君、君が変なことをいいふらすものだから、この村の善良な人たちは非常におびえているよ。注意したまえ」
 室戸博士は、叩きつけるようにいうと、席を立って向うへ行ってしまった。

   宇宙戦争の共鳴者

 帆村荘六に対するよくない評判が、だんだんとこの村にも、隣村にも強くなっていった。室戸博士は、その旗頭(はたがしら)のようなものであった。鉱山でも、帆村をよくいわない人達がふえた。
 だが、それと反対に、帆村荘六に非常に親しみを持ち始めた者もあった。少数ではあったが……。その一人は児玉法学士であった。あとの一人は、山岸少年の兄の山岸中尉であった。
 児玉法学士は、例の怪物が水蒸気のように消え去るところを目撃した、貴重な人物であるが、室戸博士はそれを信じてくれない。しかるに帆村荘六だけは、たいへんに真面目(まじめ)に、その話を聞いてくれ、そしてそれは貴重な資料だとほめてくれるのである。
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