電報
著者名:黒島伝治
「分(ぶん)に過ぎるせに、通っとっても、やらん方がえいじゃけれど……」とおきのは独言った。
暫らくして、
「そんなら、呼び戻そうか。」と源作は云った。
「そうすりゃえいわ。」おきのはすぐ同意した。
源作は畠仕事を途中でやめて、郵便局へ電報を打ちに行った。
「チチビヨウキスグカエレ」
いきなりこう書いて出した。
帰りには、彼は、何か重荷を下したようで胸がすっとした。
息子は、びっくりして十一時の夜汽車であわてゝ帰って来た。
三日たって、県立中学に合格したという通知が来たが、入学させなかった。
息子は、今、醤油屋の小僧にやられている。
(大正十二年三月)
ページジャンプ青空文庫の検索おまかせリスト▼オプションを表示暇つぶし青空文庫
Size:13 KB
担当:undef