小熊秀雄全集-22
著者名:小熊秀雄
○
それに どうして火星へ行くのをいやがるんだね
あんまりへんな夢(ゆめ)をみてしまつたんです
○
ハハハハ それでテン太郎は ほんとうの事を知りたくなつたんだね
さうです
○
さうぢや ほんとうのことを知ることぢや 火星に人間(げん)がむりに居(ゐ)るやうに考(かんが)へてはいかん
さうですね 人間がゐるかゐないか研究(けんきう)すればいいんですね
さうぢや
○
火星(くわせい)の夢(ゆめ)を見たければ テン太郎のやうにベットの上で見たらいい
僕(ぼく)もう火星の夢はみません こんどは機械(きかい)をのぞいてほんとうのことを沢山(たくさん)知るんです
賛成(さんせい)!
賛成!
○
さあ みんな帰(かへ)らう
お父(とう)さんがいろいろのことを見せてやつた こんどはテン太郎は自分(じぶん)の学校の勉強(べんきやう)を帰つてやりなさい
さやうなら
さよなら
○
これこれテン太郎 一寸(ちよつと)まて きのふからな お父さんの髯(ひげ)にコオロギが巣(す)をつくつたんぢや
(エ?)
まあ驚(おどろ)いた 髯の中にですか?
○
さうぢや わしは殺(ころ)すことがきらひぢやから放(ほう)つておいたよ
ホレ鳴(な)いてゐる
やあ ふしぎだ?
○
あらほんと聞きたいわ
僕にも聞かせて下さい
さわいぢや鳴かないよ そつと寄(よ)つてきたまへ
○
(コロ コロ コロ)
ああ ほんとだ!
どうして髯の中になんか入つたんだらうな
いい声(こゑ)だなア
○
(コロ コロ コロ ハクション)
アレッ コオロギが くしやみをした!
○
ア、わかつた お父さんが口で鳴く真似(まね)をしてゐたんだ
では みなさんさやうなら
○
お父さんにやられちやつた
くやしいわね
なんだかこのまゝ帰るのは残念(ざんねん)だなあ
○
僕もさうだ 子供(ども)や犬や猫(ねこ)が科学者(くわがくしや)に負(ま)けるなんていまいましいなあ
なんだか、このまゝ帰れませんね
くやしいな
○
いいことを考(かんが)へついた みんな……………………ネ
うまい考へだな
くやしいわね
○
(ゲロゲロゲロゲロ ゲゲゲゲゲゲ ゲーロゲロ ゲロゲロ)
こりや助からん どうもうるさい蛙共(かへるども)ぢやなあ
○
星野(の)さん だいぶ蛙がうるさいやうですな
(ゲロゲロゲロ)
研究(けんきう)も何もできませんですね
○
おや これは
ヤしまつた
さつきの敵(かたき)うちか こりやいかん
○
(ピシャッ)
○
さあ みんな帰(かへ)らう
(ゲロゲロ ゲロゲロ)
やつと胸(むね)がスースーしたわ
(ゲゲゲゲゲゲ)
アハハハ
(ゲーロ ケロケロゲロ)
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