霊魂第十号の秘密
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著者名:海野十三 

 カカル未知電波ノウチノアルモノハ、時ニ雑音(ざつおん)トイウ名ノモトニワレワレニ知ラレテイル。シカシ果シテソレガ雑音ナドトイワレルニ十分ナ屑電波(くずでんぱ)ダトスルコトハ早計ニ過ギルト思ワレル。雑音コソハ、直チニ研究ニ取懸(とりかか)ルニ適シタ未知電波ダ。コレヲ探求シ、分析(ぶんせき)シ、整頓(せいとん)シ、再現スルコトニヨッテ、ワレワレハ自然界ノ新シキ神秘ニ触レルコトガ出来ルノデハナイカト思ウ。
 自分ガ関係シタ霊魂第十号モ、カカル雑音ノ中カラ姿ヲ現ワシタノデアル。第十号ハ頗(すこぶ)ル野心ニ燃エタ霊魂ダッタ。第十号ハ人間界ニ肉迫(にくはく)シ、ソシテ遂ニ人間ノ霊魂ヲ捉(とら)エルニ至ッタ。ソノ択(えら)バレタル霊魂ノ持主ハ、不運デモアッタガ、又、捉(とら)エラレルニ適シタホドノ脆弱性(ぜいじゃくせい)ト不安定トヲ持ッテイタ気ノ毒ナ人デアッタ。ソウイウ種類ノ人間ハ、案外身辺ニ少ナクナイノデアル。深イ注意ヲモッテカカル人間ニ対シ適当ナ電波的保護ヲ急グノデナケレバ、世ノ中ニハ「手ニオエナイ神経病者」トイワレルモノガ年ト共ニ激増スルデアロウ。
 自分ハ健康ヲ回復シタラ、此ノ方面ノ研究ニ没頭シヨウト思ウ。ソシテ、可能ナラバ霊魂第十号ニモウ一度会イ、彼及ビ彼ノ背後ニアル心霊科学ト握手シ、同ジ目的ニ向ッテ協力シタイモノダ。(以下略)
 治明博士の予想した如く、一週間後に名津子はすっかり元気になり、それまでの妖(あや)しき態度も消え、元の名津子に戻った。そして隆夫や健(けん)や二宮(にのみや)や四方(よつかた)の交際も旧(もと)に復した。
 なお、隆夫は改めて名津子と結婚した。隆夫の方が年下であることは、二人の間にも親たちの間にも、もはや問題でなかった。




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