今昔ばなし抱合兵団
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著者名:海野十三 

 といっているとき、大きな音響と共に、目の前が火の海になったかと思ったら、私はそのまま気を失ってしまった。……
 今日の日記はこれでおしまいである。なぜなれば、私が気がついたのは、その翌朝(よくあさ)のことであったから、今日の日記としては、気を失ってしまった点々々というところで終りなのである。


     3


 金博士へ送る第三回目の日記。
 前の日記から、また十年たったのである。
二十×年八月八日 晴れ
 ラジオは、今朝は空が晴れているとアナウンスした。十年前のころは、夜が明けて、空が晴れていると、空襲があるという予想から、晴天(せいてん)を恨(うら)んだものである。この頃は、晴れていようが、曇っていようが、どっちでも大した差違(さい)はない。どんな日でも、飛行機はとんで来て、正確に爆撃をしていくのだから。
 しかしこの頃のように、われわれ市民は、地下へ潜(もぐ)ったきりで、一ヶ月に一度も、地上へ出て空を仰(あお)ぐ機会が与えられていないと、なんだか天気のことなど、莫迦(ばか)くさくて、聞く気になれない。
 食事をすませて、第三区行きの地下軌道にのり、会社に出勤した。今朝は、いきなり委員会議だ。
 今日の議題は、地下都市の拡張工事について、掘り出した土を、どこの地上に押しだすかということである。うっかりどこにでも出そうものなら、たちまち敵国の空中スパイに発見されて、こっちの新しい地下都市の所在(しょざい)を突(つ)き留(と)められてしまう。
 午後三時であったが、会議中、空襲警報が、睡むそうに鳴り響いた。
「またアメリカ空軍が爆撃にやってきたか。御苦労なことじゃ」
 この頃の爆撃はラジオのアナウンスだけで、お仕舞(しま)いだから、頼(たよ)りない。地下都市の構築法(こうちくほう)が完全になって、爆弾が落ちても、地響一つ聞えて来ないし、もちろん爆裂音なんか、全く耳にしようと思っても入らない。なにしろ地下都市も、今は百メートルの深さにあるのだから、安心したものである。
 そんなことを思っていたとき、だしぬけにものすごい音響が聞え、同時に、壁がぴりぴりと震(ふる)え、天井に長々と罅(ひび)が入った。
「うわーっ、めずらしいじゃないか、爆裂音だ。どうしてこんな地下まで、紛(まぎ)れこんできたのかね」
 議長さえ、まだそれほどの険悪(けんあく)な事態の中にあるとは考えないで、爆裂音を身近くに聞いたことを興(きょう)がっている。
 だが、時間がたつに従って、一座は、今日の爆撃がたまたま地隙(ちげき)を縫って、深い地下に達したというような紛(まぐ)れあたりのものでないことに気がついたのだった。爆裂音は、次第に大きさを増し、そしてピッチを詰めてきた。
 議長が、議案をそっちのけにして、びりびり震動する周囲の壁を見廻した。
「どうも今日の爆撃は変だね。いやに地底ふかく浸透(しんとう)するじゃないか。おい君、対空本部へ電話をかけて事情を聞いてみよ」
 議長は私に命令した。
 私は早速(さっそく)、対空本部附(つき)の漢師長(かんしちょう)を呼びだした。そして、いつもに似合わしからぬ爆弾の深度爆裂(しんどばくれつ)についてたずねたのである。
 すると漢師長は、あたりを憚(はばか)るような口調(くちょう)になって、私に云ったことに、
「それは、いつもと違っている筈だ。今日アメリカ軍が使っている爆弾は液体爆弾なんだ」
「液体爆弾? そんなものは初めて聞いたが、それは一体どんなものかね」
「つまり、アメリカが深い地下街爆撃用にと新(あら)たに作った爆弾で、A種弾とB種弾と二つに分れているんだ。まず初めにA種弾をどんどん墜(お)とすのさ。すると爆弾は土中(どちゅう)で爆発すると、中からA液が出て来て、それが地隙や土壌(どじょう)の隙間(すきま)や通路などを通って、どんどん地中深く浸透してくるのさ。ちょうど砂地(すなじ)に大雨が降ると、たちまち水が地中深く滲(し)みこんでいくようなものさ」
「なるほど。そして、そのA液は滲み込むと、爆発するのかね」
「いいや、A液だけでは、爆発はしないのだ。暫(しばら)く時間を置いて、丁度(ちょうど)A液がうまく浸みこんだ頃合(ころあい)を見はからって、こんどはB液の入ったB種弾が投下されるのだ。このB液も、さっきのA液と同様に、地下深く浸みこんでいくが、どこかで先に滲みこんでいるA液と出会うと、そこでたちまち、猛烈な化学反応が起って大爆裂をするというわけだ。おそろしい発明だよ、液体爆弾というやつは」
「ふーん、考えたもんだね。すると、われわれも今までのように、地下百メートルのところにあるからといって安心していられないわけだな」
「そうだよ。おお、君の今いる地区へも、既にA液弾が落ちて、今ずんずん地底へ向けて滲みこんでいるという報告が来ている。この上、B液弾が落ちれば、たいへんなことになるよ。大いに注意しなければいけない」
「大いに注意しろといって、どうするのかね」
「それはね、水はけ――ではない液(えき)はけをよくすることだ。上から滲みこんで来た液は、樋(とい)とか下水管(げすいかん)のようなものに受けて、どんどん流してしまうことだ。しかしA液とB液とを一緒に流しては、さっき云ったとおりに爆発が起るから、その前に、濾過器(ろかき)を据(す)えつけて、A液とB液とを濾(こ)し分け、別々の排流管(はいりゅうかん)に流しこまなければいけない」
「それはずいぶん面倒なことだね。急場(きゅうば)の間に合わないや」
「でも、それをやって置かないと、君たちの生命(いのち)に係(かかわ)る」
「生命に係るのは分っているが、もうA液は天井のあたりまで滲みこんでいるのに、樋工事を始めたり、濾過器を取寄せたりするわけにいかんじゃないか」
「それもそうだな。じゃあ、仕方がない。ここから君たちの冥福(めいふく)を祈っているよ。南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)!」
「おい、そんな薄情(はくじょう)なことをいうな。おーい、何とか助けてくれ。あ、電話を切っちゃいかん。……」
 といっているとき、大音響(だいおんきょう)と大閃光(だいせんこう)とに着飾って好(この)ましからぬ客がわれわれの頭の上からとび込んできたのであった。それ以来、私は人事不省(じんじふせい)となり、全身ところきらわず火傷(やけど)を負ったまま、翌朝(よくちょう)まで昏々(こんこん)と死生(しせい)の間を彷徨(ほうこう)していたのである。


     4


 それからまた十年たった。
 今日は八月八日である。金博士へ対して、約束のとおり、第四回目の日記を送ることになった。次に示すのは、その日記のうつしである。
三十×年八月八日 室内温度、湿度、照明度すべて異状なし 配給も正確なり 本日は、地下千メートルを征服し、現在われわれの棲(す)んでいるこの極楽(ごくらく)地下街建設の満三ヶ年の記念日であるので、ラジオは朝から、じゃんじゃんと楽しい音楽を送ってくる。
 あれからもう三年たったか。
 われわれ人類も、空爆の威力(いりょく)に圧(お)されて、だんだんと地底深く追いやられたが、初めはせいぜい地下二百五十メートルが人類の生活し得る限度で、それ以上になると、とても暑くて、生活は出来ないし、構築物(こうちくぶつ)ももたないといわれたものであるが、そうかといって、地下四五百メートルにまで達する深度爆弾(しんどばくだん)の餌食(えじき)になるのを待っていられないため、必死の耐熱建築の研究に国立研究所を動員し、遂(つい)に不可能と思われたる難問題を解決し、三年前にこの輝(かがや)かしき極楽地下街の完成を見たわけである。
 私は、食事を済ますと、すぐさま圧搾空気軌道(あっさくくうききどう)の管(くだ)の中に入り、三分四十五秒ののちには、記念祝賀会場たるネオ極楽広場の人混(ひとご)みの中に立っていた。
 梁首席(りょうしゅせき)の巨躯(きょく)が、壇上(だんじょう)に現れた。
 われわれは一せいに手をあげた。
「本日の記念日に際し、余(よ)は何よりも先(ま)ず第一に、敵国の空軍は本年に入って、殆んど新しい飛行機の補充をなさなくなったことを諸君の前に報告するの光栄を有(ゆう)するものである。いや、新機を補充しなくなったばかりか、これまで敵国が保有していた軍用機も、最近一年は、壊(こわ)れ放題にしてある始末(しまつ)である。これ乃(すなわ)ち、わが国が、完全なる防空力を有する地殻(ちかく)及び防空硬天井(ぼうくうこうてんじょう)の下に、かくの如く地下千メートルの地層に堅固(けんご)なる地下街を建設したことによって、敵国は空中よりの爆弾が一向(いっこう)効目(ききめ)がなくなったことを確認し、そして遂に、その軍用機整備の縮小を決行するに至った次第(しだい)であります。つまり、われわれが完全に地下に潜(もぐ)ることによって敵の空軍を全然無力化させることに成功したわけであって、これにより、われわれの国家は、いよいよ安全にして健康なる発展を遂(と)げることが約束されたわけである。先ず盃(さかずき)をあげて、今日の大勝利を祝って、乾盃したいと思います。皆さん、盃を……」
 私は、久振(ひさしぶ)りに、飲み慣れない酒に酔ってしまって、それから以後のことを、よく覚(おぼ)えていない。


     5


 それからまた十年たった。
 第五回目の日記である。
四十×年八月八日
 目が覚めると、今日は何をして退屈を凌(しの)ごうかなと、それがまず気にかかる。
 極楽生活は、飲食にも困らないし、着るものも充分だし、外敵(がいてき)の侵入の心配もなし、すべて充分だらけであるが、只一つ困ったことには、来る日来る日の退屈をどうして凌ぐか、これに悩まされる。
 ところが今朝は如何なる吉日(きちじつ)か、私は不図(ふと)四十年前に、金博士から聞いた疑問の民族の名を思い出したのであった。
 ピポスコラ族!
 ピポスコラ族とは、どんな民族なのであろうか。あのときは空襲下に戦(おのの)いていたときであったから、それがどんな族だか調べてみる余裕がなかった。よろしい、今日はあれを一つ古代図書館へいって調べてみよう。私は、俄(にわ)かに元気づいた。
 古代図書館に於て、完全に深夜まで暮した。しかしピポスコラ族が何ものであるかは、遂に手懸(てがか)りがなかった。私は更にそのまま、次の日暦(にちれき)の領域に入っても、調べを続けることにした。しかしそれは最早(もはや)八月八日分の日記ではなくなるから、ここで擱筆(かくひつ)する。


     6


 それからまた十年たった。五十×年八月八日となった。この日の日記は、従来の慣例を破って、遂に金博士の許(もと)へ届けられなかった。そのわけは、政府が突然、全国的に、通信杜絶(つうしんとぜつ)を号令したからである。
 その理由は?
 その理由は、そのときには何のことだか、全く分らなかったが、それから一年半ほどたって、漸(ようや)くぼんやりしたその輪郭(りんかく)だけがわかった。それは白人帝国(はくじんていこく)が、ひそかに抱合兵団(サンドイッチへいだん)をもって、わが国攻略を狙っているという情報が入ったため非常警戒となり、遂に通信厳禁(げんきん)となった由(よし)である。
 しからば、その抱合(サンドイッチ)兵団とは、どんなものであるか。それが分っていれば、政府もそれほど狼狽(ろうばい)する必要はなかったのである。分らなかったから、騒ぎが大きくなったのであった。その抱合(サンドイッチ)兵団のことは、次の日記において、初めて全貌(ぜんぼう)が明瞭(めいりょう)となるであろう。


     7


六十×年八月八日 最小限生活に追いこまれあり、食慾ことの外(ほか)興奮して、治(おさ)めるのに困難を感ず、非常時ゆえ、仕方なけれど……。 前夜から、われわれは、リュックサックを肩に負い、必死で、縦井戸(たていど)を登攀(とうはん)しつつあるのであるが、老人である私には、腕の力も腰の力も弱くて、一向はかがいかない。一時間もかかって、やっと五メートル登るのがせきのやまである。
 しかも、気をゆるめていようものなら、下から上って来た乱暴な市民のため、われは邪魔扱(じゃまあつか)いにされて、まるで壁にへばりついているやもりを叩きおとすように、われ等の身体は奈落(ならく)へ投げおとされるのである。
 奈落へ墜落(ついらく)すれば、どっち道、死あるのみである。岩かどに頭をぶっつけるか、そうでなくて死にもせず、元の極楽地下街まで墜(お)ちついたとすれば、そこには白人帝国軍の地底戦車隊(ちていせんしゃたい)が待っていて、たちまち身はお煎餅(せんべい)の如く伸(の)されてしまうのである。であるから、どっちにしても死の頤(おとがい)を逃れることは出来ない。
 ああ、今になってぶつぶついっても仕方がないが、どうしてわが当局は、抱合兵団(サンドイッチへいだん)の攻略に気がつかなかったのであろうか。およそ攻撃目標たるわれわれが、敵軍の空中からの爆撃を避(さ)けて地下に潜(もぐ)り、空爆更(さら)に効果なしと分れば、敵軍はこんどは手をかえ、地中深くからわれわれの住居地を攻撃するであろうことは、素人(しろうと)にも分ることではないか。
 何を今更(いまさら)、五万台にのぼる敵の地底戦車兵団をわれわれの足の下に迎え、あれよあれよと騒いで間に合うものか。
「市民たちは、即刻(そっこく)地上に避難せよ。地上に出た方が、まだ被害程度が軽いであろう」
 そういって、わが護衛司令官は布告(ふこく)をしたが、それもいい加減(かげん)の対策だったことが、間もなく判明した。なぜといって、何十年ぶりかで市民たちが地上へ頭を出したとたん、待っていましたとばかり、敵白人帝国の空中兵団は、われわれ同胞(どうほう)の上へ襲いかかったのである。猛爆、また猛爆、その惨状(さんじょう)は聞くにたえないものがあった。
 地底へ下りれば、敵の地底兵団あり、地上へ出れば、敵の空中兵団あり、上と下とからの抱合(サンドイッチ)兵団の攻撃にあっては、われわれは上(のぼ)りも下(くだ)りも出来ず、文字どおり進退谷(しんたいきわ)まってしまった次第である。
「ああしまった」
 ああ痛い。とんだ愚痴(ぐち)をのべている間に、私は折角(せっかく)二日がかりで登った八メートルばかりの縦井戸を下に滑(すべ)りおちてしまった。でも幸(さいわ)いに、そこで地下道が水平に折れ曲っていたからそれ以上墜落しないですんだ。もう愚痴はよそう。そして私は、もう上るのも降りるのもよした。もうその気力がない。前途に対する希望は、ここでしずかに餓死(がし)するばかりである……。
 と考えこんでいたとき、不意に私の肩を突付(つっつ)く者があった。私はびっくりして目を開いた。すると目の前に、逞(たくま)しい顔の青年が、前屈(まえかが)みになって、私の顔をのぞきこんでいた。
「おお、君は洪(こう)君」
「そうです、洪です。先生、ぐずぐずしていられませんぞ。私と一緒に逃げてください」
「君の親切は感謝するが、もう迚(とて)も駄目だよ。上へ出ても下へ降りても殺されるものなら、ここでしずかにわが生涯を閉じたいのだよ。わしをかまわんで呉(く)れ」
「先生、そんな気の弱いことでは、駄目じゃありませんか。敵の手に至(いた)らず、まだ逃げていくところが残っていますぞ」
「へえ、本当かね。それはどこだね」
「それはつまり、深く地底にも降りず、そうかといって地上にもとびださず、丁度(ちょうど)その中間のところ、つまりサンドウィッチでいえば、パンのところではなく、パンに挟まれたハムのところを狙って、どこまでも横に逃げていくのです。横へ逃げれば、まだ今のうちなら、無限にちかいほど、逃げていく場所があります。そのうち、どこかで落ちついて、穴居(けっきょ)生活を始めるんですよ」
「しかしなあ洪君、横に逃げるといって、穴を掘っていかなければならんじゃないか」
「そうです。穴掘り機械が入用(いりよう)です。ここに私が持っているのが、人工ラジウム応用の長距離鑿岩車(さくがんしゃ)です。さあ、安心して、この上におのりなさい」
「そうかね。それは実に大したもんだ」
 と、私は鑿岩車に足をかけ、洪君のうしろの席へ腰を下ろした。そのとき丁度、私のリュックの中で、目ざましが午後十二時をうった。


     8


 それから十年のち、すなわち七十×年八月八日、私は日記を書く代(かわ)りに、金博士に対して次のような手紙を書いたのだった。
 炯眼(けいがん)なる金先生足下(そっか)。まず何よりも、先生の御予言(ごよげん)が遂に適中(てきちゅう)したことを御報告し、且(か)つ驚嘆するものです。
 金先生足下。ピポスコラ族には、遂に昨日面接しました。それは全く唐突(だしぬけ)のことでありました。
 私は洪(こう)青年と、長距離鑿岩車(さくがんしゃ)にのって、十年ほど前から、地中放浪(ちちゅうほうろう)の旅にのぼりましたが、昨日の昼頃、車を停めてしばし休憩をしていますと、ふしぎにも、地中のどこかで、どすんどすんと地響がするではありませんか。私たちはおどろいて、顔の色をかえました。
 私は、遂に敵の地底戦車にとり囲(かこ)まれたのだと悲観しましたのに対し、洪青年は、こんなところに地底戦車隊がいるとは思えないと主張してゆずらず、その揚句(あげく)、遂に洪青年の意に従って、われわれは敢然(かんぜん)、鑿岩車を駆って、怪音(かいおん)のする地点に向け、最後の突撃を試みました。
 やがて、一段と大きく岩の崩(くず)れる音とともに、われわれは思いもかけない明るい部屋の中に突入したのです。私は愕(おどろ)きの目をみはりました。そこは大きな洞窟(どうくつ)で、猿とも人ともつかぬふしぎな動物が居合わせました。しかしその動物は別にわれわれに危害を加える様子はありませんでした。
 私の予(か)ねて勉強しておいた前世古代語(ぜんせいこだいご)が役にたって嬉しいことでした。彼等は自(みずか)ら、これがピポスコラ族であることを申立てました。彼等は二十万年前に、地中へ潜(もぐ)ったと申して居りました。その当時は、地上や空には恐竜(きょうりゅう)などの恐ろしく大きな動物が猛威(もうい)をふるい、地底深くには大土竜(おおもぐら)(それが退化して今日残っているのが例のもぐらもちです)に攻めたてられ、遂に上下谷(じょうげきわ)まって横に向いて逃げるうち、このところに安全洞(あんぜんどう)を見出して、穴居(けっきょ)動物となり果(は)てたことが分りました。
 すべて、金先生の仰有(おっしゃ)ったとおりです。そこで私は洪君とはかり、これから何とかしてこの土地でピポスコラ族にならい穴居生活をつづけることになりました。もしもどこかで、洪君のためによき配偶(はいぐう)が見つかるならば、われわれ人類は、やがてネオピポスコラ族という新しい種族(しゅぞく)をつくり、この地中に、繁栄することでありましょう。




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