虞美人草
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§:一
相手は汗ばんだ額を、 …
春はものの句になりや …
振り廻した杖の先の尽 …
「そら、坂の途中で邪 …
「反吐（へど）が出そ …
「愛嬌と云うのはね、 …
右よりし左よりして、 …
「まるで夢のようだ」 …
§:二
「沙翁（シェクスピヤ …
「そよと吹く風の恋や …
美しき女の二十（はた …
「そんなに見えますか …
「母が帰って来たので …
「だって、古い御馴染 …
小野さんは黙然（もく …
女の眼はようやくに頁 …
「まるであなた鉄砲玉 …
「こうすると引き立ち …
§:三
「ところが哲学者なん …
「この結目を解いたも …
旅行案内を放（ほう） …
「そうか」 …
「雅号にして本名なる …
「ハハハハ小野なら障 …
「そうか、それじゃ御 …
「つまり、家（うち） …
「困ったって仕方がな …
§:四
昔（むか）しタンタラ …
二階の書生がヴァイオ …
同一の空間は二物によ …
「そうかって、君の所 …
「そう云う事もあるま …
§:五
「して見ると夢窓国師 …
「たまたま風邪（かぜ …
「悪（わ）るくないね …
「おい、壊れたか。 …
「あれだ」と宗近君が …
「それじゃやっぱり京 …
二人は松と桜と京人形 …
§:六
二人の会話は互に、死 …
甲野（こうの）さんと …
「まだ京都から御音信 …
「隣家（となり）の琴 …
追い懸けて来る過去を …
「ちょっと覚えません …
「小米桜を二階の欄干 …
§:七
「ハハハハ生れて死ぬ …
「ところが布設したの …
「本当にね」 …
「君にはああ落ちつい …
「御茶でも上がったら …
「小説なら、これが縁 …
§:八
藤尾は返事を控えた。 …
「どう思ってるって… …
「文庫のなかに、ちゃ …
「ええ、――一本橋を …
「叡山の――つまり叡 …
「あるだろう、そのく …
「一（はじめ）にも貰 …
§:九
「もっと好い家（うち …
「小督（こごう）の局 …
降らんとして降り損（ …
「そうさ、乗替を―― …
「何にも云わない？― …
「話さない？話せばい …
§:十
「御宅でも皆様御変り …
「私には女でいっこう …
「いえ、心配は御互で …
「弱るね、そう、疳（ …
「こちらでも、糸子さ …
「いろいろ御親切にあ …
「へええ、今度（こん …
「まだ、あるのよ」 …
「いつ」と糸子は縫う …
「そうか、それじゃ聴 …
云いながら糸子は首を …
「おい頭へ針が刺さっ …
糸子はめでたく笑った …
§:十一
「あの一番右の前へ出 …
藍（あい）を含む黒塗 …
得意な小野さんは同時 …
「小夜や、どうだい。 …
「おい気がついたか」 …
「亡国の菓子さハハハ …
§:十二
「待ってた？何を」 …
「どうも年を取ったも …
「いろいろ買物がした …
縄なくて十重（とえ） …
「また夢か」と欽吾は …
「あの金時計は、あな …
「ハハハハだいぶ哲学 …
小野さんが玄関に掛か …
蓮の葉が出たあとには …
「さっき欽吾が来やし …
磬（けい）を打って入 …
「奇麗でした」と女は …
「昼間って……」 …
§:十三
長押作（なげしづく） …
「美しい方（かた）を …
「奇麗でしょう」 …
「藤尾のような女は今 …
§:十四
「妙でも仕方がない、 …
「そんなものは要（い …
宗近君は返事をする前 …
「君、鵜（う）と云う …
「君のような新式な男 …
「あの令嬢がね。 …
「蔦屋の下女は……」 …
英吉利式（イギリスし …
「忙がしいだろうから …
「五年目でも、十年目 …
「なに小夜さえなけれ …
「まあ緩（ゆっ）くり …
「だいぶ久しく書いて …
「あの婆さんが切ると …
屈（こご）んでいた小 …
§:十五
甲野さんは、指先に軸 …
「云えば御廃（およ） …
「だって向（むこう） …
「何とか云って断った …
「それとも一さんの事 …
「身体（からだ）を丈 …
「あれも、あんな、気 …
「そんな事があっては …
「どうだろうね」 …
甲野さんは返事をする …
「時計？」と母は首を …
「ただ年を取って心細 …
「そう」と云ったなり …
云い棄（す）てて紫の …
§:十六
「へええ――おや椽側 …
「二人静。 …
「外国へ――外国へ行 …
「西洋なんか行きたく …
「どうも、この襟飾（ …
「いや、あの女の云う …
「好い。 …
とんとんと二段踏むと …
「ええ。 …
「切るのは好いが、あ …
「この間甲野の御叔母 …
「だから、どんなって …
「そう御前まで賛成し …
「知己でも知己でなく …
「困ったな、いつの間 …
§:十七
浅井君はいくらでも下 …
「貰う事は貰うつもり …
「先生が随分はげしく …
「それに僕の方から云 …
「この間京都へ行った …
宗近君はつかつかと洋 …
「行くのはいいが、親 …
親譲りの背広を着た男 …
不規則なる春の雑樹（ …
「藤尾だ」と甲野さん …
「本来の無一物から出 …
「貴様、気が狂ったか …
「厭じゃないが、仕方 …
§:十八
「はあ、そうかい」と …
「二三日中（じゅう） …
「君は結婚を極（きわ …
突然電車に乗った浅井 …
ただの親類ならまだし …
「そう君が平たく云う …
「ありがたいです」 …
「何、僕が君の妻君を …
「実はそう云うしだい …
「小夜や、宗近さんの …
めらめらと燃えた火は …
「出るって、御前本当 …
「行きましょう。 …
「だって御互に世間に …
「小野さんは……」と …
濃い紫（むらさき）の …
藤尾の表情は三たび変 …
§:十九
「泣いたって、今更（ …
死を忘るるものは贅沢 …
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