道化の華
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著者名:太宰治 

 葉藏はさう呟きつつ、枕元に散らばつてある木炭紙をいちまい拾ひあげ、仰向に寢たままでそれへ落書をはじめた。
「ご自分がよくないことをしてゐるから、ひとのよいところがわからないんだわ。噂ですけれど、婦長さんは院長さんのおめかけなんですつて。」
「さうか。いいところがある。」小菅は大喜びであつた。彼等はひとの醜聞を美徳のやうに考へる。たのもしいと思ふのである。「勳章がめかけを持つたか。いいところがあるよ。」
「ほんたうに、みなさん、罪のないことをおつしやつては、お笑ひになつていらつしやるのに、判らないのかしら。お氣になさらず、うんとおさわぎになつたはうが、ようございますわ。かまひませんとも。けふ一日ですものねえ。ほんたうに誰にだつてお叱られになつたことのない、よい育ちのかたばかりなのに。」片手を顏へあてて急にひくく泣き出した。泣きながらドアをあけた。
 飛騨はひきとめて囁いた。「婦長のとこへ行つたつて駄目だよ。よし給へ。なんでもないぢやないか。」
 顏を兩手で覆つたまま、二三度つづけさまにうなづいて廊下へ出た。
「正義派だ。」眞野が去つてから、小菅はにやにや笑つてソフアへ坐つた。「泣き出しちやつた。自分の言葉に醉つてしまつたんだよ。ふだんは大人くさいことを言つてゐても、やつぱり女だな。」
「變つてるよ。」飛騨は、せまい病室をのしのし歩きまはつた。「はじめから僕、變つてると思つてゐたんだよ。をかしいなあ。泣いて飛び出さうとするんだから、おどろいたよ。まさか婦長のとこへ行つたんぢやないだらうな。」
「そんなことはないよ。」葉藏は平氣なおももちを裝つてさう答へ、落書した木炭紙を小菅のはうへ投げてやつた。
「婦長の肖像畫か。」小菅はげらげら笑ひこけた。
「どれどれ。」飛騨も立つたままで木炭紙を覗きこんだ。「女怪だね。けつさくだよ。これあ。似てゐるのか。」
「そつくりだ。いちど院長について、この病室へも來たことがあるんだ。うまいもんだなあ。鉛筆を貸せよ。」小菅は、葉藏から鉛筆を借りて、木炭紙へ書き加へた。「これへかう角を生やすのだ。いよいよ似て來たな。婦長室のドアへ貼つてやらうか。」
「そとへ散歩に出てみようよ。」葉藏はベツドから降りて脊のびした。脊のびしながら、こつそり呟いてみた。「ポンチ畫の大家。」

 ポンチ畫の大家。そろそろ僕も厭きて來た。これは通俗小説でなからうか。ともすれば硬直したがる僕の神經に對しても、また、おそらくはおなじやうな諸君の神經に對しても、いささか毒消しの意義あれかし、と取りかかつた一齣であつたが、どうやら、これは甘すぎた。僕の小説が古典になれば、――ああ、僕は氣が狂つたのかしら、――諸君は、かへつて僕のこんな註釋を邪魔にするだらう。作家の思ひも及ばなかつたところにまで、勝手な推察をしてあげて、その傑作である所以を大聲で叫ぶだらう。ああ、死んだ大作家は仕合せだ。生きながらへてゐる愚作者は、おのれの作品をひとりでも多くのひとに愛されようと、汗を流して見當はづれの註釋ばかりつけてゐる。そして、まづまづ註釋だらけのうるさい駄作をつくるのだ。勝手にしろ、とつつぱなす、そんな剛毅な精神が僕にはないのだ。よい作家になれないな。やつぱり甘ちやんだ。さうだ。大發見をしたわい。しん底からの甘ちやんだ。甘さのなかでこそ、僕は暫時の憩ひをしてゐる。ああ、もうどうでもよい。ほつて置いて呉れ。道化の華とやらも、どうやらここでしぼんだやうだ。しかも、さもしく醜くきたなくしぼんだ。完璧へのあこがれ。傑作へのさそひ。「もう澤山だ。奇蹟の創造主(つくりぬし)。おのれ!」
 眞野は洗面所へ忍びこんだ。心ゆくまで泣かうと思つた。しかし、そんなにも泣けなかつたのである。洗面所の鏡を覗いて、涙を拭き、髮をなほしてから、食堂へおそい朝食をとりに出掛けた。
 食堂の入口ちかくのテエブルにへ號室の大學生が、からになつたスウプの皿をまへに置き、ひとりくつたくげに坐つてゐた。
 眞野を見て微笑みかけた。「患者さんは、お元氣のやうですね。」
 眞野は立ちどまつて、そのテエブルの端を固くつかまへながら答へた。
「ええ、もう罪のないことばかりおつしやつて、私たちを笑はせていらつしやいます。」
「そんならいい。畫家ですつて?」
「ええ。立派な畫をかきたいつて、しよつちゆうおつしやつて居られますの。」言ひかけて耳まで赤くした。「眞面目なんですのよ。眞面目でございますから、眞面目でございますからお苦しいこともおこるわけね。」
「さうです。さうです。」大學生も顏をあからめつつ、心から同意した。
 大學生はちかく退院できることにきまつたので、いよいよ寛大になつてゐたのである。
 この甘さはどうだ。諸君は、このやうな女をきらひであらうか。畜生! 古めかしいと笑ひ給へ。ああ、もはや憩ひも、僕にはてれくさくなつてゐる。僕は、ひとりの女をさへ、註釋なしには愛することができぬのだ。おろかな男は、やすむのにさへ、へまをする。

「あそこだよ。あの岩だよ。」
 葉藏は梨の木の枯枝のあひだからちらちら見える大きなひらたい岩を指さした。岩のくぼみにはところどころ、きのふの雪がのこつてゐた。
「あそこから、はねたのだ。」葉藏は、おどけものらしく眼をくるくると丸くして言ふのである。
 小菅は、だまつてゐた。ほんたうに平氣で言つてゐるのかしら、と葉藏のこころを忖度してゐた。葉藏も平氣で言つてゐるのではなかつたが、しかしそれを不自然でなく言へるほどの伎倆をもつてゐたのである。
「かへらうか。」飛騨は、着物の裾を兩手でぱつとはしよつた。
 三人は、砂濱をひつかへしてあるきだした。海は凪いでゐた。まひるの日を受けて、白く光つてゐた。
 葉藏は、海へ石をひとつ抛つた。
「ほつとするよ。いま飛びこめば、もうなにもかも問題でない。借金も、アカデミイも、故郷も、後悔も、傑作も、恥も、マルキシズムも、それから友だちも、森も花も、もうどうだつていいのだ。それに氣がついたときは、僕はあの岩のうへで笑つたな。ほつとするよ。」
 小菅は、昂奮をかくさうとして、やたらに貝を拾ひはじめた。
「誘惑するなよ。」飛騨はむりに笑ひだした。「わるい趣味だ。」
 葉藏も笑ひだした。三人の足音がさくさくと氣持ちよく皆の耳へひびく。
「怒るなよ。いまのはちよつと誇張があつたな。」葉藏は飛騨と肩をふれ合せながらあるいた。「けれども、これだけは、ほんたうだ。女がねえ、飛び込むまへにどんなことを囁いたか。」
 小菅は好奇心に燃えた眼をずるさうに細め、わざと二人から離れて歩いてゐた。
「まだ耳についてゐる。田舍の言葉で話がしたいな、と言ふのだ。女の國は南のはづれだよ。」
「いけない! 僕にはよすぎる。」
「ほんと。君、ほんたうだよ。ははん。それだけの女だ。」
 大きい漁船が砂濱にあげられてやすんでゐた。その傍に直徑七八尺もあるやうな美事な魚籃が二つころがつてゐた。小菅は、その船のくろい横腹へ、拾つた貝を、力いつぱいに投げつけた。
 三人は、窒息するほど氣まづい思ひをしてゐた。もし、この沈默が、もう一分間つづいたなら、彼等はいつそ氣輕げに海へ身を躍らせたかも知れぬ。
 小菅がだしぬけに叫んだ。
「見ろ、見ろ。」前方の渚を指さしたのである。「い號室とろ號室だ!」
 季節はづれの白いパラソルをさして、二人の娘がこつちへそろそろ歩いて來た。
「發見だな。」葉藏も蘇生の思ひであつた。
「話かけようか。」小菅は、片足あげて靴の砂をふり落し、葉藏の顏を覗きこんだ。命令一下、駈けださうといふのである。
「よせ、よせ。」飛騨は、きびしい顏をして小菅の肩をおさへた。
 パラソルは立ちどまつた。しばらく何か話合つてゐたが、それからくるつとこつちへ背をむけて、またしづかに歩きだした。
「追ひかけようか。」こんどは葉藏がはしやぎだした。飛騨のうつむいてゐる顏をちらと見た。「よさう。」
 飛騨はわびしくてならぬ。この二人の友だちからだんだん遠のいて行くおのれのしなびた血を、いまはつきりと感じたのだ。生活からであらうか、と考へた。飛騨の生活はややまづしかつたのである。
「だけど、いいなあ。」小菅は西洋ふうに肩をすくめた。なんとかしてこの場をうまく取りつくろつてやらうと努めるのである。「僕たちの散歩してゐるのを見て、そそられたんだよ。若いんだものな。可愛さうだなあ。へんな心地になつちやつた。おや、貝をひろつてるよ。僕の眞似をしてゐやがる。」
 飛騨は思ひ直して微笑んだ。葉藏のわびるやうな瞳とぶつかつた。二人ながら頬をあからめた。判つてゐる。お互ひがいたはりたい心でいつぱいなんだ。彼等は弱きをいつくしむ。
 三人は、ほの温い海風に吹かれ、遠くのパラソルを眺めつつあるいた。
 はるか療養院の白い建物のしたには、眞野が彼等の歸りを待つて立つてゐる。ひくい門柱によりかかり、まぶしさうに右手を額へかざしてゐる。

 最後の夜に、眞野は浮かれてゐた。寢てからも、おのれのつつましい家族のことや、立派な祖先のことをながながとしやべつた。葉藏は夜のふけるとともに、むつつりして來た。やはり、眞野のはうへ背をむけて、氣のない返事をしながらほかのことを思つてゐた。
 眞野は、やがておのれの眼のうへの傷について話だしたのである。
「私が三つのとき、」なにげなく語らうとしたらしかつたが、しくじつた。聲が喉へひつからまる。「ランプをひつくりかへして、やけどしたんですつて。ずゐぶん、ひがんだものでございますのよ。小學校へあがつてゐたじぶんには、この傷、もつともつと大きかつたんですの。學校のお友だちは私を、ほたる、ほたる。」すこしとぎれた。「さう呼ぶんです。私、そのたんびに、きつとかたきを討たうと思ひましたわ。ええ、ほんたうにさう思つたわ。えらくならうと思ひましたの。」ひとりで笑ひだした。「をかしいですのねえ。えらくなれるもんですか。眼鏡かけませうかしら。眼鏡かけたら、この傷がすこしかくれるんぢやないかしら。」
「よせよ。かへつてをかしい。」葉藏は怒つてでもゐるやうに、だしぬけに口を挾んだ。女に愛情を感じたとき、わざとじやけんにしてやる古風さを、彼もやはり持つてゐるのであらう。「そのままでいいのだ。目立ちはしないよ。もう眠つたらどうだらう。あしたは早いのだよ。」
 眞野は、だまつた。あした別れてしまふのだ。おや、他人だつたのだ。恥を知れ。恥を知れ。私は私なりに誇りを持たう。せきをしたり溜息ついたり、それからばたんばたんと亂暴に寢返りをうつたりした。
 葉藏は素知らぬふりをしてゐた。なにを案じつつあるかは、言へぬ。
 僕たちはそれより、浪の音や鴎の聲に耳傾けよう。そしてこの四日間の生活をはじめから思ひ起さう。みづからを現實主義者と稱してゐる人は言ふかも知れぬ。この四日間はポンチに滿ちてゐたと。それならば答へよう。おのれの原稿が、編輯者の机のうへでおほかた土瓶敷の役目をしてくれたらしく、黒い大きな燒跡をつけられて送り返されたこともポンチ。おのれの妻のくらい過去をせめ、一喜一憂したこともポンチ。質屋の暖簾をくぐるのに、それでも襟元を掻き合せ、おのれのおちぶれを見せまいと風采ただしたこともポンチ。僕たち自身、ポンチの生活を送つてゐる。そのやうな現實にひしがれた男のむりに示す我慢の態度。君はそれを理解できぬならば、僕は君とは永遠に他人である。どうせポンチならよいポンチ。ほんたうの生活。ああ、それは遠いことだ。僕は、せめて、人の情にみちみちたこの四日間をゆつくりゆつくりなつかしまう。たつた四日の思ひ出の、五年十年の暮しにまさることがある。たつた四日の思ひ出の、ああ、一生涯にまさることがある。
 眞野のおだやかな寢息が聞えた。葉藏は沸きかへる思ひに堪へかねた。眞野のはうへ寢がへりを打たうとして、長いからだをくねらせたら、はげしい聲を耳もとへささやかれた。
 やめろ! ほたるの信頼を裏切るな。

 夜のしらじらと明けはなれたころ、二人はもう起きてしまつた。葉藏はけふ退院するのである。僕は、この日の近づくことを恐れてゐた。それは愚作者のだらしない感傷であらう。この小説を書きながら僕は、葉藏を救ひたかつた。いや、このバイロンに化け損ねた一匹の泥狐を許してもらひたかつた。それだけが苦しいなかの、ひそかな祈願であつた。しかしこの日の近づくにつれ、僕は前にもまして荒涼たる氣配のふたたび葉藏を、僕をしづかに襲うて來たのを覺えるのだ。この小説は失敗である。なんの飛躍もない、なんの解脱もない。僕はスタイルをあまり氣にしすぎたやうである。そのためにこの小説は下品にさへなつてゐる。たくさんの言はでものことを述べた。しかも、もつと重要なことがらをたくさん言ひ落したやうな氣がする。これはきざな言ひかたであるが、僕が長生きして、幾年かのちにこの小説を手に取るやうなことでもあるならば、僕はどんなにみじめだらう。おそらくは一頁も讀まぬうちに僕は堪へがたい自己嫌惡にをののいて、卷を伏せるにきまつてゐる。いまでさへ、僕は、まへを讀みかへす氣力がないのだ。ああ、作家は、おのれのすがたをむき出しにしてはいけない。それは作家の敗北である。美しい感情を以て、人は、惡い文學を作る。僕は三度この言葉を繰りかへす。そして、承認を與へよう。
 僕は文學を知らぬ。もいちど始めから、やり直さうか。君、どこから手をつけていつたらよいやら。
 僕こそ、渾沌と自尊心とのかたまりでなかつたらうか。この小説も、ただそれだけのものでなかつたらうか。ああ、なぜ僕はすべてに斷定をいそぐのだ。すべての思念にまとまりをつけなければ生きて行けない、そんなけちな根性をいつたい誰から教はつた?
 書かうか。青松園の最後の朝を書かう。なるやうにしかならぬのだ。
 眞野は裏山へ景色を見に葉藏を誘つた。
「とても景色がいいんですのよ。いまならきつと富士が見えます。」
 葉藏はまつくろい羊毛の襟卷を首に纏ひ、眞野は看護服のうへに松葉の模樣のある羽織を着込み、赤い毛絲のシヨオルを顏がうづまるほどぐるぐる卷いて、いつしよに療養院の裏庭へ下駄はいて出た。庭のすぐ北方には、赭土のたかい崖がそそり立つてゐて、それへせまい鐵の梯子がいつぽんかかつてゐるのであつた。眞野がさきに、その梯子をすばしこい足どりでするするのぼつた。
 裏山には枯草が深くしげつてゐて、霜がいちめんにおりてゐた。
 眞野は兩手の指先へ白い息を吐きかけて温めつつ、はしるやうにして山路をのぼつていつた。山路はゆるい傾斜をもつてくねくねと曲つてゐた。葉藏も、霜を踏み踏みそのあとを追つた。凍つた空氣へたのしげに口笛を吹きこんだ。誰ひとりゐない山。どんなことでもできるのだ。眞野にそんなわるい懸念を持たせたくなかつたのである。
 窪地へ降りた。ここにも枯れた茅がしげつてゐた。眞野は立ちどまつた。葉藏も五六歩はなれて立ちどまつた。すぐわきに白いテントの小屋があるのだ。
 眞野はその小屋を指さして言つた。
「これ、日光浴場。輕症の患者さんたちが、はだかでここへ集るのよ。ええ、いまでも。」
 テントにも霜がひかつてゐた。
「登らう。」
 なぜとは知らず氣がせくのだ。
 眞野は、また駈け出した。葉藏もつづいた。落葉松の細い並木路へさしかかつた。ふたりはつかれて、ぶらぶらと歩きはじめた。
 葉藏は肩であらく息をしながら、大聲で話かけた。
「君、お正月はここでするのか。」
 振りむきもせず、やはり大聲で答へてよこした。
「いいえ。東京へ歸らうと思ひます。」
「ぢや、僕のとこへ遊びに來たまへ。飛騨も小菅も毎日のやうに僕のとこへ來てゐるのだ。まさか牢屋でお正月を送るやうなこともあるまい。きつとうまく行くだらうと思ふよ。」
 まだ見ぬ檢事のすがすがしい笑ひ顏をさへ、胸に畫いてゐたのである。
 ここで結べたら! 古い大家はこのやうなところで、意味ありげに結ぶ。しかし、葉藏も僕も、おそらくは諸君も、このやうなごまかしの慰めに、もはや厭きてゐる。お正月も牢屋も檢事も、僕たちにはどうでもよいことなのだ。僕たちはいつたい、檢事のことなどをはじめから氣にかけてゐたのだらうか。僕たちはただ、山の頂上に行きついてみたいのだ。そこに何がある。何があらう。いささかの期待をそれにのみつないでゐる。
 やうやう頂上にたどりつく。頂上は簡單に地ならしされ、十坪ほどの赭土がむきだされてゐた。まんなかに丸太のひくいあづまやがあり、庭石のやうなものまで、あちこちに据ゑられてゐた。すべて霜をかぶつてゐる。
「駄目。富士が見えないわ。」
 眞野は鼻さきをまつかにして叫んだ。
「この邊に、くつきり見えますのよ。」
 東の曇つた空を指さした。朝日はまだ出てゐないのである。不思議な色をしたきれぎれの雲が、沸きたつては澱み、澱んではまたゆるゆると流れてゐた。
「いや、いいよ。」
 そよ風が頬を切る。
 葉藏は、はるかに海を見おろした。すぐ足もとから三十丈もの斷崖になつてゐて、江の島が眞下に小さく見えた。ふかい朝霧の奧底に、海水がゆらゆらうごいてゐた。
 そして、否、それだけのことである。




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